第百二十九話 大滅機天使(メタトロン)
ゼロの視点です。
少し、時間が戻る。
ゼロ達は天界に行き、目の前の神殿には、天使使い、リラを送り出した本人がいる。
わかることは、第四位大天使がゼロを殺すために呼んだということだけ。
ゼロは更なる先を手に入れるために、わざとその誘いに乗ったのだ。もし、行くのを断ったとしても大天使は地上に降りることが出来ないのだから天使の大群で攻められても、問題はなかった。
『……ここに大天使がいるのね』
(ああ、戦ってみるが、無理だけはしないだったな?)
『……うん、本来なら戦う必要はないからね。でも、一度だけ戦ってみて大天使の実力を知っておきたい……』
(ああ、大天使の力がどのくらいかわかれば他の大天使が地上に降りる方法を知っていたとしても対策が出来るからな)
第四位大天使は地上に降りられないのは知っているが、他の大天使はどうなのかわからないのだ。
「とりあえず、警戒しとけ」
「「はっ!!」」
「私は手を出さないで見ているだけだからね〜」
「ホホッ、お気を付けてくだされ」
リラの案内で神殿の中に入っていく。そして…………
「よく来たな。魔王ゼロよ、私が第四位大天使の大滅機天使と言う」
一人の少女がいた。銀髪の長髪で、腰まで伸びている。神殿の中は何もなかった。
闘技場のような広さがあり、戦うために建っているような場所だった。
外見は綺麗な神殿なのに、中身は闘技場。ギャップありすぎだろ!? と思うゼロだった。
「お前が俺を殺したいから呼んだのはわかっているが、もしお前が天使使いを送らなければ敵対することはなかったぞ?」
ゼロは天界にいる天使などはもう興味はなかったのだ。天使の死体はもう手に入れていて、世界征服をする時、天界は対象に入っていなかった。
つまり、大天使がゼロに直接、喧嘩を売らなければ、天界に手を出すことはなかったのだ。
「構わない。貴方は危険だと判断したから殺す。それだけ」
「はっ! 小さな大天使は好戦的なんだな!」
「では、始める。まず外と隔離する。『広域聖魔封結界』作動!!」
真ん中に立っていた大滅機天使から光が湧き出て…………
「ゼロ様!?」
「な、押し出される!?」
「私までも押し出されるとはな……」
「ホホッ、一対一が希望のようです」
ゼロ以外は光の壁のような物で、戦い場所となるフィールドの外まで押し出される。
「なんだ? 力が抑えられて……?」
「この結界は聖気、魔力を発動出来ないようにする効果がある。名の元に、降臨せよ!! 『天滅王』!!」
大滅機天使が『天滅王』を発動した。自分と同じ名前で、その能力はメタトロン本人の身体から浮かび出ていた。
そして、その少女の身体には、未来世代で見るような機械が付いていた。その機械は、機械が光で接続されてスカートのように展開し、背中には天使の翼が機械で作られたようなのがあった。
さらに、幾つかの武器が浮いていて、手にはビームサーベルを持っていた。
見た目はとにかく、一言に尽きる。
神々しいと…………
(あれ、聖気と魔力が使えないと言っていたのに、あれはなんだぁ……?)
『……解析出来ない、使えるスキルが制限されているっ……!』
レイの声が悔しそうに聞こえた。確かに、魔力が使えないならゼロの使えるスキルは大幅に削減されてしまうだろう。
(レイ! 今、使えるスキルはなんだ!!)
『……武装能力『冥王布装』と『妖気操作』と『身体強化』だけっ……!』
(なっ、王者能力は駄目なのか!?)
『……体内で魔力を使うのは大丈夫だけど、外に出せない!』
つまり、体内で魔力を使えるなら『超速思考』や『身体強化』なら使えるが、切り札である『情報操作』は外に魔力を出すため、使えない。
武装能力『冥王布装』はゼロの一部だから使えるが、『性質変化』は使えなかった。『増幅操作』は使えたが、『性質変化』は魔力を使って性質を変えるが、魔力が外に出ているから使えない。
『妖気操作』は聖気と魔力ではなく、生命力から出ているから問題なく使えるが、魔王クラス以上に相手をするなら威力が足りない。
『……『自己再生』までも駄目』
(マジか……、でも、向こうも同じだろ?)
『……うん、あの機械みたいのは多分、メタトロンの一部だから聖気や魔力ではないから使えているかも』
(原理はわからんが、少し戦えばわかるんじゃないか? それか、本人から教えて貰えばいいんじゃないか?)
『……答えてくれるかなぁ?』
聞いてみて答えてくればラッキーだと言うように、メタトロンに聞いてみた。
「そのメタトロンは、聖気や魔力から作られてないのか?」
「私の一部。聖気と魔力は使わずに、純粋なエネルギーを使っている……」
答えてくれた!? と思ったが、気になる言葉があった。
(純粋なエネルギー?)
『……聖気や魔力ではないなら……、別の力を使っている?』
それも詳しく聞こうと思ったが、向こうが動いた。
「”光翔線”」
話は終わりだと言うように、浮いていたいくつかの機械から光線が発射されていた。
(くっ、あれらはビットかよっ!?)
ゲームは漫画で見たあの機械にアレが重なった。光線を発射する小さな戦闘機、それがメタトロンの周りを動き回り、光線を撃ってくる。
ゼロは『自己再生』が出来ない状態になっているから全て避けるようにしている。
『身体強化』は問題なく使えていたから、全て避けることが出来た。まだ撃ってきた数が少なかったのもあるが…………
「仕方がない……!」
ゼロは妖気で作った剣を作りだし、浮いている少女の表情が少し動いたような気がした。
表情はずっと変わらず、機械と同じように攻撃し、話してくるメタトロンだったが、今、ようやく違う表情が見れた。
「能面天使、これが珍しいか?」
「能面天使……、あれは見たことがない、聖気、魔力とは違う?」
能面天使と言われてショックを受けたような声だったが、表情は変わらなかった。ただ、雰囲気がそうでたから感情はあるみたいだ。
大天使もこの妖気のことを知らないようだ。
「妖気なら、この壁は壊せるか……? フォネス、マリア!!」
「「はっ!!」」
二人は今まで魔力や聖気を使った攻撃で壁を壊そうとしたが、無効されるように、弾かれて壊せなかったのだ。
だが、妖気なら……?
フォネスは自分の剣に妖気を纏わせ、マリアは妖気の遠距離攻撃で壁を破壊しようとしたが…………
「駄目!?」
「当たっているけど、堅すぎて壊せないわ!」
魔力や聖気みたいに弾かれはしなかったが、威力が足りな過ぎて、壊せなかった。
(ちっ、壊せれば勝ち目はあったのだが……)
ゼロの思う通り、魔力を封じられたゼロでは、目の前の大天使には勝てないと本能でわかっていた。
妖気は生命力で、使いつづけると、疲労が出てしまい、最終的に動けなくなって殺されるだけだ。逃げようとしても壁を壊せないのでは、逃げられない。
「それでもやるしかないか……」
この戦いは本来なら少しだけ戦って勝ち目がないなら逃げることも視野に入れていたが、『広域聖魔封結界』のせいで逃げ道も塞がれてしまっている。
ゼロは不利な状況を覆す策を考えなければならなくなった…………
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