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第百七十一話 終わり

本日七話目。

 


 核が破壊されたのと同時に世界も元に戻る。やはり『理想神エデン』は不完全であったため、破壊不可能の剣は出来ず、ただ硬い剣だったり世界も今のようにガラスが割れて元に戻ったりするのだ。

 もし、完全な能力だったら核を破壊されてもこの世界は変わらないままだったはずだ。


 元に戻った世界では、カズト達は方舟の中にいた。




「も、元に戻った?傷もない……」

「あの世界は幻覚だったの?」


 マギルとテリーヌは先程、傷付けられたはずだったが、それが消えている。なので、幻覚なのかと疑ってしまう。

 その疑問に答えたのは意外にも、膝立ちになっているゼロからだった。






「いや、幻覚ではない。ただ、俺の能力が不完全だったため、理想だった世界は理想から現実に戻っただけだ。俺以外はな……」

「え、あ……」


 カズトは俺以外と聞き、ゼロの胸を見た瞬間にわかった。ゼロの胸はカズトの剣で穴が開いていて致命傷な傷があった。




「ふふっ……、自分自身のことを信じていなかったから、不完全な能力になってしまったのが、俺の敗因か…………いや、それだけではなく、お前達の信頼が俺の力を上回ったからか」


 ゼロは笑っていた。負けて、核も破壊されたのに、笑っていた。






(心の底では負けたかったなのかもしれないな…………)






 ありもしない理想をぶち壊して貰いたかったかもしれない。

 今から理想を目指しても不可能だと、能力を発現する前に理解していたかもしれない。


 自分自身にもよくわかっていないので、判断は出来ないが、今はスッキリしたような心情だった。




「ふっ、ありもしない理想を掲げても意味がないのに、『理想神エデン』を発現して何をしたかったんだろうな。今更遅いと思うが……………………すまなかったな」


 何に対して謝っているのか、マギル達には色々ありすぎて、わからなかった。だが、カズトだけは前へ歩いて、ゼロの前に立つ。




「……謝るな。ゼロは許されたくて言っているわけじゃないだろ?」

「……そうかもな」

「ありもしない理想?それは『理想神エデン』が完全だったら、出来たと思うか?」

「………………………………無理だな」


 ゼロの理想は、誰にも出来そうで出来なかったことだ。この世界に転生したとしてもだ。『理想神エデン』を使っても同じ結果となる。






「…………なら、俺がその理想を叶えてやる」

「あ?」


 今、ゼロの胸に剣が刺さっている。聖救剣や聖断剣でもない、三つ目の剣が清らかな光を伴って、ゼロに刺さっていた。




 カズトがゼロの理想を叶えるとは?




 後ろで見ていた皆はカズトの行動に驚いていた。まさか、カズトが放っても消えるゼロに攻撃するとは思わなかったからだ。

 だが、ゼロには痛みはない。それどころか、心地が良い。それで、ゼロは感じたことがある感触に目を開いてカズトを見る。




「これは『輪廻剣アダム』だ。効果はわかるな?」

「お、お前は……お人好し過ぎんだろ!?」


輪廻剣アダム』は1度だけしか使えない。その効果とは…………




「もう一回やり直して来い。そして、理想を叶えろ!」

「お前が何故、俺の理想を……………………あぁ、レイに聞いたんだな?この心地良い気分はあの時と同じなら、間違いないが…………いいのか?」


 あの時とは、向こうの世界で自殺をした後のことであり、この心地良さのと似ていた。




 そう、転生だ。




 カズトはゼロに転生してこいと言っているのだ。いや、この身体には二つの魂があるからレイ共にだ。

 本来なら、カズトが転生するために女神ミトラスが用意したと思われる。だが、その剣はゼロの胸に刺さっている。




「ゼロの理想、僕に聞かせて欲しい」

「あはは……、情けねえな。俺はよう……」


 ゼロは顔を上に向けて、右手で覆っており、目から涙が溢れているのが見える。

 前の世界でも叶わなかった理想をゼロの口から発される。






「……俺は、ただ……レイと普通の、生活を……したかった…………」







 普通の生活。親、友達もいる普通の人でレイと一緒にずっと笑っていられるような世界。

 ずっと欲しかった日常を手に入れたい。それがゼロの理想だった…………




 ゼロの言葉を言い終わると、刺さっていた剣が光り始め、剣と一緒にゼロの身体が少しずつ光の粒になって、上へ登っていく。




 光の粒になっていくゼロは見えもしないはずのレイが隣にいて、手を繋いでいた。




『……いつまでも、一緒に…………』




 レイが笑顔で微笑み、上へ行こうと手を引っ張っていく。ゼロもレイが隣にいたことに驚きながらも、一緒に笑顔になっていく。最後に、カズトの方へ向けて…………






「ありがとう」






 と…………言って、全てが光の粒へなって消えていった…………























「行っちゃったわね……」


 ここはいつの間にか、天使達も居なくなっていて、ゼロが消えたから方舟が少しずつ崩れている。




「少しずつだから、真下がペッシャンコになるのはないと思う。すぐにここを出よう」

「お騒がせの兄妹だったけど、最後はちゃんと考えていたみたいだね」


 方舟がそのまま、落ちてきたら近くにあるルーディア帝国も巻き込まれていたが、今のように少しずつ崩れていくなら、その心配はないようだ。

 すぐに方舟から出ようとカズトへ声を掛けようと思ったら…………






「カズト!?」


 カズトは倒れてしまった。すぐにマギルが支えたが、今のカズトには凄い熱があり、意識もなくなっていた。




「ヤバイ!直ぐに出るぞ!!」

「う、うん!!」




 最後はカズトも倒れて、ルーディア帝国まで運ばれることになった。






 ーーーーーーーーーーーーーーー





「ミディ様……」

「そうか、逝ったか……」


 最強の魔王は上がっていった光を何もせずに見つめるだけだった。




 大天使達はメタトロンの核を取り戻しており、それぞれの箱庭へ帰っていった。その姿を見た者は誰もいなかったと言う…………




 人間達は、方舟が崩れていくことに魔神ゼロを倒して戦争が終わったことがわかって、歓喜な声援を上げていた。この戦争で数万人は亡くなったが、戦争が終わったことに喜びで一杯だった…………





 この戦争はゼロが死んだことにより、終幕を降ろし、この戦争は後にも歴史に残っていくのだったーーーー







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