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作:久遠



第20話:屍を越えていけ


――Side Kazuto Himuro

「………」

奇跡は…起きなかった…

「か、和…」

「琴乃…お前の気持ちは分かる……だが、これは現実なんだ。気をしっかり持て…」

戸惑う琴乃…。無理も無い、転校先がこの個性的過ぎる学園ではな…刺激が強すぎるんだろう……

俺達の目の前には、ボロボロになり、屍と化した琢磨が倒れていた。


今の現状を作り出したの、中間テストの結果である。

三年はA組が見事一位、二位には冬至と華蓮がいるC組。

そして俺達のクラスは…

なんと学年最下位である。

いや、当然の結果といえば、当然なのかもしれない。琢磨の勉強会での成績を思い出す限りはそう思える。

そう考えると…やはり、奇跡は起ったのだろう……。あの成績から琢磨は全教科赤点を免れたのだから…

だが、そこまでで奇跡は打ち止めとなった。免れたものの、平均点を著しく提げる結果になったのだから……

他のクラスの平均点の高さも敗因の一つだ。なんせ、一位のAがクラス平均、一科目辺り85.3。二位が85.1。

物凄いデットヒートだ。そして、我がクラスの平均が77.6。琢磨が居て、この平均点…皆の努力が伺える。

「折角、和人が学年トップ、沙耶香が二位だっていうのに…常盤!あんたのせいで!あんたのせいでぇぇ!!」

倒れている琢磨に尚も追い討ちで蹴りを入れる彩花…。鬼だこいつ……

でも、口は出さない。矛先がこっちにきたら堪ったもんじゃない。せめて、琢磨には名誉ある人柱となって貰おう…。

「ふ、ふふふ…負けた…また負けましたわ……こ、ここの計算ミスが!漢字の間違いが!!」

ダンダンと悔しそうに机にあたるのは沙耶香。

「氷室〜。お前はやるときはやると思っていたぞ!先生はお前を見込んでいた。あたしのチョークをあんだけ避けたんだ!だがな!!常盤!!てめぇが…てめぇがーーー!!」

御堂先生がチョークを投擲。さらに、琢磨に追い討ちをかける。うっわ…マジ怖ぇ〜。こいつら悪魔だ…

「ほら、僕の言ったとおり、真面目にやっていて助かったでしょ?でも、まさか、全教科満点をたたき出すとはね〜。流石、全国一位!」

お前が脅したんだろうよ。ハジ…

テスト前、いつも通り、適当にやって寝ようとしていたら、ハジに脅されたのだ。寝たら、その事実を彩花と御堂先生にバラすと…

ふっ…眠気がまったく来ないなんて…久しぶりの現象だった…。恐怖心ってのはスゴイネ…

ま、そんなこんなで、俺と沙耶香がワンツーフィニッシュで頑張ったにも関わらずに最下位という結果。赤点をギリギリ回避し、本人的には快挙を成し遂げたはずの、琢磨が結局ボコられ
たという事だ。琢磨…成仏してくれ……

そっと、琢磨に黙祷を掲げた。



「そこの琢磨ばかのせいで、こういった結果が出てしまった以上!仕方がねぇ…本日の現国の授業は自習。HRに当てる!いいかお前ら!こうなった以上。球技大会で勝つしか我々には道が無い!実行委員!作戦参謀!頼むぞ!」

「「はい!!」」

こうして…現国の時間に緊急作戦会議が開かれることとなった。ちなみに、琢磨は倒れたまま身動き一つしない…。誰か保健室に連れてってやれよ…とか思いつつ、壇上に視線を向ける。

壇上には球技大会実行委員の彩花が竹刀と『必勝』の鉢巻。そして、わざわざ俺の替えの学ランを纏って仁王立ちしている…。あれ?さっきまでは普通に自分の制服を来ていたのだが、いつの間に着替えたんだ?

そんな疑問が浮かんだが、すぐに忘れる事にした。考えても分かるわけない。そして、もう一人、作戦参謀の任を任されているハジが彩花の脇に立つ。手には、膨大なプリントとハジモバイルがある。一体、なんのデータなんだか…

「では、作戦会議をはじめます。参謀の一文字君、お願いします」

って!気合入れた格好してるのに彩花の出番はそれだけかよ!!

そう思ったが、他の生徒は真剣な面持ちで突っ込む素振りは無い…。なんでだ?俺がおかしいのか?

「彩花はなんであんな格好をしているんだ?」

「……琴乃!」

思わず手を握る

「な、なんだ和。は、恥ずかしいじゃないか…」

「お前だけは俺の味方だと思ってた!思ってたさ!!」

幼馴染とは偉大だ…俺は、一人じゃなかった…

そんな感激に浸っていると…

「煩い!」
「うっせぇ!静かにしろ!!」

竹刀とチョークが同時に飛んできた。攻撃の主は彩花と御堂先生。って、彩花よ。竹刀を投げるなよ…というか!チョークもそもそも投げる道具じゃないっての!

「……すいませんでした。続きを…」

とりあえず、攻撃を避け、心の中とは裏腹に謝罪をし、席に座る。

だって、何時もとは違って教室の空気が殺気立ってるんだもん…

茶化さない方がいいと俺の生存本能が敏感に感じ取った…

「話を続けるよ!まず、各クラスのパワーバランスなんだけど…」

ハジがデータを読み上げる。その間、クイクイっと、袖を引っ張られた。

「…聞きたい事があるんだが…」

引っ張ったのは琴乃。転校してきたばかりで、この空気がいまいち分からないらしい。ぼそぼそと小声でそう聞いてきた。

なので、この光琳高校の球技大会について説明をしてやる。

光琳の球技大会は他の学校にはない要素が結構ある。まとめると…


1.中間テストの学年別の順位が球技大会の得点にあらかじめ加算される。

2.球技大会の順位に応じて賞金がでる。その賞金は今年度のクラスの予算に加算され、文化祭で豪華な催し物が可能となり、優勝クラスの担任にはボーナスが出る。

3.文化祭で置いての特別優先権を得ることが出来、体育館や視聴覚室などの優先的使用が可能となる。

4.競技には生徒だけでなく、教師も参加することが出来る。

5.学校長が開発した新種のマイナー球技が種目にある。


「………なるほど…」

説明を聞き、ふむふむと頷く琴乃。

「ま、大事なのは2と3だな。賞金と権利が欲しいから皆熱くなるんだ。ま、それが校長の狙いでもあるんだろうがな…」

「しかし、必要最低限の予算は出るんだろ?特別教室も優先的な使用権を得るだけで、使えないという訳ではないのではないか?」

「あぁ…。お前は経験してないが、球技大会優勝者と普通のクラスでは出し物が雲泥の差になってしまう。当然、お客も皆持ってがれて、しまってな…。豪華な打ち上げの片隅で辛酸を舐める事になる…。過去の経験からそんな光景を見てきたんだ、そして、今年は最後の年…。みんな熱くなるさ…」

「…その割には、お前は冷めてるな……」

「俺は正直、どうでもいいんだ。豪華だろうとなんだろうとな。当日は家で寝てたいくらいだしな…」

「……変わったな………昔のお前は私をお祭りのたびに連れ回していたが…」

琴乃の言葉に、目を瞑る…

確かに、昔の俺はお祭りが大好きだった。

俺は琴乃を連れまわし、俺は母さんに連れまわされた記憶がある。

けど…今の俺は人混みが……人間が嫌いになった。


この町に来た頃…周囲が俺を見る視線は二種類。

奇異の視線か、同情・憐れみの視線。このどちらか

俺の事を知らない人間は前者。この銀の髪と、異なる瞳の色。そんなにとやかく言うほどの事なのだろうか?何故、いちいち絡まれ、怒られるのかが、分からなかった。

俺の事情を知っている…あるいは知った人間は後者。『頑張れ』『可哀想』その言葉が、どれだけ無責任か…人を傷付けるのか……

頑張れ?何を頑張ればいいのだろうか?頑張ったらどうにかなるのだろうか?父さんや母さんは生き返るのだろうか?

可哀想?勝手に俺をそんな目で見るな…。何かしてくれるのか?可哀想と言う事で悲しみを取り除いてくれるのだろうか?そう言われることで、両親が居ないという事を再び認識させられ、余計辛くなる…

だから、俺は中学時代に、人と関わることを…人混みを避けるようになった……



今は、ある程度は人と接することが出来るようになった…けど、人混みが好きかといえば、やはり好きではない。

視線に慣れたとはいえ、いい気分はしない。堪えないとはいえ、悲しくないと言えば嘘になる…

「和?和…」

「…ん?あ、悪いな…ちょっとボーっとしてた…」

「すまん。私の言ったことで不快にさせてしまった…」

「いや、そんなんじゃない。ただ、昔お前と行ったお祭りは楽しかったなって…思い出してたんだ…」

琴乃と行ったお祭りを思い出し、笑みを浮かべる。

「確か、りんご飴とわた飴の両方が欲しくて…だけど、どっちか片方しか買えなくて……結局りんご飴を買ったんだよな…」

「……そして、和がわた飴を買って半分私にくれたんだ。一人じゃこんなに食べられないってな…」

「…いや、それは美化しすぎだ。お前は半分分けたにもかかわらず、俺からわた飴をむしり食って、結局殆どを強奪したんだ」

「そ、そうだった…か?」

そうでしたとも。はっきり覚えている。半分分けたのに、何故か、俺の持っているわた飴を食べ始め。それが無くなると、自分のを嬉しそうに食べていた。

ボソボソと小声でそんな会話をしていると…


「では作戦は以上です!各自健闘を!最後に…」

何時の間にか会議は終了し、彩花が壇上で締めくくるための言葉を延べ、大きく息を吸い…

「私達の目的はなんだーーーー!!?」

【優勝あるのみ!!全てを蹴落とせ!!】

「私達のすべき事は何だーーー!!?」

【常勝!!必勝!!どんな手を使っても…ただ、勝つことが全て!!】

「優勝するクラスは何処だーーーー!!?」

【3−D!!3−D!!!3−D!!!!】

ビリビリと彩花の咆哮に続き、クラスメイト達が雄たけびをあげる…

まてまて、明らかに早い。球技大会はまだ先だ…その上……

「今、授業中だぞ……」

止める立場の御堂先生まで加わっている…


暫くした後、三年のみならず、一階下で教鞭を振るっている教師が勢ぞろいし、苦情とお説教と頂戴したのは言うまでもない…





更新完了!

どうも毎度どうも久遠です。

霞「更新早いねぇ」

そうなんだよ。実は、明日就職の試験があってさ…現実から逃避するために…

霞「おいおい…」

うふふ、次回はどうしようかしら♪

霞「駄目だ…逝ちゃってる…」

何やら、新キャラがいっぱいの予感がするわん♪

霞「あ、壊れた…おーい、帰って来ーーい」

はっ!?

霞「お、帰ってきた。でさ、今回の話しだけど、先輩の人嫌いの理由が少しだけでたね…あ、もしかして!先輩のそんな気持ちを変たのは私とか♪」

ん〜どうでしょ。ま、物語が進めば明らかになるじゃろうて

霞「じゃ、早く更新してよ」

うっ、藪蛇だったか…。で、では、また次回お会いしましょう。お相手は私、久遠と

霞「Soraこと美空霞でした。では、またね♪」

感想、本当にありがとうございます。引き続き頑張ります。











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