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 これは、挿話集第三巻に出てきたお題で、心葉が高校一年の夏休み、という事でした。なので、この位置に挿入する事にしました。
 結構、簡単かな?何て思いましたけど、氷山がががが。ゼンッゼンまとまりませんでした…。氷山に乗ると、お話がどっかに吹っ飛んでしまって、まとめる事が出来ませんでした。うう、まだまだ未熟です。で、もう氷山に関しては方向性をガラリと変えてしまいました。そして、あの文学少女の二人をイメージしたキャラに登場して勝手に進行してもらいました。
 あの二人だと、適当にお題を意識させて、私の中で動かせば、割とすんなりと乗ってくれるので、詰まって二回ほど途中で書き直した後に登場させてしまいました。
氷山、懐中電灯、クリスマスツリー
 僕はとなりにいる先輩の方をチロンと盗み見て、また視線を元に戻した。 やっぱり圧倒的に見た感じが違う様に感じた。
 そんな僕の視線とヨコシマな考えを見抜いたのだろうか? 先輩は憤然と抗議しだした。
「何よ! 氷山っていうのは隠れてる方がとってもとっても大きいのよ!」
 いきなり、何をたとえに出しているんだろう? その突っ込みどころ満載の主張は、僕に対する挑戦だろうか? それならば、受けて立たなければいけない。
「氷山なんですか? 随分と硬そうですね」
「硬くなんか無いもんっ 私だって、ぷ…、 ぷ…」
 何かを主張しようとしているようだけど、自分でもよっぽど恥ずかしいのだろう。 それでも、意を決したように言い切った言葉は…。
「私だって、ぷにぷによ!」
 頭がくらっとした。
「え?」
 そうしながらも、思わず、視線は先輩の胸元に行ってしまった。 僕の視線をたどりながら先輩が「エッチ!」そう言い、両手で胸元を隠して僕をにらみつけた。

 それからしばらくは、僕も先輩も、何も言う事が出来なかった。
 せっかくのクリスマスイブに何してるんだろう? いや、そもそも、どうして僕と先輩がクリスマスイブに二人で連れ立って、公園に来ているんだ?
 まぁ、イブを一緒にすごしたい、そんな女の子は今の僕には居ないし、先輩と一緒に居る事は慣れきってしまって、何を言われようが、何を言おうが、特に拘る事も無く、素直な自分でいる事が出来る時間なので、僕としては楽だった。
 だから、特に不満はなかった。
 それにしても、母親の先輩を気に入る度合いはちょっと異常じゃないか?それに、何か勘違いしてないか? そんな不安はあったけど、まぁ、先輩にだってそんな気は無いだろうし、余計な心配をする事は無いだろう。

 そんな事を考えていたが、先輩には何か目的がある様だった。
「じゃ、ちょっと手伝ってくれる?」
「へ?」
 僕が怪訝そうに声をあげるのも聞いてない感じで、公園の真ん中にある、大きなクリスマスツリーに飛びつくと、登り始めてしまった。
「何するんですか?」
「イブに二人で協力して、このツリーにお星様を付けると、願いが叶うのよ!
そして、それは高い枝に付けた方が、より大きなお願いが叶うのよ!
だから、あなたは、私に協力して私を上のほうに押し上げてね!」
 そう言いながら、ポケットから取り出した星型で金色のアクセサリを見せ付けた。
 僕は苦笑するしかなかった。
 学校の木に結んだリボンと言い、どうしてこう、願い事が、それも木に結ぶ願い事が好きなんだろう? 運動神経は鈍くて、木登りなんか不得意なくせに…。
 じゃぁ、僕が協力しないと仕方ないな、なんて考えてしまう事が、既に僕が先輩に対して心を許している証拠だったけど、それは、まだ気が付いてなかった。

 とにかく、だから『懐中電灯持ってきてね』なんて言ってたのか、などと思いながら、懐中電灯で適当な枝を捜している先輩を、引っ張り上げたり、押し上げたりしながら、クリスマスツリーを登っていった。
 結局、かなり高いところまで登って、そしておっかなびっくりだけど、かなり目立つ枝の先端にお星様を付ける事が出来た。
「出来たわ」
 そう言いながら、僕を振り向き、柔らかい微笑みを浮かべながら「ありがとう」そう言う先輩を見て、僕は汗を掻いていた。「卑怯だ」そう思いながら…。そんな笑顔でお礼を言われたら、そんな笑顔を向けられたら…。 僕は先輩のお願いを断れないじゃないか…。

 何をお願いしたんだろう? 誰か好きな人でもいるんだろうか? その想像に、まさか!あり得ない!と思いながらも、でも、もしかしたら…、そう思うと、何故か動揺した。
「何をお願いしたんです?」
 その僕の質問に、花が咲くような笑顔になった先輩は
「ナイショよ? でも、少しずつ叶ってるわ…」
 そう言って、僕を見つめた。
「やっぱり先輩はズルイ。 そんな顔でお願いされたら、そんな風に笑顔を向けられたら…」
 その時、僕は何を言おうとしたのだろう? でも、最後まで言う事は出来なかった。

 突然の風で、より枝の先の方にいた先輩がバランスを崩し、とっさに僕が手を伸ばして、触れることが出来た先輩を、とにかく力任せに引き寄せた。
 気が付くと、僕は先輩を後ろから抱きかかえていた。
 そして、あろう事か、僕は先輩の胸に手を当てた状態で固まっていた。そして、氷山なんかとは絶対に違う、その感触に僕は硬直していた。

「やっぱりエッチだ…」
 何とかツリーから下りた後、先輩にそう言われて、僕は何も言い返せなかった。
「でも、助けてくれたんだもんね。 ありがと」
 そう言って微笑む先輩は、何故か頬を染めていて、とても…。
 とてもきれいだと思った。
 それはきっとクリスマスの魔法なんだろう。そう思ったけど…。


 いまだに、その魔法を解く方法は見つかっていなかった。


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