第百六十五話 偽物
お待たせました!!今回は最終回まで続きます。
では、本日一話目からどうぞっ!!
光と闇が侵食し合う世界で、ゼロとカズトの姿が見える…………いや、身体は薄いが、レイの姿があった。
何故、そのレイがカズトの側にいるのかだ。
「貴様!!何をしやがった!!」
ゼロは幻覚を見せられても、すぐに見破ることが出来る。だが、ゼロはカズトの隣にいるレイが幻覚などのチャチな技ではないと理解していた。おそらく、頬に傷を付けられたから見えるようになったのだろう。
ゼロならレイのことだったら、能力を使わなくても本物か偽物を見分けるなんて出来ないことではない。なのに…………
ゼロの目には目の前にいるレイが本物にしか見えないのだ。もし、目の前にいるレイが本物なら、ゼロの中にいるレイは誰なのだってことになる。
「わからないか?」
「何を……」
咄嗟にレイの顔を見てしまったゼロは悲しそうな顔に後ずさりしてしまう。
(なんだよ……、わけがわからない……)
『……あれは偽物だよ。私はここにいるの』
(そ、それはそうだが……、あの気配は……)
混乱しているゼロに話しかけるのはカズトだった。
「こいつはお前の妹、レイだ。レイはお前を助けたいと僕の元に来た」
「どういうことだ、俺を助けたいだと……?」
「来たのは、クロトと言う奴を倒して、意識を落とした時だ。その前にお前は誰と会っていたか覚えているか?」
「……大天使メタトロン……いや……」
会った人物は他にいたはずだ、と言うようにカズトはゼロを見ていた。そして、気付いたのだ。ゼロにとっては信じたくはない推測があるということを。
「邪神アバター」
カズトは頷きながら剣を向けて、ゼロにとっては非常なる結果を言い放つ。
「そうだ。もう一つ言うが、お前の中にいるレイの正体は邪神アバターだ。そうだろ、偽物野郎?」
ーーーーーーーーーーーーーーー
少し時間を遡る。ゼロは邪神アバターに呼ばれている短い間。それまで、レイは邪神アバターによって封じられていた。
邪神アバターは始めから、ゼロがここに転生されてから、レイとして振舞っていた。邪神アバターとは姿を自由に変えられる能力を持つ。ただの変装とか簡単な物ではなく、本人と全く同じで鏡を写したような外面、内面に変えられる。
つまり、レイ本人と同じ記憶、才能、姿、性格などを持つことが出来るからもう一人のレイとなって、今までゼロを騙していたのだ。
ずっとレイだと信じていたが、本当は邪神アバター。この世界に来てからずっといたのは邪神アバター。いつも助けてくれたのは、邪神アバター。レイではなく、邪神アバター。
そんな日が続いた時、大天使メタトロンの戦いが本物のレイが動く初めての機会となった。
ゼロが邪神アバターと話している時、身体から意識を切り取られている状況だったので、本物のレイを縛る者がいなくなって外へ逃げ出すことに成功したのだ。
逃げ出したレイが向かった先は、意識をなくしているカズトの所だった。何故、カズトなのか?
レイは邪神アバターに騙されているゼロを助けたかった。その邪神アバターを倒せる可能性を持つのは、カズトしかいなかったからだ。
カズトの夢の中へ入ったレイはカズトと話したのだ。
「お兄ぃを助けて……」
と始まり、レイは敵だとわかっているが、カズトは泣いている女性を放っておくわけがなかった。
レイから全ての事情を聞き、カズトはゼロを助けると約束した。
そして、今に至るーーーー
「俺の中にいるレイが、邪神アバター……?う、嘘だぁ、そ、そうだろ……?」
ゼロは衝撃なことに、暗黒剣を落として中にいるレイに呼びかけている。だが、そのレイからはーーーー
『ククッ、ようやく目的を達することが出来ますね』
「え、れ、レイ……?ーーーーーーあ、あぁぁ、あうぁぁぁぁぁぁーーーー!?」
「ゼロ!?」
いきなりゼロが苦しみ始めた。ゼロから念話がカズトに届く。声はレイの物だが、
『計画通りだ。お前が動いてくれたおかげて、ゼロの心のバランスが崩れた。後は……………………乗っ取るだけだ!』
「させるか!?」
邪神アバターの計画とは、身体を得ることである。邪神アバターは地上に降りることが出来ないが、身体があれば別である。
つまり、大天使が使う依り代のようなモノであり、邪神アバターが入る身体は大天使のような半神半人のような身体ではまだまだ足りない。
だから、邪神アバターはゼロを使った。いや、育てたが正しいだろう…………
そして、魔王となったゼロに自分の種となる『神の資格』と『暗黒神』を与えることによって、魔神に進化させて乗り移る準備をしてきた。そして、今まで封じていたレイを逃がしたのもワザとである。
最後に正体をバラされたらゼロの心が崩れて乗り移りやすくしたのだ。そして、今はーーーー
「ははっ、ははははははははっ!!ついに、この身体を手に入れた!!」
「なっーーーー」
邪神アバターが乗り移ったゼロの身体から衝撃波が流れ出て、カズトはそれに吹き飛ばされてしまう。
「さぁ、ウォーミングアップに付き合ってもらうぞ!!勇者よ!!」