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 これも挿話集第三巻で見つけたお題で、やはり心葉、高校一年の夏休みです。このお題、くじらをどうしようかなぁ、灯台は??と悩んで、ちょっとぐぐってみました。そして、面白いものを見つけました。『てつのくじら館』本当にあります。広島県、呉市。そして、登場させた灯台、これは神奈川県江ノ島の灯台をモデルにしました。あの灯台なら、近くに浜辺もあるしね。ぴったりかも。という訳で江ノ島です!ショーナンだ!イエイ!
 中々会えない彼を思って浜辺をぶらぶらする彼女、会いたいなぁ、そう思いながら、でも、いじけちゃいけない、挫けちゃいけない、必死に自分を励まして、ガンバルぞ! そう考えようとしている彼女。 書き出してみたら、これはあっさり書けたけど…。なんだか、展開も盛り上がりも無いかなぁ…。でも、最後に一言アクセントを入れたつもりです…。
浜辺、灯台、くじら
 今、私は一人で浜辺を歩いている。 少しでも彼に近いところに行きたくて…。
 打ち寄せる波を見ていたけれど、ふと沖の方に目を転じると、水平線に船が浮かんでいるのが見えた。
「あの船じゃないのよね」
 苦笑しながら、そう呟いた。
 この浜辺に彼と来た事はあっただろうか? 確か、無かったと思う。
 でも、私の住んでいる場所から一番近い海は、この浜辺。


 彼と離れているとやっぱり心が落ち着かない。あるべきものが、あるべき所にない、そんな感じがする。そうは言っても、実は彼と一緒に居られる時間の方が少ないんだけど…。
 彼の浮気を心配しているのか? っていうと、それは違う。 幸か不幸か、きっと彼は浮気なんて出来る環境じゃない。
 だって、彼は船乗り、一年の大半は海にいる。遠く外国に行く事はほとんど無いけれど、でも、ほとんどは陸地の上には、私のそばには居てくれない。
 彼が出発してしまうと、次に帰ってくるまでは、電話も、メールも届かない。携帯電話を持ってたって電波が届かない。その事がこんなにもどかしいなんて…。
 普通の遠距離恋愛だったらなぁ…。 そうすれば、電話すれば声が聞けるだろうし、手紙を書けば返事が来るのに…。
 ふと、そんな恨み言を言ってしまいそうになり、苦笑した。

 ただの恋人という関係。お互いに「好き」という言葉は伝えていた。 けど、それ以上でも、それ以下でもない。
 それで十分だと思っていた。 確かに最初はそれで十分だと感じた。
 けど…。
 彼への気持ちが大きくなるにしたがって、離れている辛さが大きくなっていった。そして、離れている間は、声も聞けない。メールも届かない。 それが苦しかった。


「でも、しょうがないよね。 好きになった人が、船乗りだったんだから…」
 声に出してそう言ってみる。 もちろん、周囲に人が居ない事は確認済み。
 ぼんやりと歩きながら、正面に見える灯台に目を留めた。 あそこに灯台があるのは、ずっと知っていたけど、何だか、今日はちょっと惹かれた。
 なので、初めてだったけど、その灯台に行ってみる事にした。

 灯台に着いてみると、遠くから見ていたのと違って、結構大きいことがわかった。
 一応は観光スポットなのだろうか、所々に案内表示が出ていた。料金を払って、展望塔に登った。案内の表示によると、民間の灯台としては一番明るいらしい。
「景色としては悪くないわね」
 浜辺から眺めるよりは、少しは遠くまで見えるのだろうか?
 沖の方を眺めてみると、見えてる船は先ほどとさして変わらない様に思えた。
 灯台を点滅させて、彼へのメッセージを発信したら、彼は帰ってきてくれるだろうか?
 その発想には、ちょっと心惹かれるものがあったけど、それが役に立たない事を私は知っていた。


 今、彼は海の中だ。

 もちろん、死んじゃったりはしていない。 そうじゃない。 そのはずだ…。
 そう。彼は潜水艦乗りだった。
 だから、今はきっと水平線の下にいる。 くじらと追いかけっこでもしてるのだろうか?陸の上でやきもきしている私の気も知らないで。いえ、知ってるくせに。
 潜水艦の事を「くじらに似てるよね」そう言った事が彼と近付きになったきっかけだ。
 一度、彼と一緒に、潜水艦がメインの展示施設に行った事がある。その名も『てつのくじら館』という所だった。
 あの時、色々と説明を聞いて、彼の任務の過酷さ、孤独さを思い知った様な気がした。
 だから、彼の置かれてる辛さに比べれば、私の辛さなんてなんちゃないんだ。
 私が、彼の居ない時に文句を言っていてはいけない。言うなら面と向かって、彼に直接言わなければ。二人で一緒なら昇華させる事ができるから。

 そんな事を思い出しながら、ぼっと海を見ていたけれど、いつの間にか、周囲は夕焼けでオレンジ色に染まっていた。
「今日も終わりねぇ…」
 次、彼はいつ帰ってくるんだろう? そう思いながら、灯台から出て、駅に向かった。

 その時、私の携帯に突然の着信があった。
 慌てて携帯を取り出す。だって、その着信音は彼だけのものだったから。
「もしもし!」
(もしもし。 今日、会える?)
 彼の問いかけは簡潔だった。
「もちろん!」
(じゃあ、場所は…)
 私は心の真ん中から喜びが湧き上がるのが抑えられなかった。会える! 今から会える!
 今は、それだけで十分だと思った。
 私は笑顔が止まらなくなり、駅に向かって走り出した。一瞬でも早く会いたかったから。


 今は、とにかく会えるだけで嬉しい。
 その先は?……。

 もう少し、この状態で頑張ってみよう。
 そして、やっぱりこの関係をもっと続けたい、そう自信が持てたら、そうしたら、そして、彼もそう感じてくれたなら…。
 そうしたら、私たちの関係に新たな約束を追加して行こう…。
 きっと、それはそう遠い未来じゃないはず。


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