第2話 冒険の帰趨
ユキトがダンジョンメイカーとなったのは約3年前だ。
きっかけはと聞かれれば答えられない。というか解らない、が正しいかもしれない。
自分にダンジョンメイカーの極意をたたき込んでくれた恩師は、「お前にとっての適職であり、天職だったのだろう」と言った。
無論そうは思ってない。別に周りには自分よりベテランが沢山いるのだ。しかもパーティーもろくに組まず、単独で地図を作るアホだ。適職とは言い難い。
この仕事は団体が普通なのだ。マッピング中の見張りや戦闘に於いても役割分担し負担を減らせる。一人で探索は自殺ともいえる。
自分でも解っているのだが、人の馴れ合いというのがどうも苦手なのだ。というかムズ痒いというか、トラウマが刺激されるというか……。
まぁかといって人付き合いが悪い訳ではないので、現在酒場で未開の森にて遭遇した友人と談笑している。
未開の森、名は皆で内部の情景というか色をとって『蒼碧の森』とした。
中層域の地点は予想以上の深さからわからないが、入り口から10キロ迄のマッピングをしたので切り上げて退却した。
先程出会い、談笑している相手はシモンという。
特徴はともかく以外と面倒見が良く、中小規模のギルド『鬼火』などというけったいなモノを営んでいる。 実力は高いらしく功績もあるギルドで、今回も森の情報を聞き付けて探索したらしいが、僕が少し早かったという事だ。
出会ったのも縁だと切り上げを提案され、帰路はチームを組まされた。
協会――開拓地の情報を取り仕切る組織――に地図等の提出や報告を済ませ、全員で数多くある開拓地名鑑なるものを血眼で調べ、被らない名称を捜し出してやっと酒場でゆっくりしたのがついさっきだ。
「てかユキト、一人でよくあんな地点まで行けたな?何時に入ったんだ?」
「ん?ああ、大体明け方から。一人だから慎重だったし、お前等ならもう少し行けたよ」
「どうだかな。チームは便利だがスピードは落ちるからな。ってか明け方か。よくまぁそこまでやるぜ」
シモンは確かにいい奴だ。知り合ったときから色々気に掛けてくれる。ギルドに誘われもした。あの時はさすがに僕もなびきかけたが迷った末断った。しかしそれが尾を引いて他のギルドに加入するのも憚っている。これもまた僕がソロな理由なのだ。
確かにギルドに加入せずフリーランサーとして活動する輩はいる。がフリーランサーと言うだけあってさすがにチームは組むのだ。
ソロ活動するダンジョンメイカーは指で数えられるほどだろう。
ユキトはシモンの話を聞きながらそろそろチームを視野に入れるべきかと考えていた。
「………ト、……キト。オイ、ユキト!聞いてるか?」
気付けば考えすぎてシモンの話を聞いていなかった。
「スマン。少し考えてた」
「何を」
「色々、だ」
たく突拍子ねーなとビアを喉に通し、シモンは又話しはじめた。
「最近、俺たち風当たり悪くないか?騎士団とかとくに」
突拍子ないのはお前だ、と心でつぶやきつつ、確かになと頷く。
騎士団はそのままの通り、国の守護者たる存在である。女王陛下直属の近衛騎士など人々の憧れの的である。
故にプライドが高く、未開拓地を僕らのような冒険者あがりのお遊び(と向こうは思っている)で、このアトラスの未開の地図を作られるのは、騎士団の沽券に関わるらしく、こちらを目の敵にしているのだ。しかも女王が協会を積極的に支援しているとなると、騎士団の恨み倍増もいいところだ。
思わず嘆息してしまい、ごまかすように自分もビアを呷る。
「つか最近、騎士団が未開拓地探索を計画してるって噂だぜ?」
「へぇ、何処さ?」
「聞いて驚け第6番『死薔薇の園』だ。」
「へぇー」
今度こそ驚いた。『死薔薇の園』は6番目に見つかったにも関わらず、未だ攻略されていない地下降下型の危険区域だ。
現在およそ28層まで地図があるらしいが、それ以上はとてもではないが進めないらしい。
「確か見立てでは35層だったか?」
いずれの未開拓地は奥に行くほど危険度は増す。それである程度の最下層の数値は割り出せるのだ。
「まだあるかもしれねぇがな」
空のジョッキを弄びシモンが空恐ろしいことを言う。
しかし確かに予測しかできない訳で、もっと深い可能性はある。大体、ベテランパーティーが28層に到達するのに地図がある今でも2日はかかるのだ。騎士団が行けばどうなるか、想像に堅くない。
「まあ、その場合近衛を使うだろ。あれは人より抜きんでてつえーからな」
「だろうな。それより僕らが対抗のために協会に召集される心配しないとな」
「だよなぁ……」
シモンは心底嫌な顔をした。恐らくコイツは召集されることよりも仲間が危険に遭うのが嫌なのだ。つくづくこの職に合わない奴だと、残りの温いビアを呷った。
「まず……」
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