挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。

交換日記に憑いた霊

作者:東雲楓
ギリギリ間に合いました。出来は悪くなっちゃいましたけど(-_-;)
「これ。久美に回して」
 私は周りを憚った小さな声でそう言って、前の席の生徒に小さなメモ帳を渡した。このメモ帳は私たちの仲良しグループ、私、久美、沙希、穂乃花で回している交換日記だ。他愛のない会話から、内緒の恋バナまで、色々な事が書かれた思い出の日記。
 授業中にも関わらず律儀に回してくれるクラスメイト達のおかげで日記は無事に久美の元まで届いた。久美がこちらに目配せしてくる。私は笑い返した。久美もそれに応えて笑った。すると、他の二人が反応して、少々不平そうな視線を送ってくる。二人だけで盛り上がっているのがつまらないのだろう。それに久美はウインクで返していた。
 交換日記が回ってくる。私、久美、沙希、穂乃花の順で回しているので、穂乃花から回ってきたのだ。
『ねぇ~?昨日の恐怖映像集見た?七時からやってたやつ!超怖かったんだけど(汗)。うちの弟なんか、ガクブルで私にぴったりくっついて見てんの』
 これは私が書いたものだ。今日初めて書いたものなのだから、自然、話題提供の文となる。
『可愛い~。それ、私も見たよ!怖かったよね~。でも、私んちは、お兄が合成だの、作り物だのうるさくてー。ほんっと、サイテーだよね』
『うわっ。それはキョウザメだね。でもさー、クミのお兄ちゃんってS大の生徒さんでしょ?良いなぁ。頭いいお兄ちゃんがいて。うちのバカ兄なんて、ド底辺高校の生徒で毎日帰り遅いし……』
『……サッキー。それって遊んでんじゃない?毎日色んな女とチョメチョメしてんだよ、きっと』
 と、このように後は雑談のごとく話が展開していく。チョメチョメって。今日は若干オトナの会話になりそう。
 私がそんな考えを巡らせながら日記を見ていると、突然にある一文が目に飛び込んできて、目を細めた。
『私もまぜて♪』
 見覚えのない筆跡。おそらく、文通り、私たちの交換日記を見て、仲間に加わりたいと思ったのだろう。クラスで権力のある沙希が「私たちの日記を見るな」と牽制しているのだが………それでも、やはり見ている人がいるものだな。まぁ、良いけど。一応、日記の回転に変なタイムラグがあるかとか…注意しているんだけどなぁ。この短文だから、瞬時に書けたのかな……?
 誰だろうか…。まず最初に、疑問が頭に浮かんだ。だが、情報が少ないため、推理などろくにできない。日記のまわってきたルートから、ある程度は絞れるが、それでも、そこからは進めない。まぁ、別に私は構わない。「私」というのだから、おそらく女子だ。字もきれいだし。まず間違いない。……偽装して女子の会話に紛れ込もうとする変態男子の可能性も捨てきれないけれど。
 女子だと仮定して……もう後は想像の域でしかないが、彼女は引っ込み思案かもしれない。引っ込み思案だから、直接私たちに話し掛けずに、日記を通して私たちに接触してきたのだろう。
 だとすれば、個人的に私は彼女を無下にしたくない。私も昔はこうだった。クラスメイト達に積極的に関わることが出来なくて、一人ぼっちでいた。今は仲の良い友達がいるけど、やはり、あの頃の嫌な思い出は無くなっていない。この子に変わりたいという思いがあるのなら、手伝ってあげたい。
 三人はどうだろうか。彼女らは、一人だった私に声を掛けてくれた、優しい人たちだ。…しかし、不安がないわけでもない。彼女らが私に声を掛けてくれたのは、クラス替えの後、すぐだ。しかし、今は……分からない。卒業を二か月後に控えた今、彼女たちは変化を嫌っているかもしれない。もう一人が加わることで「今」が変わってしまうことを恐れているかもしれない。それ故に、踏み出した彼女の小さな勇気を、自分たちを守るために目を瞑って踏み潰してしまうかもしれない。
 その光景を見るのは非常に痛ましい。よし。ここは私が。
『良いよ、良いよ!はなそー!』
 会話には、流れがある。そして、皆は基本的にその流れに逆らったりしない。つまり、私が彼女を受け入れる流れをつくることで、よっぽどの反抗心がない限り、会話はそっちに向かう。
 日記が久美に流れ着く。久美は日記を読むと、驚いたように顔を上げると、周りを見回した。しかし、すぐにそれを止め、視線を戻した。
 それから、二人にも回り、私の元へと帰ってくる。私は文を見て、安堵した。
『私もサンセー!ヨロシクね』
『よろしくー』
『仲良くしてねー』
『ありがとう!よろしくお願いします』
 こうして、私たちに仲間が加わった。

 * * * * * * * * *

 匿名希望の恥ずかしがり屋さんが加わってから、早くも一週間がたった。
『ねぇ。今日は何話そうか』
 私のメッセージに残りの四人が続く。
『恋バナ!!』
『クミ、恋バナ好きね……私も好きだけど!』
『そういえば……カホちゃん、好きな人いるの?』
 カホとは、は恥ずかしがり屋の彼女が名乗ったペンネームの様なものだ。だって、このクラスにカホなんて名前の人間はいないから。
『いや……私は別に……。それよりさ、皆は好きな人いるの?』
 カホちゃん……逃げやがったな…まぁ、私も好きな人は伏せてるけど。
『私はいないよー』
 書いて、近くの席の人に、久美に回すように頼む。それから授業に集中。十分くらいして、私の元へ帰ってくる。
『私はユウキくん!かっこよくない?』
『私は……秘密♪』
『私も内緒!!』
『みんな内緒かい!!久美ちゃんだけじゃん!……でもさー、ユウキくんって、キモいんだけど。私嫌い』
 私はそれを読んだ瞬間に顔が引きつるのを感じた。久美に向かってユウキ君の悪口は……ご法度だ。
 私は気まずくなり、何も書かずに回した。書きたくないときは書かなくて良い。この交換日記発祥の祭に生まれたルールだ。
『はぁ!?キモいって、どこがよ?』
『顔とか、性格とか、と言うか、全部かな』
 沙希と穂乃花も何も書いていない。……ほとんど二人の会話だ。私は今回も何も書かずにおく。
『あんたがキモいんだけど!!死ね!ハモンね、あんた。はい!アンケート取ります。ハモンに賛成なら○反対なら×を書いてください』
『え……?あ、ごめん』
 次に回ってきたものは、さらに会話の流れが悪かった。……愚かなのは、カホだ。新参者の癖に弁えない発言をするから……これは、救えない。もう既に…○が二つ、ページの隅にある。この時点で、破門は決定。下手に逆らえば、こちらに被害が出る。…仕方がない。自業自得と言うやつだ。
 それから、カホは破門され、その二日後に、久美の惨殺された遺体が発見された。

* * * * * * * * *

「カホじゃないの、犯人は」
 放課後、仲良し三人で集まって話をしていた。
「だってさ、これ……」
 三人の視線が交換日記に移る。今日、いつもの様に話をしている最中、突然に貼られた一枚の写真。久美の、切断された頭の写真。
「先生に見せよう」
 私は言った。大人に頼るのが一番得策だと思った。三人で行こう、そう続けて、立ち上がった。教室のドアに手をかける。
「開かない!!?」
 沙希が叫んだ。その時だった。背後で、ドンッという窓が叩かれる音がした。特有の籠った音だから、すぐにそうとわかった。私たちの視線は自然に窓に吸い込まれる。
「ユルサナイ、ユルサナイ、ユルサナイ、ユルサナイ、ユルサナイ………×を書いてくれなかった、あんたたちも、ド・ウ・ザ・イ」
 それは窓に張り付いていた。真っ赤な血で顔を濡らした、少女。ドンドンと、何度も窓を叩いていた。その手には、同じく赤い液体が付着した、包丁。
 …教室で交換日記をするときは、気を付けてください。何か、悪いものが憑くかもしれません。
ありがとうございました。あぁ!あと四分だ。

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
感想を書く場合はログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ