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作:久遠



第27話:孤狼と歌姫とお隣さん 後編


――Side Kazuto Himuro


俺は、静かな雰囲気が好きだが、賑やかなのも嫌いじゃない。

ましてや、それが親しい者同士ならなおさらだ。一人で居ることが多かったから余計にそう思う…

だが…賑やかなのと騒がしいのは違う。そして、今の状況はどちらに分類するかというと…

「だから!和人は和食が好きなの!だから此処は和食を選ぶべきでしょ!!」

「確かにそうだよ。でもね!和食は先輩が作った方が美味しいんだ。だから、家で作れないピザとかを頼んだ方がいいよ!先輩はイタリアンも好きだもん!」

復活した彩花と風呂に入って戻ってきた霞が言い争っている…出前を頼むので和食などの丼や蕎麦にするか宅配ピザ&スパゲティーのイタリアンにするかだ。うん、騒がしいことこの上ない…

ちなみに、俺は特に好き嫌いは無い。ある程度の食べられる料理という条件付きだが…

ともかく、俺は、ますます夕食が遅くなると思ったので…

「よし、じゃ間を取って中華にしようぜ。爺ちゃん御用達の店があるから味は保障する。多分、電話のトコに番号とメニューがあったはずだ、持ってくるから待ってろ」

仲裁に入ることにし、この提案に二人は渋々頷いて、事なきを得た。はぁ…疲れる…

とまぁ…こんな調子でドタバタした夕食がなんとか終了し…

「ふぅ…」

食後のお茶を啜る。生憎と、二人が居るので日課となっている武術の鍛錬は出来ない。まぁ、最近オーバーワークだって奈緒先生に釘を刺されてるので、休むいい機会だ。

けどなぁ…日課となってることを一日でもやらないと気持ち悪いんだよな…寝つきも良くないし。

鍛錬をした場合、布団に入ってから3秒以内に寝られるが、やらない場合10秒近くを要する……7秒の差はかなりでかい…

と、そんな事を考えていると…

「和人、はい、おせんべい!」

「…いや、今、飯食ったばっかだろ」

台所に行っていた彩花が、せんべいなどのお茶菓子を用意し、戻ってきて、俺に差し出す。何時もなら、こんなことしないのだが…何処か今日の彩花はおかしい…

だが、生憎と夕食を食べたばかりなので食べる気にならない…。そんな様子を見て、ふふんと不敵に微笑む霞…

「そうだよ。まったく、配慮が足らないよ。あ、先輩。お茶注ぎ足すよ」

「…いや、まだ十分入ってるし」

急須を持ってお茶を継ぎ足そうとするが、まだ一口しか飲んでいないので、当然のごとく茶碗の中には茶が残っている。彩花がお返しとばかりにふふんと嘲笑する。

「そうよ。まったく、配慮が足らないわね」

…なんかバチバチと火花の音が聞こえる。

「た、橘さんに言われたくない!」

「あたしだって、あんたに言われる筋合い無いわよ!!」

……休む機会だと思ったが、どうやら平穏は瞬く間に過ぎ去ってしまったらしい。

ギャーギャーと言い合う二人。

「で、結局。あんたと和人の関係って何!?あたしとの事は話したんだから聞く権利はあるはずよ!」

「いいよ。聞かせてあげる。ボクと先輩の甘く、せつないお話を!!」

「……風呂入ってこよ」

ちっとも休めず、いい加減、疲れてきたので、まだ熱かったが我慢してお茶を飲み干し、俺は風呂に向かうことにした…



で、風呂から出てきたら……

「…あんたも苦労したのね…」

「分かるの?」

「分かるわ…良く分かる。あの超絶鈍感男のせいで私もどれだけ苦労したか…」

「だよね!?それとなくアプローチしても全然気がつかないんだよね!」

「そうそう…それに、天然の女殺しだし。あの笑みで優しくされたら…落ちるに決まってるじゃない!!」

「…ねぇ、学校でライバルって居るの?」

「…私の把握してる限りでは三、四人ってトコかしら。あんたを含めてだけど、みんな強敵よ」

なにやら、雰囲気は一変し、互いの手を取り、意気投合している。女ってのは…理解できないな。あんなに仲が悪かったくせに…

「ふぅ…いや、仲良くなったようで良かった」

「………」
「………」

「な、何だ?」

声を掛けると二人揃って睨みつけてくる。そして、おもむろにため息を吐くと…

「…まぁ、仕方が無いよね」

「ええ、和人だしね」

「負けないよ。橘さん」

「…彩花。彩花でいいわよ。私も霞って呼ばせてもらうから」

「じゃ…彩花先輩って呼ばせてもらうよ。では、改めて彩花先輩、私は負けないから」

「ええ、恨みっこ無しよ」

ガシッと握手をし、笑みを浮かべる二人。

何がなんだか、良く分からないが…仲がいい事はいいことだ。うん、そう思うことにしよう。

俺の生存本能が細かいことを突っ込むなと訴えかけてくるので、強引にそう納得することにした。


「とりあえず、今日は休戦って事にして…ね、よかったら何か歌ってよ」

「いいけど…って、あぁ!そうだ。忘れてた。ボク、これを先輩に渡しに来たんだった!」

ゴソゴソとバックの中を漁り、取り出したのは数枚のルーズリーフ

「これって…」

「うん、この前の曲の詩。タイトルは『Meet again』」

「よし、じゃギター持ってくっから合わせてみよう。あの時はピアノだったからイメージと少しずれてくるけど、ま、そこは俺がなんとかアレンジして出来るだけカバーするから」


ギターを持ってきて、チューニングをし、準備完了だ。

「ちょっと恥ずかしいな。霞と爺ちゃん以外の前で弾いたこと無いから…霞は散々大勢の前で歌ってるけど、俺にとって彩花が初めての観客だな……ミスはご愛嬌だからな、許せよ」

それだけ言って、霞に目で合図を送り、曲を弾き始めた…




――Side Ayaka Tatibana

霞から話は聞いたのだが、正直、半信半疑だった。

和人がギターを弾いているところなんて、今ままで見たこと無かったし…

けど…ギターを持ってきて、音を奏ではじめた和人と、その音に霞の歌声が合わさった時…そんな考えは吹っ飛んだ。

いや、吹っ飛んだという表現は正しくないかもしれない。しいて言うなら…上書きされた…かな?

この歌を聴いてると、嬉しさとか喜びとか…そんな暖かいもので心が満たされていく。

「ふぅ…いい歌が出来たね♪」

「あぁ、いい仕事するぜ。流石プロ」

「アマチュアでこれだけの曲作ったくせに…そんな事言われても嬉しくないよ」

歌が終わると、二人は楽しそうに会話する。私は、暫く余韻に浸り……考える。

凄かった…歌っているのはあの人気歌手Soraだから上手いのは当たり前だし、すごいのも納得できる。でも…

「ねぇ…これ、本当に和人が作った曲?」

「うわ!?最初の感想がそれかよ!」

確かに、自分でも感想としてはどうかとは思うけど…

「だって…いい曲だったから。CDで出てたら絶対に買っちゃうような…」

「…いや、そこまで持ち上げられると、逆に困るんだが…」

別に、持上げた訳じゃない…本当にそう思ったから……これを和人が作ったなんて…やっぱり信じにくい

「ねね、先輩。こうなったらユニット組んでデビューしちゃおうか?」

「絶対に嫌だ」

「な、なんで!?実力あるのに…」

「そんな事無いだろ?まぁ、仮にあったとしてもだ。大勢の人に注目されるの嫌だし、二度寝が出来なくなる生活も嫌だし、家に帰れなくなるのも嫌だしな」

霞がそこまで言うからにはやっぱり、相当に実力があるんだろう…

「ね、霞とさ初めて作ったっていう曲があるんでしょ?」

「ん?聞きたいのか?」

「聞きたい!!」

あ、思わず声が大きくなっちゃった…。

「リクエストも入ったし…霞、もう一曲行くか?」

「うん♪ボクも歌いたかったしね!」


その日、私は素晴らしい歌を聞けて…強敵だけど素敵な友達が出来て…

大好きなあいつの意外な一面を知ることが出来た。



追記

時刻は深夜…皆、それぞれ割り当てられた部屋で眠っている筈なのだが…

「ねぇ、休戦しようって言って、あんたは呑んだのよね?」

「も、もう…12時過ぎてるもん。今日じゃないもん」

「そんないいわけが通用するかーーー!!」

「なっ、そういう彩花先輩こそ!その手に持っているものは何!?」

「こ、これは…ま、枕よ。わ、私、枕変わると寝られないから…」

「……で、なんでその枕を持って先輩の部屋の前に来たの?」

「………。そ、そういうあんただって!何よ。その格好は!下着の上にYシャツを羽織っただけじゃない!」

「ぼ、ボクは寝るときはいつも薄着なの!こんな感じの!」

「……で、その格好でどうして和人の部屋のドアノブを握っているのよ?」

「………」
「………」

「ふっ、やはり私達は相容れないようね…」

「そうみたいだね。残念だよ…きっと出会い方が違ってたら仲良く出来たと思うのに…」

ドタバタという騒音と怒鳴り声が深夜の静寂を破る。こんな状況の中…部屋の中では…

「すぅ…すぅ…Zzz…」

まったく起きる気配も無く、幸せそうに和人は眠りについていた…。




更新完了!

琴乃「………」

な、なんで睨んでるんですか琴乃の姉さん

琴乃「いやな…私は幼馴染……なのに、何故あの場にいないのかと…遺憾を感じているんだ…」

うっ…

琴乃「枕?下着にワイシャツ?くっくっく…小娘ども…いい度胸をしておる…」

せ、性格が変わってる!?い、医者ーー!!奈緒先生ーーーー!

琴乃「討ち入りじゃーーー!」

奈緒「…おー……」

って、奈緒先生。そっちサイドっすか!?

あ、もういないし…くそ、急いで止めに行かないと…話が無茶苦茶に…。

と、という訳なんで今回は此の辺で…感想よろしくおねがいします。ではでは!











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