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 このお題は、文学少女、死にたがりの道化、の冒頭に出てくるお題で、心葉が高校二年の五月ということでした。物語の中で、心葉は、国会議事堂の前で再会した初恋の女の子が、突然空から降ってきた苺大福の箱に頭をぶつけて死んでしまうお話として作られた事になっていました。 国会議事堂、というものの絡ませ方は、ちょっと悩みましたけど、当たり障り無い、地方から見た東京を表す象徴の一つ、という感じの扱いとしました。
初恋、苺大福、国会議事堂
 私は今、国会議事堂の前に来ていた。もちろん、私が国会議員だから、なんかじゃなくて、学校の修学旅行で子供たちを連れて国会議事堂の見学に来ただけだった。

 国会議事堂に、いえ、東京に出てくると、つい周囲を見回してしまう。
 バスに乗っていても、子供たちを引率して歩いていても、時としてすれ違う人にハッとなり振り返ってしまう。
 それは未だに振り切れない未練だった。
 昔、高校一年生の頃に抱いた淡い想い、当時、親しく付き合っていた男の子。初恋というには遅かったと思う。それに、男の子を好きになったのは彼が初めてじゃなかったとも思う。

 けど、忘れられないのは彼が初めてだった。

 当時、私は結構惚れっぽくて移り気で、毎年クラスが換わると、好きな男の子も換わっていた。だから、彼を好きだと思う気持ちに対しても同じなんだと思っていた。
 だから、高校一年の冬、東京の高校から地方の高校へ転校することになった時も、ちょっとつらいけど、すぐに受け止めることが出来る。新しい環境になじめば、新しい恋が出来る。その時に好きだと思っていた彼のことも忘れていける。いえ、忘れてしまう、そう思っていた。
 けれども、時が経つに連れて、そうではない事がわかった。

 事あるごとに、彼のことを思い出してしまっていた。
 特に、彼との出会いのきっかけになった苺大福。割とポピュラーな和菓子で、どこにでもあるけれど、その苺大福を見ると、必ず彼を思い出してしまった。
 最低な出会いだったと思う。だから記憶に残っているのだろうか?
 苺大福は食べるもので、投げるものなんかじゃない。断じて違う。 そこは間違いないはず。けれども、あの日、私は顔で苺大福を受け止めることになってしまった。
 そして、事もあろうに、私の顔に当たってずり落ちた苺大福を、彼がかじり、その残り半分を口に突っ込まれたのだ。あの時はさすがにキレタのを覚えてる。

 そんな最低・最悪な出会いだったのに、どうしてだろう?その後の何週間かで、それまでに好きだと思っていた男の子のことはいつの間にか頭の中から消えて、気が付いたら、私の視線は彼を探す様になってしまった。

 何を思い出しているのだろうか…。

 その時だった。「先生危ない!」そう子供たちが後ろから叫ぶ声が聞こえ、振り返った。
 その私の、顔の真ん中に当たったものは…。

 苺大福の方がまだかわいげがあると思った。私の顔に当たってべっちょりとひろがったのは事もあろうにおはぎだった。
 そして、あんこまみれの顔になった私の目の前にあの彼がいた。 その時、頭の中で何かがプチンと切れた。
「なにすんのよ! 顔中あんこだらけじゃないの!」
 そんな私を見て彼はあの時と同じ様にげらげら笑っていた。 そんな彼に私はつめよった。
「何考えてんのよ! 相変わらずの大バカね!」
 そうやって激昂する私に、彼は笑いを残した表情で言った。
「この機会は逃せないし、それに…」
 けど、突然真顔になると、続く言葉はいっそ涼しげに言ってのけた。
「もし、きみに嫌われるなら、徹底的に嫌われないと、諦められないから…」


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