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怨情 2
作:勝目博



1章(1)


 美子はニュースを見て美大時代を思い出した。仲の良かった弘子。
美人なのにそんなことなどおくびにも出さなかった弘子。勉強も教えてくれた弘子。
美子はまた涙ぐみそうになった。弘子が死んだ後、美子はしばらく立ち直れなかった。
まさか親友が殺されるなど、思いもしなかったのである。
しかも、皆から好かれていたはずの弘子が殺されるなど、想像すらしなかった。
それから美子は勉強に集中した。悲しみを紛らわせるためにも、勉強だけを考えた。
お陰で今の美子があるのも事実だった。しばらくして、雄二の死と美奈子の死も知った。
このとき美子は何故か胸を撫で下ろしたのだ。そして『罰が当たった』と思った。
その事件で美子は弘子と決別できた。安らかに、と願いながら……。
その二人も、不思議な死に方をしたはずだった。そして今回も変死体だ。
美子は、弘子の怨念が生き続けているのではと思った。
弘子は自他共に認める、一途な性格だったからだ。
美子は誇りまみれの卒業名簿を引っ張り出した。
今では、あまり交友はなくなったが、自分と弘子の共通の友人がいた。里美だ。
三人は美大時代とても仲が良かった。
当時の写真は、ほとんどがこの三人の写真で埋め尽くされていた。
もちろん弘子が死んでしまうまでの話だが、いつも一緒だったのは事実だ。
しかし、弘子との死を境に、里美との間は離れていった。
どうしても二人でいると、弘子の話ばかりになるのだ。
それに耐えられなくなり、やがて里美とは挨拶程度の仲になってしまった。
里美は卒業後、実家に戻ったはずだ。そう思い名簿を引っ張り出したのだ。
まだ時間的にも迷惑のかかる時間ではない。美子は思い切って里美に電話した。
里美の母親だろうか、優しそうな女性が電話に出た。
美子は美大の同級生で、里美の友達だったと女性に告げると、
結局は実家に戻らず、東京で就職したと教えてくれた。
連絡先をメモに残し、美子は丁寧にお礼を言ってから電話を切った。
しかし、直ぐにはダイヤルできなかった。あれからかなりの時間がすぎている。
もし、誰かと一緒だったら?もし、疎遠になった自分を悪く思っていたら?
そんな考えが頭をよぎり、受話器を持ち上げることが出来なかった。
でも、何故かは分からないが、心の声は里美との深い関係は残っている、と告げていた。
美子は慎重にダイヤルを回した。どこにかけるのもそうだが、初めての番号には緊張する。
「はい、もしもし」
里美の声だ。美子には直ぐ分かった。
「もしもし、里美?」
「美子?」
たったそれだけの会話でも、里美も美子の声を忘れてはいなかった。
「うん。……実は……」
「美子も見たのね?」
里美の言うことは直ぐ理解できた。
「会える?」
美子は尋ねた。
「明日は土曜、私は休みよ。美子は?」
「私もお休み。じゃあ、明日?」
「いいわ、お昼前に私から連絡するわ。十一時頃。いい?美子の番号を教えて」
美子は自分の番号を教えた後、小さく呟いた。
「ごめんね」
「謝る事など何もないわ、明日ね」
里美はあの頃と少しも変わらない。
里美は三人の仲では、お姉さん役だった。一番背も高く、大人びていたのだ。
弘子は世間知らずのお嬢さんで、美子は泣き上戸のわがまま娘。
そんな二人をいつもカバーしたのが里美だった。何があってもあの絆は消えやしない。
電話の応対で美子にはそれが分かった。そして知らず知らずに美子は涙を流した。












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