グレイの困惑
グレイというのは宇宙人のことです。一応。
あるUFOの一室で・・・
「私たち の 問い に 回答しろ さもなくば 殺す」
機械的且つ高圧的な声が銀色の部屋に響き渡る。
その部屋の中心には、人。
「なぁ〜に〜私超頭痛いんだけど〜。てかここどこよ〜」
と、やる気なさげに答える彼女から察するに、どうやら彼女は彼女の意思でここに来たわけではないらしい。
「んで、なんて?聞こえなかった〜」
「私たち の 問い に 回答しろ さもなくば 殺す」
「あっそ、んじゃ殺して」
「・・・・・・・・・・・・今 言った 言葉 を 繰り返せ」
「いやもうきれいさっぱり殺しちゃってって」
「・・・・・・・・・・・・生命 への 執着 は 無いのか」
「ぜんぜん」
「・・・・・・・・・・・・なぜ 死ぬ 事 を 恐れない」
「ん〜、だってべっつに〜って感じだし」
「・・・・・・・・・・・・質問 に 答える だけだぞ」
「うんホントいいから早く殺して」
あるUFOの一室で・・・
「何だあの生物は、冗談みたいには聞こえないぞ」
「どうやら本気のようです。嘘発見器が反応しません」
「くっそ、なんて生物だ、種族を守るため自ら犠牲になろうというのか」
「・・・・・・最終手段です、自白剤を投与しましょう」
「ばっ、そんなことをしたらアレルギー反応で5分以内に死んでしまうぞ」
「やむを得ません。実験体はまた採取しましょう」
「・・・・・・よし、自白剤、投与」
あるUFOの一室で・・・
「ねえ、いつまで閉じ込められてるの?殺さないんだったら出して〜〜」
そのとき、銀色の壁に穴が開き、その穴から霧が噴出してきた。
「なになに〜毒ガス〜?痛いのはやだよ〜・・・・・・は、はぅわっっ、ニャ、ニャにこれ〜〜〜〜?」
あるUFOの一室で・・・
「アルコール500ミリリットルを含む霧だ。もうまともな判断能力は残っていまい」
「どうやら、効いてきたようです」
「よし、質問に入れ」
あるUFOの一室で・・・
「私 の 質問 に 答えろ」
「う・・・ん? いいよぉ何でも答えてあげるぅ」
「人 の 弱点 は 何だ」
「ジャクテェン?ん〜〜〜とね、心だね。うん」
あるUFOの一室で・・・
「こころ、だと?どういう意味だ?」
「え・・・とですね。つまりこの生物は脳のほかに、もう一つの判断機能があるようでして」
「なるほど、それは体のどの部分だ?」
「いや・・・それが前回の解剖実験ではそれらしい臓器は発見できなかったようです」
「なに?敵の弱点の場所がわからないだと?」
「嘘発見器は反応していません」
「うるさいっ!」
あるUFOの一室で・・・
「ね〜ぇ、次の質問まだぁ?お姉さん飽きちゃったよぉ・・・」
「人 の 好む 物 は なんだ」
「金!金だよ世の中・・・はぁ・・・・・・クスン、うっく、うぅぅ、あつしぃ・・・」
あるUFOの一室で・・・
「金、とは?」
「万能の判断基準のようですね」
「は?それが好むものというのはどういうことだ?」
「どうやらより価値が高いものを好むようなのですが・・・実はよくわかっていないのです」
「どういうことだ」
「必ずしも価値が高いものを好むのではない。ということなのです。実は、人間を相手に、価値がとても高いとされている移動手段、車と、それほどの価値でないティッシュというものを、街頭で配布してみたのです」
「で、その結果は?」
「ティッシュという物体のほうに人はより興味を示しました、車は誰一人として受け取ろうとしなかったのです」
「は?なんて奇妙な生物だ」
「嘘発見器は反応していません」
「黙れ!」
「大変です!実験体が暴れだしました!」
「なにっ!」
あるUFOの一室で・・・
「ウワァァァァン!何で別れるなんていうんだよぅ・・・私精一杯アツシに尽くしてきたのにぃ・・・・・・ビェェェェン!」
「落ち着け 落ち着け 落ち着け 落ち着け 落ち着け 落ち着け 落ち着け 落ち着け」
「おそろいの携帯だって買ったのに!テレビだって買った!クーラーも!掃除機も!アツシが欲しいだろうなぁ〜って思うもの全部買ってあげたのにぃぃ・・・アァァァァン!」
あるUFOの一室で・・・
「手がつけられません!しかもアルコールを投与してからもう5分を過ぎているのに・・・」
『ウワァァァァン!ウワァァァァン!』
「どうする!おとなしくさせないとマズイ!」
「振動で、機体にダメージが!」
「平行維持機能、もう持ちません!」
「クソォォォォ・・・おい、マイクを貸せ!」
「はっ、なにを?」
「あの生物を黙らせる!!」
あるUFOの一室で・・・
「ウワァァァァン!ウワァァァァン!」
「黙れっっっ!!!!」
「・・・・・・ウァ?」
「いいかよく聞け、さっきから聞いていると何だ!貴様は!人の癖に人の性質も知らんのか!いいか、人という生物は、ある程度以上の価値になると、それを受け取りたがらないという習性があるんだ!さっき言っていた・・・アツシ!そうアツシだ!そいつだって、そのような価値の高い代物を強制的に与えられたら嫌がるのは当然だっ!貴様はそんなこともわからないのかっ!」
「!!・・・そ、そうかぁ・・・ヒグッ、だから・・・あんなに嫌そうに・・・」
あるUFOの一室で・・・
「よし、あいつを送り返せ」
「いいんですか?そんなことをして」
「ああ、それとこの星を侵略するのはよそう、どうもこの星の連中はわからん」
「ですね」
あるビルの屋上で、靴を脱ぎ今にも飛び降りてしまいそうな格好で、女性が横たわっていた。
「ウウウウウウ・・・ウァ?ここどこ?確かビルから飛び降りてぇ、飛び降りたら落ちるはずが逆にあがって行ってぇ、変な銀色のとこで目が覚めてぇ、それで・・・」
「トゥルルルルルル、トゥルルルルルル」
「あ、電話だ・・・」
「もしもし?俺、アツシ。あの、ごめん。さっきは悪かったな。別れるなんていって」
「うん、ぜんぜん気にしてないから」
「そ、そうか。てっきり『自殺してやるぅぅぅ』って叫びながら出て行ったから、気にしてるのかとばかり・・・」
「いや、いいの。それより、私、すぐアツシに物を買っちゃう癖直すね。嫌だったでしょ?」
「いや、俺は別に・・・」
「正直に言って」
「・・・・・・ああ、すごく嫌だった。でも直してくれるっていうなら、これからも・・・」
「うんっ!これからもよろしくねっ!」
まあよくある題材ではありますが、
読んでいただいてありがとうございました。