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第百八話 百獣の王

「私と交代ね」

「はいはい、せいぜいと死なぬことだな」

「あはっ、いいな〜。強い奴とやれるなんて」


 フォネスが前に出て、ガルムとミーラが下がる。

 ゼロは、次が魔王ガロムの相手になるのだから、まだ緊張しているか、顔を見たのが…………




「大丈夫みたいだな。全力にて、勝ってこい」

「はいっ!」


 その様子を見ていたガロムは笑っていた。まさか、部下の中では強い二人があっさりと殺されたのだから、怒りよりも笑いが込み上げたのだった。

 魔王ガロムは、強い者と戦うのが好きだ。ゼロに戦闘バカと思われても仕方がないほどに、戦闘バカである。


 フォネスが前に出た時、ゼロが出ないことにしかめるような表情を出したが、それは一瞬だけだった。

 何故なら、フォネスも魔王ガロムに迫る実力を持っていると気付いたから口元をニタァと歪め、これからの戦いに歓喜を覚えている。




「ガハハッ、お前が相手をするんだな?」

「はい。貴方には私の贄になってもらいます」

「ふっ、ワシは魔王として、簡単にやられるつもりはない! 話し合いは終わりだ、これからは命の取り合いをやろうじゃないかっ!」


 魔王ガロムは腰に掛けていた青龍剣を抜いた。青龍剣は三日月のように沿ってあり、突きには使えないが、斬るに特化した剣である。

 フォネスも『収納』から大剣を取り出して、構える。

 大剣はいつもの鉄で出来た剣と違って、ドワーフ製の大剣になっている。熱に強いタウル鉱石で作られ、高温5000度にも耐えることが出来る。

 高温の炎を操るフォネスにとっては、炎を纏うとすぐに剣が溶けてしまうのを防ぐことが出来るのは望ましいことでもある。


 いつも溶かしてしまい、すぐに使えなくなっていたから名前さえも付けていなかったが、今の剣なら長く使えるので、名前を付けることにしたフォネス。

 剣の名は…………






「”炎帝剣エンペラー”で焼き斬ってあげる」

「あれは……、魔法剣なのか? 良いもんを持っていやがるな!」


 剣から炎が吹き出し、とぐろを巻くように絡み付いていた。

 魔法剣のように見えるが、実際はフォネスが炎を出して纏わり付かせているだけなのだが、言う義務はないので、黙っていた。


 武器を構えている二人だったが、始めに動いたのは、ガロムの方だった。

 何も能力を使ってない、純粋な力だけでフォネスに切り掛かるガロム。その剣速は凄まじく、剣の先が見えないほとだったが…………




「単調ですよっ!」




 受け止めた。

 受けた衝撃で地面が少し沈んだが、フォネスは押し負けていなかった。

 ギリギリ……と、刃同時が削るような音がするが、それは長く続かなかった。




「あちっ!」


 剣に纏わり付かせていた炎がガロムの剣を伝わるように、流れて来たのでガロムは直ぐさまに下がっていた。


 フォネスは攻撃を緩めずに、追撃する。




「”煉獄炎刃フレアウェーブ”!」


 剣から青い炎が灯り、斬撃を何発か地を這うように、飛ばしていく。

 この技は前から出来たのだが、剣が堪えられないため、使っていなかった。だが、今の”炎帝剣エンペラー”なら堪えられるのだ。




「ガハハッ! すぅーー、ギガアァァァァァァァァァ!!」


 笑うガロムは迫ってくる炎の斬撃を威圧と音による衝撃だけで、蹴散らしていく。だが、全ては消せず、残った炎の斬撃は回避をしていた。

 それが隙を作ることになった。






「”溶解焔刀ホムラブレイク”!!」






 ”炎帝剣エンペラー”がギリギリ堪えられる温度まで上げた熱を剣に込め、僅かな隙を狙ってぶち込む。




「ふん!!」


 ガロムは横から攻めてきたフォネスの間で無理矢理に青龍剣で受け止める。

 今の体勢では、回避は出来なかったから受け止めるしなかった。だが、それは間違いだった。




「なぁっ!?」


 ガロムの青龍剣がジュウジュウ……と、沸騰して溶けていた。そのままなら、剣ごと真っ二つに溶かしながら斬られるガロムだったが…………




「させるかっ!! ぐぅっ!!」

「まさか、腕を犠牲に?」


 フォネスの言う通りに、ガロムは右腕を犠牲にして胴体への軌道を逸らしていた。

 右腕は直接に触ったため、ドロドロと溶けていて痛々しい姿になったが、腕を犠牲にしなかったら戦いはここで終わっていたのだから。




「ぐ、が、ガハハッ……、ガハハハハハハハハハ! やりおるな!!」

「貴方の精神力に感服しました。貴方はゼロ様みたいに痛みをシャットダウンしていないのに、転げ回ることはしないのですね」

「ふん、こんな痛みぐらいで終わるつもりはねぇ。お前は強いから本気でやらせてもらう!!」


 ガロムは魔王だが、右腕の再生は遅かった。おそらく、再生関係は得意ではないだろう。

 本気になったガロムは力を解放する。






「『獣化』……、力に狂え、『狂獣者バーサーカー』発動!!」






 『獣化』で獣人の姿から百獣の王、ライオンの姿に変わった。立派なたてがみを持ち、口には鋭い牙が見える。

 それだけではなく、『狂獣者バーサーカー』も発動した。身体が大きく膨れ上がって元は二メートルに近かった身体は五倍の十メートルになった。






「ギガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」






 ただ叫んだだけで、周りの壁や天井、床にもヒビが広がっていく。

 ガロムの様子を見るには、目は白目に剥いており、理性を感じられなかった。

 それを見たゼロは…………






(……あれって、死亡フラグじゃねぇ?)

『……確かに、ヒーロー番組では最後に大きくなっても必ずやられるんだよね。まさか、ここで見れるとは思わなかった……』

(あー、理性をなくしているからヒーロー番組よりは酷いかも。理性をなくして本気とかは、魔王ガロムの底が知れるな)

『……あれは王者能力じゃなくて、希少スキルみたい』


 解析してみたら、希少スキルだとわかった。つまり、ガロムは希少スキルの『狂獣者バーサーカー』が本気であり、王者能力は持っていないということ。


 ゼロはそんなガロムのことを脅威だとは思っていなかった。強くなっても、理性なくただ暴れるしか出来ないなら簡単に殺せるとゼロは思っている。

 それはフォネスも同様だった。






「大きくなったのは驚きましたが、それだけですか?」

「ギァガアァァ!!」

「ふぅー、受け答えも出来ないなんて。そこまでしないと強くなれないのでは、駄目ですね」


 答えもせずに、獣化したおかげで完全に治っている右腕を振り落としてきた。

 その攻撃のスピードは他の者からしたら脅威だったが、フォネスはまだ余裕を持って避けていた。

 振り落とした余波で風圧や石が飛んできたが、それも見極めて避けきっていた。




「パワー、スピードは上がっているけど、それだけでは私を捕らえません」

「ギィ!?」


 フォネスは大きくなったガロムはただの的にしか見えなかった。

 パワーとスピードは上がっているが、動きが大きすぎて読みやすいのだ。




「同じ戦法になりますが……、”煉獄炎刃フレアウェーブ”!!」


 炎の斬撃がガロムの顔を狙って撃ち出される。

 ガロムはその攻撃を避けもせずに、手を振り回して反撃していた。


 威力はガロムの方が上で、”煉獄炎刃フレアウェーブ”は全て消されたが、フォネスは構わなかった。”煉獄炎刃フレアウェーブ”は囮なのだから。






「”溶解焔刀ホムラブレイク”」






 本命はこっち。

 ”煉獄炎刃フレアウェーブ”がガロムに迫っている時に、フォネスはガロムの足元まで移動していた。


 隙だらけの足元を狙って溶かして斬る技を喰らわした。




「ギィィィーーー!?」

「まだまだ!」


 左足が切り落とされてバランスを崩しそうになるガロムは手を地に着こうとするが、その手もフォネスによって切り落とされていた。




「ガァァァ!!」


 残ったもう一本の手で倒れながらフォネスを押し潰そうとするが…………




「”焔刃乱舞ファイガレックス”!!」


 ”溶解焔刀ホムラブレイク”の連撃で、押し潰そうとしてきた手を細切れにした。そして…………




「これで終わりよ、”豪爆炎上ダイナログ”!!」




 前に魔王ラディアの部下、アリトスに使った技、”豪爆炎上ダイナログ”を発動した。

 ガロムの身体で爆発を連鎖して破壊し、燃やし尽くしていく。




「ガァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」




 一発だけではなく、連鎖していくので痛みが次々と生まれていく。

 普通なら身体は燃え尽きて消えてしまうのだが…………




「あら、生き残ったんだ?」


 ガロムの身体は元の獣人の姿に戻っていたが、まだ生きていたことに驚くフォネス。

 さすが、魔王だと誉めてもいいだろう。




「く、くが、動けねぇ……」


 ガロムはまだ生きていたが、今は動けないようだ。

 それを見て、ゼロは終わったなと思ったが…………








『……!? 一つの反応が近付いている!』


 レイの言葉でゼロも気付いた。何者かがこっちに凄いスピードで向かっていることに…………




「な、あの反応は…………、フォネス! 後ろに下がれぇ!!」

「ーー!?」


 フォネスはトドメを刺そうとしたが、ゼロから撤退の指示がきたため、すぐに従った。

 そして…………






「ガァっ!?」






 地面の下から沢山の茨が現れた。そのまま、ガロムを飲み込んで茨が部屋の中を広がっていく。






「まさか、もう一人の魔王が来るとはな……」


 ゼロはこの惨状を起こした犯人をわかっていた。前に会ったことがある魔王であり、ガロムと同様にゼロの一部を付けさせたのだから。

 その犯人が茨の中から浮き出るように形が作られた。






「ふふっ、ミネア・ローズネスの参上よ」






 その姿は、薔薇族の魔王であり、魔王ミネア・ローズネスが現れたのだった…………







調べたら鉄の沸点が2800度だとわかったので、1000度ではなく、5000度に変更しました。

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