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第11話
「それじゃあ報告頼んだぞ、マイカ。」
「うん。クエストの報告が終わったらコウ君とユキちゃんを連れて酒場に行けばいいんだよね?」
「あぁ、俺はユー・・・《神眼》のところにいるから。」

そういってマイカと分かれるマスター。

迷宮から無事脱出できたマスターとマイカが急いでギルドまで戻ったときには残り時間20分をきっていた。
まさにギリギリである。
・・・その裏にコウとユキの尊い犠牲があった事は言うまでもない。







迫り来る卑劣な罠。
襲い掛かる恐ろしいモンスター。
1人、また1人と仲間が倒れていく中で最後に残ったマスターたち4人。
4人ともが満身創痍でありながらようやく出口にたどり着こうかというところで現れた最強にして最悪の敵。
「・・・先に行け、シュウ・マイカ。ここは俺とユキで食い止める。」
「何言ってるんだ!!」
「そうだよ!せっかくここまで来たのに・・・、頑張ってみんなでクリアしようよ!」
「駄目よ。ここは私たちに任せて2人は先に行って。」
「だけど・・・。」
いきなり敵を足止めするといったコウとユキ。
敵はあまりにも強大、例え4人で戦ったとしても勝ち目はゼロだろう。
だが、それでも納得できないマスターとマイカ。
当然だろう、仲間を見捨てるなんて事が2人にできるはずもない。
だが・・・
「馬鹿やろう!!」
「コウ・・・」「コウ君・・・」
「ここでみんなやられちまったらあいつ等が・・・先に逝ったあいつ等が報われねぇ。」
「「・・・・・」」
「そうね。誰かが犠牲になってでも・・・このクエストは成功させないと。」
コウとユキの言葉に黙り込むマスターとマイカ。
だが次の瞬間・・・
「・・・わかった。」
「シュウ君!?」
「・・・2人の気持ちを察してやれ、マイカ。」
「だけど・・・だけど!」
そういって黙りこむマイカ。
しかし、覚悟を決めたのかシュウの顔を見上げうなずく。
「・・・シュウ。」
「どうした、ユキ?」
「・・・もしも、私が生きてあなたの元へ帰れたら聞いてほしいことがあるの。」
「ユキちゃんそれ死亡フ「・・わかった。」ラグ・・・。」
駆け出すマスターたち。
後方では激しい音が響き渡る。
だが、振り向いてはいけない。
2人の犠牲を無駄にしてはいけないのだから・・・





あっ、もちろんこの話はフィクションですよ。





例のごとく注文をスルーしたマスターはユーキのいるテーブルを探す。
とはいっても、この酒場は結構広い。
さらに今日はなんだか人も多いのでなかなか見つからない。

「見つかりませんねぇ、マスター。」
「そうだな、ここにいるのは間違いないんだが・・・。」

う〜ん、確かにマスターが会いに行ってユーキがいなかった日はありませんからねぇ。
とういうかユーキを酒場でしか見かけたことがないのは私のだけでしょうか・・・。
朝から晩まで酒場で1人さびしく酒をあおっているなんて・・・現実世界ではいったい何やってるんでしょ、あの人。
・・・・ニ○ト?

ガッシャアアァァァン

うわっ、何ですかいきなり!?
まさか、私がニー○っていったことに怒った誰かが暴走した・・・わけないし。

「マスター、音のした方へ行って見ましょう!」
「あぁ、そうだな。」








「何やら言い争っている雰囲気をかもし出してますね、マスター。」
「この声は・・・。」

音のした方へ行ってみた私とマスターだったが、そこにはすでに野次馬ができており何が起こっているのかよくわからない。
だが、かろうじで聞き取れる音で判断するに誰かが大声を出しているのがわかる。
なにやらマスターには心当たりがあるようですけど。

さらに野次馬をかき分け前に進んでいくと、1人の男性と複数の男女・・・というよりはその複数の男女のなかの1人である短い黒髪の気が強そうな女性が言い争っているのがわかる。
あれは・・・

「わざわざこっち大陸まで来たっていうのに情報を教えないとはどういうこと!」
「だから、お前らにまで情報教えたらゲームバランスが崩れるって言ってるだろうが!」

どうやらユーキと・・・《焔乗》じゃないですか!
この組み合わせなら野次馬が集まるのも無理はないですね。
なんせ2万人はいると言われているプレーヤーのなかで10人しかいないランク持ち同士が睨み合ってるんですから。
というか、《焔乗》がいるということは・・・

「少し落ち着け、シズル。」
「そうですよ、少し落ち着いてくださいシズルさん。」

《恵雨》に《騎士》もいるじゃないですか!
いやぁ、こんな辺鄙な酒場にランク持ちプレイヤーが4人も集まるなんて結構すごいことではないだろうか。
ちなみに、二十歳ぐらいの短髪で男の方が《恵雨》で敬語で喋っていて、腰ぐらいまである黒髪でぎりぎり高校生ぐらいの容姿に見える女の子が《騎士》です。
なんだか、《二つ名》交換したほうが良くないですか?

「だけど・・・。」

2人の言葉に納得がいかないように見える《焔乗》。
わざわざ『別の大陸』からこちらに来たのに、情報を教えてもらえなかったとなれば当然納得なんてできないだろう。
ただ、ユーキの言い分もわかる・・・というよりは、野次馬も含めたここにいるプレイヤー全員にとってはユーキの判断は正しいものだろう。
なぜなら、彼女たちのパーティー―――ここにいないメンバーも含めた6人は全員《二つ名》持ちの上にその内3人はランク持ち。
つまりは、この『箱庭』においての名実ともに最強といっていいパーティーなのだ。
当然、ストーリー的にも一番進んでいるであろうパーティーだ。
そんなパーティーに情報まで与えてしまっては、他のプレイヤー達が彼女らに追いつくことはかなり難しくなるだろう。
さきほどユーキが言った『ゲームバランスが崩れる』という言葉も納得がいく・・・というよりはランク持ちが3人いる時点で、すでにバランス崩れてませんか?

「まぁしょうがないさ、自分たちでどうにかクリアするしかないだろ。」
「カズキがそう言うなら・・・。」

《恵雨》の言葉にしぶしぶ引き下がる《焔乗》。
どうやら、情報は渡さない方向で決着がついたようだ。

「それじゃ、失礼するよ《神眼》。」
「あぁ、どこかのパーティーに抜かれたときはちゃんと情報を教えてやるよ。」

ユーキの言葉に苦笑を浮かべつつその場を離れる《恵雨》とそれに続く《焔乗》。
それと連動するように野次馬の数が減っていく。
まぁ、お目当てのものがなくなったんですから当然なんですけどね。
そんなことを考えていると誰かがこちらを見ているような感じがする。
ふと辺りを見渡すと、なぜか《騎士》がこっちの方を・・・いや、『マスター』を見ているような気が・・・。
なんだろうと私が疑問に思っているのもつかの間、何事もなかったかのように《恵雨》たちの方へ歩いていった。
あれ、私の勘違いでしょうか?

「マスター、今《騎士》がこっち見てませんでしたか?」
「・・・・・気のせいだろ。」

そうでしょう?
まぁ、マスターがそう言うならやっぱり私の気のせいだったみたいですね。

「それよりも、ユーキさんのところに行くからすこし黙っていてくれ。」
「あ、はい。」

私がそう返事をするとマスターはユーキの方へと歩き出した。











「おぅ、シュウじゃねぇか。」
「どうも、ごぶさたしてます。」

軽く挨拶をするユーキに返事を返すマスター。

「もしかして、さっきの見てたのか?」
「えぇ、バッチリと。」

さっきのとは《焔乗》たちとの言い争いのことだろう。
マスターの言葉にユーキはあちゃ〜といった感じの顔を浮かべる。

「少し恥ずかしいところを見られちまったかもしれねぇな。」
「そんなことないですよ。『俺』にとってはありがたい判断でした。」

ユーキの言葉にそう返すマスター。

「そういってもらえると助かる。『俺たち』としてもまだゲームクリアをして欲しくはないからな。」

うん、どういう意味でしょうか?

「まぁ、お前なら例え1番上のパーティーになったとしても喜んで情報を渡してやるよ。それよりもここに来たってことは、あのクエストをクリアしたみたいだな。」

さりげなく贔屓な発言を入れつつマスターに質問をするユーキ。
あのクエストって『迷宮探索』のことですよね?

「はい、ユーキさんの情報のおかげでだいぶ楽ができましたよ。」
「何、たいした事教えてねぇよ。」

いや、結構重要な事でしょ。
道のりとかボス情報とか帰り方まで聞いてるのに。

「しかし、俺の情報があったとはいえあのクエストを1回でクリアするとはなぁ。」

あのクエストで相当つまづくんだぜと話すユーキ。
確かにボスまでの道のり、ボスの強さ、帰り方すべてを考えてみれば何回かは失敗しなければクリアできない難易度のクエストだったように思える。
いくら何でも『食材探し』からは難易度が上がりすぎなように思える。
つまりは・・・

「まぁ、これで『この大陸』でのクエストは全部終わったわけだな。」

そう、この大陸『ヌーナ』での最後のクエストを意味している。

もともとこのゲーム『箱庭』には5つの大陸が存在しており、その大きさは小さいもので大陸の周りを歩くのに1時間、大きいものでは3日ほどかかるものまである。
そして、大陸ごとにギルドが存在する街が1つずつあり、それぞれ別のクエストが依頼される。
つまりは、このゲームをクリアするためには5つの大陸をすべて回りクエストを達成しなければならない。
マスターたちはようやくその1つ目をクリアしたというわけだ。
・・・あと4つもあるんですよねぇ。
ちなみにどの大陸のギルドからクエストを達成してもいいのだが、このヌーナは始まりの大陸―――つまりは、プレイヤーの出発点であるせいかここのクエストからクリアするプレイヤーがほとんどだ。

「そうですか・・・、これでやっと1つ。」
「あぁ、だがこれからは別の大陸にいかなければならない。俺もついていきたいのは山々なんだが・・・大人の事情でな。」
「いえ、ここまで十分です。あとは俺1人・・・いや、俺たちのパーティーでなんとか乗り切っていきますよ。」
「そうか・・・。まぁ、わからないことがあったら何でも聞きに来いよ。だいたいはここにいるからな。」
「はい、そのときはぜひ。」

そういって立ち上がるマスター。

「うん、もう行くのか?」
「はい、もうそろそろつれがこっちに来るとおもうんで。」

酒場の中はわかりにくいですからねといって入り口に向かう。












ようやく終わった1つのクエスト。
そして始まる新たなクエスト。
新たな土地、新たな仲間、新たな敵。
どんなものが待ち受けているわからない。
だが、マスターならきっと、きっと大丈夫。
根拠もないがそう思える私がいる。
だがとりあえず今は・・・


「こら、シュウ!死ぬかと思っただろうが!!!」
「そうよ!なんなのあの高さは!!ヒモなしバンジーじゃないのよ!!!」


この2人をどうなだめるか考えるのが先だろう。
これからの共に進んでいく仲間なのだから。





眠いです。
ようやく1章が終わりました。
結構忙しいので書く暇がありません。
ただ夏休みは暇なので結構更新できるとおもっています。
これからもよろしくおねがいします。


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