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第百六十三話 四者の戦い

はい、どうぞ!

 


 暗黒世界が発現され、ゼロとカズトは見えざる世界に移っている。その間、他の戦いではーーーー





 ーーーーーーーーーーーーーーー






 ヨハンの場合



 空中では様々な形をした折り紙がダリュグ、ロガ、レクスに襲っていた。黒鋼竜であるロガが高熱の息吹で消し炭にしていく。普通の炎では燃えないヨハンの折紙だが、ロガが吐く息吹は質が違う。

 岩、鉄、さらにこの世界で硬いと言われている鉱石でも溶かす程の威力を持っている。




「はあぁぁぁ!!」

「ウザいですねっ!!」


 炎で蹴散らした後はレクスが剣で斬り伏せる様に突っ込んでくる。レクスは”飛翔”を幼い頃から持っていたため、何処かの勇者よりも練度の高い動きを持ってヨハンを押していた。


 本来、ヨハンは近接戦闘が余り得意ではない。生まれてから研究ばかりしてきたから技術は長く戦ってきたレクスに劣るのも仕方が無いだろう。




「俺たちも続いて行くぞ!!」

『おう!』


 ダリュグとロガもヨハンに近接戦闘で挑むように近づいてくる。ヨハンはさすがに二人と一体同時に近接戦闘で掛かってこれては、捌き切れなくなる。だから、さらに紙を生み出して、大量の紙吹雪を散らした。

 小さくなれば、生命を吸う量が減ってしまうが、今はこれでいいと判断した。




「死ねっ!」

「させるか!”爆突槍ランスブレイカー”!!」


 ヨハンの側にいたレクスに向けて大量の紙吹雪が襲っていたので、ダリュグが爆風を纏う槍で吹き飛ばすようち突き出した。

 爆風は上手くレクスを守るように紙吹雪を吹き飛ばせた。が、その隙にヨハンがさらに距離を取ってしまった。




「貴方達は私との相性が悪いですね。だが、我が神の元へ行かせるにはいけません!!」




 ヨハンはシルと同様に王者能力を手に入れたばかりで、完璧に使えているわけでもないので、ヨハンはヨハンで出来ることをしようと動いている。故に、ヨハンは疲れることはない霊体を生かして長期戦になるように戦うことに決めている。

 さらに大量の折紙が生み出されながら、ダリュグ達を睨む…………





 ーーーーーーーーーーーーーー






 ミディの場合



「クスクス、もう終わり?」「まだまだやれるよね?」「この戦争が終わるまで付き合ってくれなきゃ、困るのよ」


 早く終わったら暇になってしまうから。といいたいようにミディ達は笑っていた。

 目の前には傷だらけで飛んでいる大天使の姿があった。どちらが押しているかわかるだろう。




「その能力は、反則だろう!?」

「そうですね……」

「”時の悪戯(なくなれ~)”ですか、流石にその技名ななんとかなりませんか?」

「変~?」「えー、凄い考えたんだよ?」「でもね、質問をして回復のために時間稼ぎをするなんて、こすいね!」


 キャキャッと笑うミディ。ミディの言うとおり、ミカエルは話をして時間稼ぎをしようとしていた。何故なら、大天使はミディの技によって回復スピードを遅らせているからだ。

 いつもならすぐに回復するが、ミディが発動した回復を遅らせる”時の遅癒(のんびり~)”のせいで回復するのに時間が掛かるようになっているのだ。


 反対にミディ達は無傷だった。たまに大天使達の攻撃が当たることもあったが、ミカエルが言った”時の悪戯(なくなれ~)”で怪我をした結果、その時間帯を無かったことにされていたため、死なない限りは無傷でいられるのだ。

 ”時の悪戯(なくなれ~)”の効果は絶大のため、一秒間しかなかったことにしか出来ないが、ミディは上手く使っている。




「やはり、最強の魔王と呼ばれる存在は簡単ではありませんでしたね」

「そう、簡単じゃないよ」「だって、最強だもの~」「まだまだ楽しませてねっ!」




 ミディによる一方的な攻撃により、大天使は何度も傷付き、血が流れて行く…………






 ーーーーーーーーーーーーーーー






 フォネスの場合



 隣はゼロが戦っている部屋になるが、壁一面だけが黒く塗りつぶされていた。そこにはフォネスだけが立っていた。

 いえ、いつものフォネスではなく、炎の支配者と相応しい姿になっていた。

 これがフォネスの王者能力キングダムスキル幻焔王グラナエル』による『焔尾獣化』の効果である。

 全身が焔化し、煌めくように九本の尻尾が揺れている。その姿は人間型ではなく、狐の姿になっている。




「ぐ、ぐぅぅぅ」

「人間よ、すぐに立て」


 フォネスの前には倒れているテリーヌと片脚を地に付けている天使がいた。どちらもフォネスによって炎の地獄を見せられた。テリーヌは自慢の魔法が全く効かず、天使は魔王と変わらない実力を持っていたが、相手になっていなかった。




「弱いね。そんな実力でゼロ様を倒そうとしたなんて、愚かな」

「ぐぅ、な、なんで、貴女はゼロに……?」


 テリーヌは痛みを我慢しながら膝立ちになってフォネスに問う。フォネスは冥土の土産に答えても良いかと思い、問いに答える。




「私はゼロ様に助けてもらい、力も貰った。それに、ゼロ様は優しいお方だ」

「な、優しいって……、だったら、なんで戦争をするのよ!!」


 戦争を起こしたゼロが優しいと言われ、あり得ない!と叫ぶテリーヌ。




「ゼロ様は戦争が起きる前に言ったよね?勇者だけは必ず参加させることと」


 確かに、映像ではそう言っていたが、それが何?と疑問を浮かべるテリーヌ。




「つまり、裏を返せば戦う必要があったのは勇者達だけで、他の人間は戦う理由がなかったことになるのよ。もしルーディア帝国にいたのが勇者だけで他の人間は他の街に避難していれば、被害は勇者だけで済んだのよ?」

「……あ」


 テリーヌはフォネスが言いたいことを理解した。ゼロの敵は勇者だけで、他の人間はゼロに挑まないなら見逃すつもりだったのだ。つまり、勇者を犠牲にするだけで万人かの兵が死ぬ必要がなかったということ。




「そんな……、で、でも!勇者だけを犠牲になんて……!」

「やっぱり戦争に出ている人間は馬鹿だね。勝ち目のない戦争に参加するなんて、愚かで救えない。よく考えれば、勇者以外の人間は助かったのにね……、それとも全てを理解した上で勇者と一緒に戦っている?そうだったら、死なないとわかんないかもね」

「その口を閉じなさい!!」

「む?」


 怒りで杖を持つ手に力が入り、杖を支えにしてゆっくりと立ち上がる。




「仲間を馬鹿にするのは、許さない!!」




 テリーヌから魔力が溢れる。だが、その量はフォネスの魔力には遠く及ばない。側で聞いていた天使はそのテリーヌを見て、天使も膝立ちから立ち上がる。




「私もこのままやられているわけにはいかないよね」

「ええ、勝ち目は薄い……いえ、ないかもしれないけど、諦めるにはいかない!!」

「愚かとしか言いようがないね……」


 まだ闘気が消えていない二人を前に、フォネスはバサッと尻尾が広がり、尻尾の先に青い焔が生まれる。




「塵も残さず、消してあげる」






 ーーーーーーーーーーーーーーー






 マリアの場合



 ゼロがいる部屋を中心に、フォネスの反対側に位置する部屋、マリアの部屋も一面だけの壁が黒く染まっている。


 こちらもフォネスと同様にマリアも余裕を持って二人を押していた。




「貴方達、弱すぎます。マリアの全力を見ることもなく死にたいの?」


 マギルはまだ剣を握って立っていたが、身体は切り傷だらけだった。天使は羽を壁に撃ち抜かれており、致命傷を受けていないが、すぐに動けない状態だった。

 マリアは両手にナイフを持っており、マギルにはナイフで相手をして天使には『天闇王ルシフェンクス』を使って相手をしていた。

 マリアは『魔王の証』を持っていない。なのに、魔王を超える力を持ち、さらに王者能力も手に入れて、使いこなしている。ゼロから見るには、マリアもレイと同様に天才だと感じられた。

 そのマリアは二人を前に、冷たい目に無表情でナイフを構えていた。


 マギルはマリアの暗殺技術に、高い身体能力で動きについて行けてなかった。天使は光と闇を操る『天闇王ルシフェンクス』の変則的な攻撃を防ぐことが出来ず、壁に翼を縫い付けられてしまっている。

 変則的な攻撃とは、マリアは闇操作で影を使った攻撃も出来て、死角にある影から攻撃や光操作で威力が高い光線での追尾、直線と曲線を織り交ぜたり、光の反射で見えなくしたりした。

 さらに、マリアは光無効、闇無効を持っているので、光を使う天使では相性が悪かった。




「強すぎるだろ!?ええと、天使は大丈夫なのか?」

「人間よ、すいませんが、時間稼ぎを頼めますか?」


 お互いは自己紹介をしてないので、人間、天使と呼び合っている。天使は今、動けないので恥を忍んでマギルに時間稼ぎを頼む。




「あの翼は、人間じゃなかったのかよ……」

「いえ、私は元人間でしたが、今は魔天族になりました」

「人間を辞めただと?」

「ええ、人間のままでは、寿命がありますからね。人間の頃だった時のマリアはゼロ様について行きたかった。一生、一緒にいたい。強くなりたい。毎日、そう思っていました。寿命が短い人間に生まれてしまったことに神を恨む程に……」


 マリアはいつもゼロと一生生きて行きたかった。死ぬ時は一緒に。そう思う程だった。

 だが、人間に生まれてしまったので、それは諦めていたのだったが、ゼロから不老の提案があったことに喜んだ。




 これでゼロ様と一緒にいられる。




 マリアの気持ちはある意味、歪んだ愛のようなものだろう。人間という種を捨ててまでも一緒にいたいという気持ち。




「だけど、マリアの願いは叶ったのよ。だから、マリアはゼロ様の願いは必ず叶えてあげたいのです」




 マリアはニコリとゼロがいる黒く染まっている壁の向こう側を見てそう言う。

 マギルはその覚悟が恐ろしいと感じていた。マリアにとっては重い愛のようなものだが、マギルには一人の男性のために世界を敵に回そうが、人間を辞めようが、無茶な願いを叶えるために何でもやる覚悟が怖かった。

 同じ人間だったとは思えないぐらいに…………




「そうか、俺はカズトに勝たせてやりたいと思ったから来た。だが、俺はまだ弱いようだな……」

「だったら、来なければ良かったんじゃないの?そうしたら、少しは長生きが出来たかもしれないね」

「そうかもしれない。だが……」


 俯いていたマギルは顔を上げ、息を大きく吸ってから声を大にして言い放つ。





「俺はカズトの力になりてぇんだよ!!無理ばかりするカズトの側にいてやりたいから来た!!俺より強い敵が相手になろうが、俺は諦めねえ!!」






 マリアはいきなりの宣言にポカーンとしていたが、徐々と笑い声が上がる。




「あ、あはは、あははははっ!!やっぱり、モジャモジャはダテじゃないんだね!!」

「モジャモジャは今、関係ないだろ!?って、まだ覚えていたのかよ!?」


 ひとっ飛びと笑ったマリアは無表情ではなく、笑顔だった。マギルはつい、ドキッとしてしまう。




「どっちが強いかは明確だけど、お互いは大切な人のために戦う。それでいいですね?」

「あ、ああ……」

「なら、絶対に負けるわけにはいかないね。さぁ、やりあいましょう!!」




 マリアは翼を大きく広げ、さっきと違う魔力の量が膨れ上がる。マリアは相手をナメるのを辞めたようだ。

 だが、マギルの心の中で「ヤベッ、さっきより状況が悪くなってないか?」とビビっていた。






 それぞれの戦いは激化して、戦争も終盤に近くなってきたのだった…………





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