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作:久遠



第28話:冷戦と策略


――Side Kazuto Himuro

「ふぁ〜…ねみぃ…」

梅雨ももうじき、明けようとしている…。久しぶりに太陽が顔を出した青空の下へと、四限目の体育の授業をするために更衣室でジャージに着替え、玄関口に向かっているのだが…

眠い…というより、めんどくさい。そして何より…

「あのギスギスとした空気が嫌なんだよな…この時期は…」

「同感…」

俺の気持ちを、隣を歩いていた冬至が代弁する。体育は二クラス合同…俺らのクラスは冬至と一緒のクラスとの合同だ。なので、冬至もジャージという格好である…

で、そのギスギスした空気の原因となっているのは…

「はぁ…もうそろそろ球技大会だからな…」

「冷戦状態に入ったか……」

球技大会である。

「今年は、お前らのクラスとは敵だからな…うかつに喋ることもできないんだよな」

「…というか、今の状態も結構やばいんだ……過激派がいなくて良かった」

冬至が安心した口調で言う。

光琳の球技大会は異常なほどに盛り上がり、何処のクラスも全力の本気で優勝を狙ってくる。特に最後の年である三年の勝利への執念はすさまじく、毎年数人くらい過激派と呼ばれる連中が出てくる。

球技大会の前に選手を潰すべく、体育での合同練習で反則技を仕掛けたり、また、購買のパンなどに下剤を混入したりなどやることが過激なのでそう呼ばれている…てか、犯罪ですから。

去年、過激派が所属するクラスの女子生徒が恋人であった別のクラスの男子生徒に話しかけただけで、二人とも過激派の粛清対象になったという恐ろしい事例があり、冬至が恐れているのはそのことだったりする。

で、話を戻すが、ギスギスした空気というのは過激派とまではいかなくても、他クラスは基本的には敵であるため、互いに敵対心を持っており、この時期の体育ではそんな空気になってしまう…これを俺らは冷戦状態と呼んでいる。

まぁ、誰がどれだけ上手いかなどを見極める機会なので、情報収集という面も含まれている…という意味合いからなのだが、誰が言い出したかは覚えてない…

「お?氷室じゃんか!って…時雨……お前……そこで何してるんだ?」

途中で、前回死の淵から見事生還した琢磨と遭遇する…琢磨は冬至を見ると眉をひそめる…

「琢磨、あからさまな敵意を出すなよ…」

「…大変だな冬至も……」

サッカー部部長でエース。運動神経抜群の冬至君は要注意人物指定されており、人並みよりも多くの敵意に晒される。

ハジが言うには、モテる冬至に男子生徒が嫉妬し、ここぞとばかりに攻撃する絶好の機会だかららしいが……琢磨を見ればあながち間違えじゃないのかもしれない。

「で、お前は身体の具合はどうだ?」

「あぁ!ばっちりだ!!お前と黒羽先生のおかげだな!ありがとよ。これで汚名挽回できるぜ!!」

「あぁ、頑張って挽回してくれ…」

お約束な間違いに突っ込むのもだるいので、適当に流しつつ……玄関までやってきたので、靴に履き替え…

「ん?和人?何処に行くんだ?集合場所はグラウンドだぞ?」

安眠スポットでサボろうかと歩き出したところで冬至に呼び止められた。

「あぁ…眠いから、いつもんとこでサボる…筋肉ゴリラには適当に言っといてくれ」

「……ちょっと待て……和人、このペースでサボると後半サボれなくなるぞ。単位が厳しい」

ポケットから出した手帳を確認し、そんな事を言う冬至

「……マジ?」

「あぁ、結構サボってるからな。ほら」

冬至の広げている手帳を覗き込む。カレンダーに○印と×印が記されており、○が出席、×がサボりをあらわしているのだが、圧倒的に×が多い。ちなみに、手帳の表紙には『和人の出席状況』とか書かれている。

「って、なんで時雨がそんなことしてんだよ!」

「…当たり前だろ。和人を卒業させるためのサポートは俺の義務…いや、使命……天命といっても過言ではない。しかし、出来ることなら和人の主義主張を通してやりたい。だから、ギリギリのところまで妥協するべく…その努力をだな…」

ペラペラと饒舌に語る冬至に琢磨は若干引きつった顔をし、俺の耳元で…

「な、なぁ…時雨の奴。そっちの趣味があるんじゃないか?」

とか不吉なことをノタマウうのだが、そんな琢磨を無視して、重い足取りでグランドへと向かうことにした……流石に、留年はしたくないからな…。






――Side Ayaka Tatibana


放課後。球技大会に向け私達は教室で勝つために、誰をどの種目に出すかの会議をしていた。

メンバーは…

「他クラスのデータだけど、まずサッカーは棄てよう。時雨くんとかが相手となると優勝は無理だから」

作戦参謀。我がクラスの諸葛孔明、一文字啓ことハジ君。

「テニスは幼少の頃から嗜んでいましたの。任せてください」

生徒会長兼クラス委員長。北條沙耶香こと沙耶香

「じゃ、私はバレーと剣球に出るわ」

そして、私。実行委員で剣道部部長の橘彩花の計3人…あと一人、来るはずなんだけど…ちょっと遅れてるみたい。

とりあえず今は四つの机をくっつけて、三人で話し合いをしている。私の隣が沙耶香、対面にハジ君が座っている。

「で、今日一番の問題は…カズ君…なんだよね……」

スッっと、ハジ君が和人が写った写真を中央に置く。うぅ〜、写真嫌いの和人の写真…どうやって撮ったのかは知らないけど、内心、凄く欲しい…。

そんな私の考えがハジ君に伝わったのか、ふふっと笑うと…

「後で焼き増ししてあげるよ」

「「是非!!」」

沙耶香と声が揃ってしまった…

「だから、今は、カズ君のことを話そう。で…どうしようか?」

気を取り直し、話し合い再開。和人の出場種目…去年も冬至君と頭を悩ませた議題である。

基本的に無気力でやる気が無いのだが、運動神経は抜群いい和人。

正直、和人無しで優勝は見込めないだろう。だが、当の本人は、先程の通りやる気が無いので真面目にやらない…。まともにすれば、何に出てもクラスに貢献できると思うのだけど…

「去年はどうしたんですの?」

「冬至君とサッカーに出て、ずっとキーパーやってたわ」

和人に何故か甘い冬至君が何時の間にかそのように決定を下していた。試合では時折シュートを防いでいたものの、ボケーと突っ立っていたのが印象にある。もしかすると、立ったまま寝ていたのかもしれない。

「僕が聞いたとこによると、カズ君はベースボールの外野。もしくはドッチボールを希望してる」

どちらも、割と楽な部類に分類される。特にドッチボールは寝てても勝てるだろう…、まぁ、その理由は球技大会が始まれば嫌でも分かるからこの場ではスルー。

「………あの、どの種目にしたとしても和人さんがやる気を出さなければ意味がないんじゃありませんの?」

「……それは…そうなんだけど……こればっかりは僕でも難しい…橘さんどう?」

「…出来るようなら去年の段階でとっくにやってるわよ……怒るのは論外。あいつあれで子供っぽいところもあるから、拗ねちゃって逆効果。物で釣るのも駄目ね、殆ど物欲なんてないし…」

まったく、扱いづらいったらないわ!

「…挑発という手はどうでしょう?」

「…駄目よ……あいつは自分を卑下してるところがあるから、プライドなんて殆どないし、挑発したところで聞き流されるだけね」

いい案が浮かばず、会議は進まない……。そこに……

「おっす!どうだ!?必勝の策は練れたか!?」

遅れていた最後の一人…御堂先生がやってきた。

空いていた席に座った御堂先生に、ハジ君が説明する…

「なるほどな…だが、氷室に関しては既に手は打ってある」

ニヤリと悪どく笑う御堂先生。その自信たっぷりの表情に私達は首を傾げるのだが、詳しいことは話してくれず、和人の名をバスケと剣球の欄に書き込んでしまい、私達はとりあえず他の生徒達の種目を決めることにした。



―Side Kazuto Himuro

……謀られた

放課後、意気揚々と帰宅し、睡眠に勤しもうかと思いきや、担任の御堂教諭から大事な話があるといわれ、職員室にある第2生徒指導室に呼び出されたのだが…

中には…

「あ、ひーたん♪いらっしゃ〜い」

御堂教諭ではなく…

「よ、羊ヶ崎先生!」

羊ヶ崎先生が居た。

座って♪と言われ、何を言われるのかまったく見当がつかないため、内心恐々と椅子に腰掛ける。

「……真希ちゃんから…聞いたよ〜」

「な、何をデス!?」

やべぇ、滅茶苦茶緊張する…発音がおかしかったし…

「球技大会サボるんだって…」

「……は?」

な、なんだそれは…いや、待て、待ってくれ、サボろうかなとは思っていたが、言葉にした記憶が無い…

「メッ!。球技大会は〜クラス皆で〜………」

困惑する俺に、先生はスローテンポでまったく迫力の無い説教を始めるが、聞いてるほうは拷問だ。睡魔の軍団がこれでもかというくらい襲来する。だが、寝るわけにはいかない!

寝たら、確実に泣くし、絶対泣くし。女の涙ほど強力なものは無いと生前爺ちゃんが言っていたが、この人のは桁が違う。すごい罪悪感に苛まれるのだ…。

くそ…やってやる…やってやろうじゃないか!

到来する睡魔の群れに、一人立ち向かう…大群の群れに突っ込み、攻撃に耐えつつ、睡魔を撲滅していく。

「……だからね〜。ひーたんも頑張るの」

「わ、分かりました。分かりましたから。全部、羊ヶ崎先生の言うとおりです。ごめんなさい」

ようやく説教という名の拷問が終わった。長かったのか短かったのか…時間の感覚がまったく無い。ただただ必死に睡魔共と戦っていた…精神的に酷く疲れた…もう、夕飯はいっか…帰ったら朝まで寝よ…

「ふふ〜いい子♪じゃ、これ書いてぇ、球技大会がんばってぇ」

「誓約書?」

渡されたのは誓約書。内容は球技大会でバスケと剣球に参加し、全力で戦う事を誓うものだった。

「約束破ったらぁ、メッてするよぉ」

「か、書きます。やります。全力で!」

誓約書に名前と拇印を押し、ようやく開放された俺は、家に帰り死んだようにして眠った……。


翌朝、彩花から出場種目を告げられ反論しないことに酷く驚かれたのは言うまでもない…




更新完了!

霞「おっそい!今まで何してたの!?」

いや〜スランプに陥って気晴らしにネトゲやってたさw

霞「……ふぅ…まぁいいよ。ボクの出番は前回までだし、どうせまた出番無さそうだし…」

うんそうだね〜。ていうか、もう本編でキミのでばんないかもー

霞「なっ!?ちょっと!」

さて、今回は球技大会に向けての話し、次回が球技大会本番になる予定さ!

霞「ごまかすなーー」

では、次回まだお会いしましょう。では!

霞「わ、逃げた!あ、感想お待ちしています。できれば、このアホ作者にボクの出番が増えるような事を要求するような…って、待てーーー!」












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