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 考えているうちに、何だか幽霊のお話になってしまいました…。遥か昔、運命の出会いで結ばれた二人、とても幸せな一生を過ごした。あまりに幸せで、終わるのが嫌で、その幸せを永遠にしようとした。けど、それは許される事じゃなかった。いえ、そもそも基本的な何かを間違えていた。そして…。
 書いているうちに、どんどんお話が変わってしまって、あぁ、まだこのお話は骨格がゼンゼン固まってない。ラストのイメージは動かないけど、やはり、実際に書いてみると、つじつまが合わなくなって、何だか変なお話になってる気がしてくる…。
 何だか、もっと素直にほんわかの物語にした方が…。まぁ、その方向をこのお題から思いつかなかったんですけど…。結局、こんなお話にしてしまいました。
断崖、くらげ、仮面舞踏会
 彼女だ…。
 その根拠は説明できないけど、見た瞬間に感じた。彼女の生まれ変わりだ…。



 俺はずっと断崖すれすれを彷徨ってきた。もう彼女には会えない。 彼女との、きらめきに満ちた記憶全て持ちながら、色あせない全ての記憶を抱えながら、その全てを失った俺の気持ちが判るか? 人は忘れるから、思い出は変化していくから、だから人は過去に優しくなれる。全く変わらない記憶は恐ろしい…。どんなに美しい、色褪せない思い出も、未来への絶対的な絶望がセットでは忌まわしいだけだ。
 どんなに望んでも手に入らない。 その想いが強ければ、美しければ、欲しければ、それだけに苦しさも大きくなる…。
 何度崖っぷちまで追い詰められたか、いや、断崖から飛び降りる方法が分かっていたなら、とっくに飛び降りていただろう…。 未だに狂ってない事が奇跡だ。
 いや、いっそ狂ってしまいたい。何度そう思った事か…。


 魂さえ分け合った。そんな彼女と初めて会ったのは、何時だったか…。
 あれから、もう、何百年経ってしまったのだろうか…。
 けど出会った場所は覚えてる。いや、忘れる事など出来ないだろう。
 あれは、そう、仮面舞踏会だった。 俺も、彼女も、当然の様に仮面を着けていた。 けど、それでも、俺達は見詰めあった瞬間に恋に落ちた。
 仮面の奥から俺を見詰める瞳に。楽しそうに口角を上げる、仮面の下からのぞくその唇に。そして、その笑い声に…。 俺はそっと彼女の前に進み出て、手を差し出した。
 既に、俺達にはそれだけで十分だった。
 俺達はホールの真ん中まで滑り出し、全員の注目を浴びながら、でも、そんなことにはまるで気が付かないままで踊った。彼女と触れている手が、彼女を見詰める目が、彼女の呼吸を感じるたびに、俺は喜びに震えていた。 彼女だって同じだって事は明らかだった。

 とにかく、その日から始まった、俺と彼女の日々は幸せに満ちた日々だった。
 完璧だった。だから、俺はその完璧を永遠にしようとした。
 それが間違いの元だった。


 永遠になったのは、苦しみだけだった。

 彼女を失い、それでも求め。 忘れる事など出来ないが、それでも二度と手に入らない。
 こんな事なら、消えてしまいたかった。 消えてしまえば、幸せは手に入らないが、それでも、こんなに苦しむこともなかっただろう…。
 どうすれば許されるのだろう? もう、許される事はないのだろうか?
 本当に、二度と手に入らない思い出に悩まされながら、このまま永遠に苦悶するだけしかないのだろうか?
 かつて、俺は生きていた。 けど、今はくらげの様に彷徨う亡霊だ。



 生まれ変わりの彼女が、俺の方に振り向いた時、一瞬、視線が俺を捉えた様な気がした。
 それはほんの一瞬だった。 けど、それで十分だった。 その一瞬で俺は全てを悟った。
 やはり、俺が間違っていたんだ、と。
 どうして、そのときに気が付いたのか? それは、俺も良く分からない、何百年も考えないようにしながらも、ずっと考えていた事を、彼女に良く似た女性を見かける事で、認めただけなのかもしれない…。 理由はとにかく、俺は突然理解した。

 幸せを、単に永遠にしようなんて、間違いだった。
 永遠じゃないから、もろいから、それを二人で支えるから、変わり続けるからこそ、生きていける。生きていてこその幸せなんだ。何かを永遠なんかにしたら、変化がなくなってしまったら、幸せも消えていくんだ。そんな事を理解した。


 そう。つまり、俺は自分で自分を閉じ込めていたんだ。 何時だって終わらせることが出来たんだ。変わればよかったんだ。 俺は自分自身を変わらないようにする事で永遠を手に入れようとした。逆だったんだ…。

 さっきは、あの女性こそ彼女の生まれ変わり、そう感じられたけど、改めて冷静になってみると、その確信はなかった。似てるんだけど…、けど少し違う。
 まぁ、そんな事はもういい。 これで、やっと終われる…。


 その瞬間だった。ふいに声がした。
(やっと気が付いたのね…)
『え?』
 どこからともなく聞こえた声に驚いた。 その声は、彼女だった。
(私の声が聞こえる?)
『お、おまえ…。 なのか?』
(よかった…。 私、ずっと待ってたのよ…)
 声がする方向を、目を凝らして見てみる。まぁ、既に亡霊の俺が、目を凝らす、っていうのも不思議な感じだけど…。
 すると、彼女の姿が浮かび上がった様に感じた。
 最後の瞬間に最愛の人の姿を目にすることが出来るなんて、しかも本人を…。
 予想外の幸せだった。

(そうよ…。 もう、行きましょうか?)
『あぁ、そうだな…。 待たせたな』

 もう、俺たちはそれ以上は語り合わなかった。
 俺たちはここで消える、けど、十分だった。 そう、世界は変化していく。
 だから、世界は生きていく。
 俺たちは世界全体に広がり、世界と一緒に幸せになるんだ。


 あ…。 突然、思い当たった。 あの女の子、俺たちのこどもなのかな…。

(やっと気が付いたの?)
 どこからともなく、そんな声が聞こえた様な気がした。
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