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病室にて
作:滾



五話 部屋にて


僕は看護婦さんの声で目を覚ました。
「朝食の時間ですよ」
その声に起こされた僕は、しばらくボーとしたまま、半身を起こしていた。
そして、
はっ
と思い出した。
昨日の事。
夕べの事を。
「はい、あーんして」
と、恐らく僕に箸を差し出しているであろう看護婦さんの方を向き直り、
「あの」と僕は言った。
夕べの事を看護婦さんに説明したのだ。
もうダメだった。
もう、あの幽霊が誰だ、とか、そんな話はどうでもよかった。
ただ、もうこの部屋から出ていきたかった。
全てを話すと、看護婦さんは、
「そう・・・」と言った。
「解ったわ」とも。
「だけど、部屋を変えるっていう話は、私が独断では決められないの。だから、先生に聞いておくわね」
と、看護婦さんは言ってくれた。
僕は安心して、差し出された朝食を食べ終えた。

看護婦さんが出て行った直後、
「あ、先生、ちょうど良かった」
という声が廊下で聞こえた。
僕は目が見えなくなった所為で耳がよくなった。だから、外に居る看護婦さんとお医者さんの会話も聞こえてきていた。
看護婦さんは声を細めて言った。
「高野君、何か怖い夢を見るらしいんですけど」
「そうか、じゃあ安眠剤でも出しておこうか」
こういった会話が聞こえてきた。
どうやら、僕は信用されていないらしかった。


「やぁ」
声が聞こえたのは、丁度お昼のニュースが流れている頃、丁度うとうととしていた時だった。
「あ、お姉ちゃん?」
どうやら声の主は明美お姉さんのようだ。
何をしていた?というお姉さんの問に、僕は寝てた。と答えた。
「ああ、じゃあ、寝ているのを邪魔しちゃったかな?」とお姉さんが言ったので、
ううん。と、僕は首を振った。
そして、間も無く、話は夕べの話に切り替わって言った。
「部屋の隅に居た息の音が、すぐ近くにまで来たんだ」
「そう・・・」と、お姉さんは言った。
「金縛りは苦しいからね。大丈夫だった?」とも。
僕は、「なんとかね」と頷いた。
僕は幼心に森川さんの名前を出してはいけないことに気付いていたから、なるべくそっちに話が行かないように気をつけた。
お姉さんもそうしているらしく、自分の幼い頃の怖い体験を話してくれた。
しかし、
そのうち、“そういう空気”が漂い始めた。
「・・・・・」
「・・・・・」
会話も少なくなり、僕が息苦しさを感じ始めたとき、
「屋上、行こうか?」と、お姉さんが言ったのだった。












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