私の彼氏は学校の先生。
もちろん誰にも秘密の関係。
誰にも内緒の禁断の恋。
「おはようございます。」
まるでごくふつうの教師と生徒のように、視線を交わし挨拶をする。
二人だけの秘密の関係。
罪悪感や不安が毎晩私を襲うんだ。
それは先生と生徒だから。
それ以外にも。
人のモノだから。
綺麗で可愛らしい奥さんの、愛する旦那様に手を出してしまったから─。
私に与えられた罰はただ一つ。
決して自分の幸せを求めないこと。
ただそれだけ。
「じゃあ次の問3の問題を平さん。前に出て黒板に書いてみて。」
ドキドキ…
ドキドキ…
みんなに私たちの関係がバレちゃうんじゃないかって。
そんなわけないのに。
先生は焦ったりとかしないのかな?
何か悔しいな…。
窓の外にはもういちょうの葉が、少しだけど色づいている。
この学校のシンボル。
大きい大きいいちょうの木。
もう何十年も前からこうして私たちを見守ってくれている。
そんないちょうの葉が少しずつ色づいていく様子を横目に私は黒板の前に立つ。
チョークを持った右手が何だか震えてる。
全然分からないんだもん。
ノートも頭も真っ白で…
「分かんないの?先週やったばっかりじゃん。」
だって分からないものは分からないんだもん。
しょうがないじゃん。
先生のバカ。
授業中の先生は何か冷たい。
冷たい先生は嫌い。
「出来るまで進まないよ。」
教室にざわめきが聞こえてきて、
顔が真っ赤になってきちゃって…
どうしよう…
何か泣きそう…
「な〜んてね。嘘、嘘!もういいよ席戻って。」
先生…。
「はい…。」
また出来なかった。
先生には褒めてもらいたいのに…
先生の出す問題はいつも全然解けない。
薄ムラサキとピンクが混ざったような色。
空がそんな綺麗な色に変わる頃が私は一番好き。
授業が終わって、掃除も終わって。
これからが私たちの時間。
「失礼しま〜す。」
今度はもう冷たくない。
ドアを開けた先に待っているのは私の大好きな優しい先生。
私の大好きな笑顔で優しく微笑んでくれる。
「紅茶でも飲む?」
そう言いながらミルクとレモンを持って首をかしげる先生がたまらなく好き。
「じゃあミルクで♪」
先生はいつもコーヒー。
小っちゃな角砂糖を必ず二個ポトンって入れるんだ。
紅茶とコーヒーを持って並んで座る。
隣同士。
「あっ!葉っぱ…」
いちょうの葉が風に舞ってる。
まるでダンスでも踊っているみたいだなぁ。
「もう冬になるんだね。」
風に舞ういちょうの葉を見ながらそう先生はつぶやいた。
優しい瞳で窓の外に視線を向けている先生に思わず見とれてしまう。
あのいちょうの葉っぱが羨ましい。
先生に見つめられるあの葉が羨ましいよ。
「冬好き?」
「…先生が好き。」
先生の少し甘いコーヒーと私のミルクティーの甘さが、口にそっと広がっていく─。
「ん…ケホッッ」
「あ…苦しかった?ごめん!」
私は首を横に振ってそしてせがむの。
「もっかい!もう一回して先生…」
禁断の関係はきっと終わる。
いつか全て崩れる。
それでも今だけは。
私だけの先生でいさせて… |