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作:久遠



第6話:歯車


翌日の教室。珍しく遅刻をしないで、若干早めに登校した和人と彩花。

現在、先生が来るまでの時間を新しいクラスメイトとの談笑で過ごす生徒達


「………」

何よ…心配して損した……

不機嫌な彩花の視線の先には…

「しっかし…無愛想になったよな〜。昔は、和くん、和くんって、子犬みたいで可愛かったのに…」

「う、うるさいな…昔の事はいいだろ!」

楽しそうに会話する。和人と琴乃。

既に来ていた琴乃の隣に和人が座り、昨日のような空気になるのではないかと思った矢先に、挨拶を交し、談笑を始めたのだ。

彩花だけてはなく、クラスの誰もが驚きの表情で二人を見ていた。





〜回想〜


受話器を取り、数年ぶりとなる電話番号をプッシュする。

数回のコール音の後、電話が繋がる。電話の先は…

「もしもし、春日ですが…」

琴乃の実家である。

久しぶりに聞く、穏やかな声…

「…お久しぶりですね。瑠璃お姉さん」

「え…。その声……か、和人くん?…和人くんなのね!?」

電話の相手は春日瑠璃。琴乃のお母さんである。

「ええ、ちょっと聞きたいことがありまして…」

「……琴ちゃんの事?」

「いえ…、それは本人から直接聞きます。聞きたいのは、今、琴乃が住んでいる場所です」

「………聞いてどうするの?」

「…実は、今日会った時、話すことができなくて…だから、これから話をしに行きたいんです。お願いします。教えてください」

真意を尋ねる瑠璃お姉さんに、俺は自分の気持ちを伝える…。もう、お互いに過去に囚われたくは無いから…

「ふふ…よかった…」

「? 瑠璃お姉さん?」

本当に、優しい声…久しぶりに聞く…受話器の向こうで、微笑んでいる瑠璃お姉さんの姿が浮かぶ…

「ごめんなさい。なんでもないわ。琴乃ちゃんの居場所だったわね…」

瑠璃お姉さんの言う住所をメモ用紙にめもる。

「…はい……どうも、ありがとうございました」

「いいのよ。琴乃ちゃんの事、よろしくね♪今度、二人で遊びにいらっしゃい」

「あはは、機会があれば…。では、失礼します」

電話を切り、受話器を置く。

「よし!行くか!」

メモを片手に気合いを入れ、家を出た。



「………此処だよな…?」

住所の場所は、住宅地から離れた場所にあった…

先程の気合いは何処に行ったのか、意気消沈している…

だってなぁ…

もう一度、塀にかかっているプレートを見る

『撫子女子寮』

……見間違いじゃない。

夕刻時×アポなしの男×IN女子寮=怪しい男

「……で、出直すか…」

そう呟き、その場を後にしようとしたが…

「あら、お客様?」

……時、既に遅し…寮の人らしき人に声をかけられてしまった。


落ち着け…冷静に話せばわかって貰えるさ…

「初めまして、自分は氷室和人といいます。此方に春日琴乃さんが在住をしていると聞きまして、馳せ参じた次第でございまする!」

ヤバい……これじゃ、怪しい人だ…

緊張から変な言葉になってしまった…。此処は撤退し、後日また来よう。

菓子折りでも持ってくれば、ある程度はましな印象があたえらるはずだ…。うん、そうしよう。

そう考え、逃げようかと思ったのだが…

「これはご丁寧に。私、撫子寮の管理人をしています、小松原惟子と申します。」

にっこりと微笑んで、挨拶をしてくれた…

「………」

「琴乃ちゃんですね?呼んできますので待っててください」

唖然としていると、惟子さんがそう言って、寮の中に入っていく。

「いい人そうで助かった…」

心底安心した…


――バタン!!

暫く待っていると、ドアが閉まる大きな音がし…

――バタバタバタ!

廊下を走る音が聞こえてくる。

そして…

――ガチャガチャ!

慌てて玄関を開けようとする音が聞こえてた後…

「はぁ、はぁ…か、和…くん?」

息を切らせながら琴乃がやってきた。

「……よぅ、久しぶりだな。って、言っても学校で会ったな」

「…え?あ…うん…」

突如現れた俺に心底驚いている琴乃。正直、会ってからどう話をするかとか全然考えてなかったんだけど、狼狽する琴乃を見てたら、冷静になれた…

「ちょっといいか?学校で話ができなかったから…話をしに着たんだ…」

「………うん…」


落ち着いて話をするため、場所を移動。やって来たのは近くにあった児童公園…。

俺と琴乃の別れの場所でもある公園。話にはうってつけの場所だ

「まず最初に…」

「ごめんなさい!」

ベンチに腰掛、話を切り出そうとした矢先、琴乃が謝りだした…

「な、なんでお前が謝るんだよ?」

「だ、だって、私…酷い事言っちゃったから…」

言われて考える。確か、こっちに来てからは口を利いてないはずだから…別れのときのあれか…

「大嫌いって奴か?別に普通だろ。あんんだけ待たされたら…」

「でも…おじさんとおばさんが…」

「知らなかったんだろ?だったら怒るだろう。悪いのは俺だよ…」

そう、悪いのは俺…

「あの後さ、お前と会って話をしていれば、よかったんだ。でも、俺はそれが出来なかった。心が弱かったから…。それどころか、あの日、父さんと母さんが死んだ日の事を思い出したくなくて、お前の事を忘れようとしてたんだぜ?最低だよ…ごめんな」

「悪くない!和くんは悪くないよ!」

……昔からそうだ…。自分の考えは変えず、一途に貫き通す。変わってないな、その性格。

何を言っても、自分が悪いといい続けるだろう…これじゃ、解決しない

「ならさ…どっちも悪かったって事で手打ちにしないか?」

「え?」

「お互いにきちんと謝ってさ…。幼馴染として、友達として、また…やり直そう」

「そんな…和くんが謝ること…」

「お前が自分が悪かったと思っているように俺も俺が悪かったと思ってるんだよ。だからさ、お互いにお互いを許すことで、もう自分を責めるのは止めないか?折角再開したんだから、俺はお前と仲良くしたいんだ」

「私も…」

「ん?」

「私も仲良くしたい…」

あの日…ほんの少しずれた歯車が…

「じゃ…改めて…」

噛み合い…

「「ごめんなさい!」」

再び、時を刻だす…



「ところで…」

「?」

「お前、なんで転校してきたんだ?」


俺の問いに、琴乃は顔を赤くしたまま、怒鳴るだけで答えてくれなかった……












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