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第百五十六話 上位精霊

 


 氷の精霊へなったシルが二つ目の部屋で待ち構えており、カズト達の足止めをしていた。

 シルは前と変わって凄まじい実力を手に入れている。何故、精霊に生まれ変わっているのかは、蟲人族だったころのシルでは限界があったからだ。


 それがわかったのは、ゼロが魔王化した時で、フォネスやマリア程に強化されなかったことからシルの限界が見えたのだ。

 だから、ゼロはシルをあまり前線へ出さずにサポートをさせるかソナタの防衛を任せていたのだ。本来なら今回も出すつもりはなく、少し前に作ったドワーフや薔薇族であるエナ達、非戦闘員が住んでいるソナタの世界で待たせるつもりだったが…………




「自分も力になりたい」




 シルにそう言われて、ゼロはレイと相談をして、出た結果が精霊化することだった。強くなるためには、蟲人族という枠を破り、精霊への進化が必要になると考えて、シルにそう提案したのだ。




「自分が強くなれるなら、蟲人族をやめてもいいの」


 シルは蟲人族であることに拘りはなく、ゼロ様のために戦いたいため、了承した。それを受け、精霊化させるために必要なことをしてきたのだ。




 必要なこととは、精霊集めだ。




 精霊とは何なのか、何のために存在しているのか。それらは世界中の人にはわかっていなかった。

 世界中の人にとって、精霊は言葉を話せない魔力の塊だとしか認識されていない。そう認識されるのは、この世界の精霊はあまり人の前へ出てこなく、殆どが意思を持たざる者だからだ。


 殆どは意志を持たない精霊だが、ほんの僅かだが、上位精霊という精霊がいる。その存在は世界中の人には知られてはおらず、知っているのは昔から生きている大天使のぐらいで、なかなか会えない存在でもある。


 そこで、ゼロとレイは大天使を倒した時からその存在がいることの情報を掴んでいた。シルに精霊集めを頼んだ理由は、精霊の源になる『魔源珠』がないと精霊化は無理なのだ。上位精霊がいる場所なんて知らないので、意思を持っていない精霊、下位精霊を出来るだけ集めて、『魔源珠』を作ることにしたのだ。


 下位精霊は大天使メタトロンから情報を抜き取って、いる場所を知ることが出来たので、集めるのに時間はかからなかった。上位精霊の居場所を知らなかったのは残念だったが。


 そして、ゼロとレイは『零式王レイディウス』を使って、『魔源珠』を作り上げて、シルの身体を改造したのだった。

 上位精霊の強さは魔王と変わらない実力を持ち、それぞれの精霊の属性によって、自然の違いでさらに強さを上げることが可能なのだ。


 つまり、場所によって戦いの戦術が増え、自然の手助けがあって、実力を超えた力が使えるということだ。


 シルの場合は…………






「自分の氷は途切れることはなく、全てを凍らせることが出来るの」


 シルは氷と一体化しており、全ての氷は思い通りに動き、カズト達の動きを阻害する。


 シルが全てを凍らせる前、ここはソナタが作った世界であり、広々とした湖があったのだ。

 シルの持つ『凍結』……、今は王者能力『凍冷王ニブルヘイム』に進化しており、能力も強力になっている。ここにあった全ての水分がシルの傘下に入っており、ここの世界は氷の世界と変わっている。




「1人はもう死んだの。さっさと殺されれば、苦しむことはないよ?」


 シルはもう勇者の1人を殺している。その勇者とは…………




「よくも……、タイキを……」




 向こう側で尖った氷に貫かれている人影が見える。カズトの言うとおりに、タイキの姿が見えていた。大量の血を流しており、ピクとも動かない。




 確実にタイキは死んでいるのだ。








「私のせいで……」


 テリーヌが顔を青くしていた。何故、勇者であるタイキがあっさりと殺されたのかは、テリーヌを庇ったからだ。


 氷に足を取られたテリーヌは降り注ぐ氷柱を避けきれず、死を覚悟していた。だが、テリーヌと氷柱の間に入る人物がいて、それがタイキだった。

 タイキはただの氷柱に貫かれてやられるなんて、そんなヘマはしない。タイキは手に持っていた鞭で氷柱を捌き切って、タイキとテリーヌは無事に切り抜けられたのだった。それで終われば、だったが…………






 テリーヌの後ろに刺さっていた氷柱がシルの姿に変わらなければ。






 テリーヌを狙った氷での貫手は、テリーヌを横に弾き飛ばしたタイキが代わりに受けることになってしまい、心臓を貫かれた。シルはそれで終わらずに足元から大量の尖った氷で、今のようになったのだ。




「落ち着け!テリーヌのせいじゃない!!」


 カズトはテリーヌを宥めるが、テリーヌの様子は変わらな仕舞いだ。このままでは、テリーヌはあっさりと殺されてしまうだろう。




「マギル、テリーヌを頼めるか?」

「おい、お前はまだ戦うな。ゼロと戦えるのはお前しかいないから、これ以上は消耗させるにはいかない」

「しかし……」

「腐腐腐っ……、アレは私とゴウダが抑えるから、なんとかあの氷を抜けなさい」

「……(コクッ)」


 ゴウダも頷いて、先に行けと言っているのだ。今までは氷の結界が邪魔をして、次の扉を通り抜けられなかったのだ。

 それは仕方が無いだろう。今のシルはここにある水分を制御している。扉は凍らせてあり、周りにはダイヤモンドダストが進む者を切り裂こうとしている。それに、シル本人が弱点などはないというように聖救剣エクスカリバーで何度か斬っても他の氷がある場所から現れるのだ。




「行かせないよ。ここで潰れるの!!」




 シルは両腕を巨大な氷塊に変え、押しつぶそうとする。




「…………させん」


 シルの手に爆発が起きて、氷塊にヒビが入る。続いて、また爆発が起きてシルを扉の反対側に押し返した。




「今だ!!」

「ああ!!消えろおぉぉぉぉぉ!!」


 聖救剣でダイヤモンドダストを吹き飛ばして、そのまま扉に張り付く氷ごと消し飛ぶ。これで先に進めるようになった。





「行かせないのっ!!」


 吹き飛ばされていたシルが扉の前にあった氷から現れた。今のシルは、氷があるなら何処からでも一瞬で移動が出来るのだ。このままでは、氷を張り直されてしまう。




「腐腐腐っ……、氷が無くなれば移動出来ないでしょう?」

「っ!!」


 土魔法で、氷ごと下から土をドアのように開き、横へどかした。




「潜らせない!!」


 シルは邪魔をされようが、そのまま氷の嵐をカズト達にぶつけようとする。だが、またとしてもクスハの土魔法によってカズト達が通った後に扉を塞いで、防いでいた。




「ああっ!?」

「腐腐腐っ……、ここは、私達が相手をするわ」

「…………こい」

「もう~!邪魔をするなっ!!」




 カズト達は無事に二つ目の部屋を抜けることが出来、シルの相手はクスハとゴウダが相手をすることに…………





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