怨情 2(4/14)縦書き表示RDF


怨情 2
作:勝目博



1章(3)


 里美は実は警察とのコネを持っていたのだ。コネというよりも、恋人がいたのだ。
もちろん美子には知らせていない。相手はごつい体に怖い顔。
二人が並べば美女と野獣そのもので、警視庁の殺人課に席を構える中堅の刑事だった。
里美が大学に入学して間もない頃に、二人は出会っていた。
美人で大人びた里美は、大学の帰りに暴漢に襲われたことがあった。
その時助けたのが、その刑事で、当時はまだ交番勤務のパトロール警官だった。
肉体的被害はなかったものの、上京したての里美には、ショックが大きかった。
その時親身になってくれたのがきっかけで、今では堂々と付き合っていた。
美大時代には、里美の独りよがりに過ぎなかったが、卒業後二人は急速に接近したのだ。
怒ると怖いが、里美に怒ったためしはなく、とにかく里美には優しかった。
里美は美子との電話を切った後、早速連絡を入れた。
「野口刑事をお願いします」
里美のことは署内でも知られていた。
「ちょっと待ってね」
なれた声が聞こえた。電話の後ろでは、皆がはやし立てる声が聞こえていた。
『野口、姫様からだぞ』
『結婚の相談か』
『うるさい、黙れ』 はははは・・。いつもこんな具合だ。
「はい、野口であります」
電話の出かたもいつもと同じだ。
「いつ暇取れる?頼みがあるの」
「明日は非番であります」
「じゃあ、明日自宅に行くわ」
「分かりました」
野口は電話が嫌いだった。顔が見えないから緊張するのである。
それが里美だともっと緊張するのだ。元来照れ屋なのだ。里美もそのことを知っていた。
だから二人の電話はいつも直ぐに終わるのだ。非番といっても緊急時には呼び出される。
所在を明らかにしておくか、ポケットベルを持ち歩く規則になっていた。
しかも勤務は朝七時まで、交代の署員が来て、初めて休みとなるのだ。
どんなに早く帰っても八時で、寝るのは九時過ぎる。
しかし、里美はしっかりとわきまえていた。来るのはいつも夕方だった。
野口は安心して高いびきで寝ていた。
ところが、里美は昼には玄関をノックした。眠い目をこすり里美を迎え入れたが、
その表情からただ事ではないと読み取った。
「何かあったみたいだね」
「あなた方警察にも関係することよ」
部屋に上がるなり里美は今までの状況を細かく説明した。
「すると、里美さんの親友だった弘子さんと、皆、関係あるわけだね」
野口は決して呼び捨てにはしなかった。
「死んだ弘子が手を下しているとは思えないけど、関係があるのは確かよ。
発見状態も似ているし、同一犯の可能性はあるでしょ?」
「確かに言えるね。ただ、僕は雄二さんの事件を知らない。
調べてみないと何ともいえないね」
「それが私の頼みなの。雄二の事件を調べてほしいの」
二人は軽い食事を済ませ、休日返上で調べることにした。
もしも里美の言うとおりで、繋がりが出てきたら、上司に報告するつもりだった。
雄二の事件は三年以上前の事件だ。
しかし事件は都内で起こり、警視庁の管轄には違いなかった。
雄二事件の管轄署でも昨日のニュースと結びつける刑事がいた。
当時、雄二の事件を担当していて、今回の事件が似ているように思っていたのだ。
しかし、接点が見つからずに困っていた。
同じ美大に通ってはいたが、それだけでは、捜査は進展しない。
そこに、野口と里美が訪れたのだ。
里美の話を聞くと興味を示し、快く協力を申し出てくれた。
この榊という刑事は、現場の酷似点に注目していた。
雄二の調査書類を持ち込み、今回の事件の報告書を、至急送るように連絡を取った。
報告書は、十分足らずでファックスされてきた。類似点は多く見られた。
どちらも体に残された水分量が似ているのだ。早く言えば、ミイラの状態が似ているのだ。
そして、報道はされていないが、どちらも性交渉の痕跡が残っていること。
しかも、一度ではなく、なんども交渉があった事。
雄二の場合は、布団と恋人との身体から残された精液の量から、
最低でも十回の性交渉はがあったと報告書には書かれていた。
今回の事件でも、かなり大量の女性特有の分泌液が布団に残されていたようだ。
また、ミイラ化に近い状態だったにも関わらず、雄二は三日前に仕事をしていたのだ。
その就業時の雄二の状態は、普段と変わらなかったらしい。
それがたった三日でミイラ化したのだ。
報告書の内容に野口も驚きを隠せなかった。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう