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作:久遠



第23話:修羅場拡散注意報


――Side Kazuto Himuro

休み明けの気だるい月曜の平日…。

昼休みの終了間際、俺は映画のチケットのお礼を改めて言いに、保健室に訪れたのだが…

「……で?…どうだったの?」

奈緒先生に捕縛されて、誰と映画に行ったかなど詳細の説明を求められていた。

流石に、学校で奈緒さんという呼び方を定着させる訳にも行かず、その事を告げると、奈緒さんは渋々妥協して奈緒先生という呼称に落ち着いた。

「奈緒先生、そろそろ五限目が始まるので、また…」

「…ヒム君のクラス……次の時間は……体育……サボるはず…」

ぐっ、見通されていた。

奈緒先生はテキパキと二人分のお茶を淹れ、お礼に俺が持ってきた佐藤和菓子店の羊羹を切り分けて、座った。

「……話す…」

「はい…了解いたしました」

逆らう術を失った俺は先生の対面に座る。それと同時に授業の開始を告げる。チャイムが鳴った…



とりあえず、映画の件を話し終えたところでズズズっとお茶を啜る。

クラスメイトの皆は元気に汗を流していることだろう…そんな中で、俺は午後のティータイムを楽しんでいる。考えてみれば、とりわけ、言い渋るような事は無いにも無いのだ…

「……予想通りだけど……予想外…」

「何がです?」

「……ヒム君…寝ると思った……でも……始まる前に寝るとは…思わなかった…」

「あ、あはは…すいません。なんか、映画のチケットを無駄にしちゃって…」

「…構わない……私…興味無かったから……で……その後は…どうしたの?」

「その後は喫茶店に行ったんですけど……何やらおかしなことになってですね…」

お茶を啜り、喉を潤した後、俺は話し始めた。


〜〜回想〜〜


映画を見終わった俺達はケーキを食べにブロッサムにやってきた。

綺麗な音のカウベルが来客を告げ…やってきたのは…

「いらっしゃ……え!?か、和人くん…と……琴乃さん……」

「よっ、今日もバイトか?大変だな」

ひかりだった。笑顔だった表情は俺と琴乃を見た後、何故か固まってしまった

「こ、こちらに…どうぞ」

暫くして、硬直から解けたひかりが席に案内し、メニューを置いて逃げるように行ってしまった。なんなんだ…一体?

「ひかりは此処でバイトしてるのか?」

ひかりの奇行について考えていると対面に座った琴乃が聞いてきた。

「あぁ、俺もこの前来たときに知ったんだけどな」

「ユニホーム、可愛かったな……私もしてみるかな…バイト」

「お前が接客業?やめとけ…」

「…理由を教えてくれ」

…何時もより3割増しドスの聞いた声で琴乃は言う…こえぇ〜

「いや、お前みたいな無愛想なタイプは向かないだろ。ま、俺も人のことは言えないんだけどな」

「……確かにそうかもしれない」

そうは言うもののまだ、若干拗ねている感じがする。

そんな琴乃の表情がちょっと可愛かった…

「あれ〜?カズッちじゃん。おひさ〜」

「あ、みどりちゃん。今日も労働?大変だね」

ひかりの次にやってきたウエイトレスはこの間知り合ったみどりちゃんだった。

「まったくだよ〜。で、カズッちはデートって訳?いいわね〜って!?琴ノンじゃん!」

「翠さん…あ、ここでバイトしてたんですか…」

「……何だ?知り合いかお前達」

お互いに面識があるらしい二人。みどりちゃんの呼び方から察するに結構親しいのだろう。いや、単にみどりちゃんが気さくな性格をしているからっていうのもあるんだろうが…

「ああ、翠さんは同じ寮の寮生でな。世話になっている」

「そうで〜す!撫子寮寮生NO6瀬名翠!」

世間は狭いな…まさか翠ちゃんと琴乃が一緒に住んでたなんて…そんな事を考えていると…

「翠!!早く注文とって!ちゃんと仕事する!!」

「はいはいっと…はぁ〜ひかりのやつ…八つ当たりは止めて欲しいわ…。で、二人ともご注文は?」

何だ?嫌な客にでも当たったのかな…不機嫌そうなひかりとやれやれといった感じのみどりちゃん。接客をするべきウエイトレスがこんなんでいいのか?とか思いつつ、俺はメニューと睨めっこをしていた…



ケーキを頼み、それを持ってきたのはみどりちゃんで、何故か一人分多かった

「これは?」

「ひかりのだよ。あの子、休憩まだでさ〜。よかったら相席させてくれない?」

特に、断る理由も無いので了承し、未だに不機嫌そうな表情のひかりが俺の隣に座り、三人でケーキを食べることとなったのだが…

「そのケーキ美味しそうだね」

「だな、この前のも美味かったし、きっと美味しいんだろうな…」

「うん、凄く美味しそう…」

じーっと俺のケーキを凝視するひかり…

「美味しそうだな〜」

「………」

「美味しいんだろうな〜」

「……食うか?」

スッとケーキをひかりの方に寄せた…だがひかりは…

「うん!あ〜ん…」

「なっ!?」

フォークを刺そうとせず、口を開け、あ〜ん…つまりは食べさせて♪という訳だ。この行動には俺も驚いたが、琴乃も声に出し、驚きを表現していた…。

「…い、いや、あのな…ひかり…」

「あ〜ん!」

「…ほら」

何を言っても無駄だろう。結局、俺はケーキを食べさせるてやる…なんか、前にも似たような事があったような…

「うん、おいし〜」

どうやら、満足したようだ。さて、それじゃ俺もケーキを…

「…和、私にもだ…あ、あ〜ん」

あんたもですか、琴乃さん…

ひかりにやっといて断るわけにも行かず、同じように食べさせる。すると…

「和人くん、もう一回!」

「む!?こっちもだ和!」

……お前らな…

結局二人に交互に俺のケーキを食べさせ、俺はといえば一口も食えなかった。ぐすん…なら、最初から自分達で頼めばいーじゃんかよ…

「すまんな、全部食べてしまった。お詫びに私のを食べてくれ、ほら、あ、あ〜ん」

「!? か、和人くん!こっちのも美味しいよ、はい、あ〜ん!」

「い、いや、別に…ムグ!?ング!?」

今度は二人して自分のケーキを、拒否を示している俺に無理やり食べさせる。。だが、何故だ?競い合うようにして俺に味わう暇どころか、飲み込む暇すら与えず、次々にケーキを口に押し込んできて…

「モグ!?ム〜!ム〜!」

息苦しい…。し、死ぬ…

(み、みどりちゃ〜ん。へ、ヘルプ…)

(…無理♪ごめんね?カズッち)

友情テレパシーverみどりちゃん。まぁ…いわゆるアイコンタクトいわゆるアイコンタクトなんだが…それを使い、みどりちゃんに助けを求めるも拒絶された挙句

「くっ、翠さん!!チョコレートケーキ追加!」

「翠!こっちはモンブラン!!」

「はいは〜い♪毎度ありぃ〜」

「「急いで!!」」

追加オーダーに応じ、すぐさまケーキを持ってきて、二人の前に置き、再び、俺に押し込み始めた…

こいつら一体何がしたいんだ?

ひかりの休憩時間が終わるまで、その寸劇は続き……その日、俺はケーキに対してトラウマが出来た…



一部始終を語り終え、奈緒先生の反応は…

「……青春だね…」

「何処がです!?あやうく死ぬ所でしたよ!!ケーキで窒息死なんて三面記事に載るのは流石に嫌です!!」

ま、載ったときには俺はもう亡き人なんだが…それでも嫌なものは嫌だ…

「…ケーキは…結局…どうしたの?…食べれたの?」

「…気合で飲み込みましたよ……食道が破裂するんじゃないかと思いました」

当分、ケーキは食いに行かないことを誓おう…

「……それで…二人は?…」

「今も冷戦状態です…それに、何故かそこに彩花が参戦して…三すくみって所ですかね…」

時より、三人して俺に睨むような視線を送ることがあるのだが…。何故だ?仲は悪くなかったと思うが…

「……本気で…分からないの?……」

「…えぇ、何を考えてるのか、何がしたいのかさっぱり分かりません。奈緒先生は分かるんですか?」

「……なんとなく…分かる……けど…教えない…」

「えぇ〜、意地悪しないで教えてくださいよ」

「…これはヒム君が……自分で気がつかないと…だめ…」

外見は子供っぽいけど、こうして諭すように言うのを見ると…やっぱり大人の先生だと実感する……。それに、この人はこの学校で…いや、俺が今まで出あった教師の中で一番、信頼できる先生だ……素直に助言は受け取って…って、は!?

「……ちょっと…恥ずかしい……でも…嬉しい…」

しまった、この人には考えてることが筒抜けなんだった!うわ〜、という事は何だ?俺は、さっき考えたことを臆面も無く言ったことになるのか?

ヤバイ、顔から火が出るほど恥ずかしい…

「…でも……マッキーが担任……マッキーも…いい先生……信頼できる…」

「いえ、そうなんですけどね……あの人…口より先にチョークがでますから。信頼云々以前に、会話が続かないんです」

確かに、親身になって接してくれるという話しなんだが、俺の場合、一言目には「氷室ぉ!!」で、チョークがくる。まぁ、悪いことしてるのは俺なんだけどさ……。

「奈緒先生と居ると落ち着くんですよね……元々教師って人種は嫌いだったんです。皆、俺の容姿で不良だなんだ決め付けて…生まれつきだって言っても聞く耳持たずで……」

「…それは…一緒……私も…不気味だって皆…近寄らない……ヒム君みたいな生徒…初めて…」

ああ…なるほど……この人は霞と同じなんだ……

俺と同じ痛みを知ってる…だからこんなにも気が合って……落ち着けるのか……

「……霞って…誰?」

「うぇ!?いや、あの…先生?」

先生は、自分と同じという霞に興味を持ったらしく、詳細を聞いてくる…

「……話して…」

「……あ、そろそろ体育が終わるな〜。次は紅桜先生の数学か〜。い、急いで戻らないと…」

「…大丈夫…ヒム君は…気分が悪くなって……ここで寝てるって…言うから…」

お〜い、それは職権濫用ですよ〜

「……普段……使い道が無いから……こういうときに…使う」

不敵な笑みを浮かべながら…再び…

「…さ……話す…」

「…い、いえ、これは…俺の問題じゃなく、霞の身の上話でして…本人の許可無くぺらぺら喋るわけには…」

正論立てて丁重にお断りをすると…奈緒先生は懐のメスをチラつかせ…

「……話せ…」

語尾が『せ』になってる!?一種の脅迫!!断ればメスで俺を○○するってことですか!?

殺気がまったく無いのが逆に怖い…じ、冗談だと思いたいんだけど、目が本気だし……あぁ〜でも、霞の事を本人に黙って語るのもどうかと思うし…

「……会わないから……黙ってれば…平気……」

……ごめんよ霞。俺は最後まで勇敢に抵抗した……けどね?教師という権力とメスには逆らえないんだ…

心の中で、詫びをいれて…俺は霞の事を話し始めた……


――Side Nao Kurobane

霞という人物の事を話し終えたヒム君を教室に帰してあげた。ちゃんと、怒られないように私の言伝を持たせて…

―カチャ

保健室に一人になった私は、ドアの鍵を閉めて、机の上のパソコンの電源を入れ、立ち上がった後、ヒム君フォルダの宿敵ファイルを開く

「……入力と…修正をしないと…」

モニターと睨めっこしながら、私は今日入手した情報を元にデータを入力、修正していく


橘 彩花  危険度SS 備考 ヒム君の家の隣に住んでいて彼に好意を持っている。要注意人物

白樺華蓮  危険度A  備考 ヒム君に惹かれている様子だが、今年クラスも変わったため危険度ダウン。しかし、まだまだ油断は出来ない。

水野ひかり 危険度S  備考 去年、ヒム君と色々あった挙句、恋心に発展した模様。学園のアイドルで同じクラスという事もあって危険度上昇。嫉妬深く、積極的。注意が必要。

春日琴乃  危険度S  備考 幼馴染。幼い頃からの記憶を共有でき、今回の映画で誘われた相手。この事実により危険度をSにあげる。あまり積極的ではないが、強敵

美空 霞  危険度X  備考 超要注意人物。人気アイドルであり、ヒム君の話を聞く限りでは元彼女として認識しても間違いではない。寄りを戻されたら…勝負が決まってしまう。


カタカタカタとデータを入力しながら、私は考える。

もうそろそろ動かないとヒム君が取られてしまう……

敵に塩を送りつつ、データを収集してきた。ヒム君は私に対して恋愛感情は持ってないが、信頼してくれてる……なら、もう少しで恋愛感情に変わるはず…

「……アプローチを…開始……しないと…」

あんな優しくて、強くて素敵な男の子は見たこと無い……ヒム君に彼女が出来たら私に会いになんて来てくれなくなる…だったら、私が彼女になるしかない

「大人の魅力で…悩殺する……幸い此処は……保健室…」

既成事実さえ作ればこっちの勝ち。そのための作戦を一人ずっと考えていた…



 


更新完りょ…

琴乃「完了じゃない!この!!」

ひかり「えい!えい!!」

グッ、ガハッ!き、キミ達何を…

霞「ふふ、これは怒りだよ。ボク達をないがしろにした…」

そ、そんなことは…

琴乃「無いと言い切れるのか!?あぁ!?」

こ、怖いっすよ琴乃さん

ひかり「ね、私達はなんなのかな?これじゃピエロ…奈緒先生に全部持ってかれているじゃない!!」

いやだって、奈緒先生に持ってくつもりだったし…って、待て殴るな。殴らないで下さい…

霞「おまけにまとまってないし…駄目作者!」

うっ!?確かにさ力量不足は認めるよ。でもさ、駄目作者は無いでしょ…

ひかり「駄目なものは駄目なんだよ」

琴乃「そうだな…一回生まれなおして来た方がいいな」

…ひっどい……あんまりだ…。だってさ…仕方ないじゃん。奈緒先生反響が良かったんだもん。書いてて楽しんだもん!ちなみに次回は紅桜先生だもん!

琴乃「何!?ちょっと今聞き捨てなら無いことを…」

あ、あはは〜で、では、今回はこれでバックレます…感想よろしくぅううーーー!

ひかり「あ!?逃げた!!そっちいったよ霞ちゃん」

霞「ま、待て!!」

琴乃「逃がさない!」











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