第24話「道筋」
七者会議が無事に終わり、リューヤは外に出て待ち客用の椅子に座った。待ち客用の簡素な椅子とはいえ、さすが王宮だった。金で出来た枠組みに赤い絨毯のような布地がかぶされており、すわり心地が最高になるような曲線で作られている。だが、リューヤにはその座り心地を楽しむ余裕はなかった。先々について何も決めていない。今までの目的は「干渉者」の手先を狩る事でアレクシーナを援護する事だったが、アレクシーナが失脚してしまった今、それに重要な意味があるとも思えなかった。成すべき事をもう一度見直す事、その時間が必要だった。7者会議の内容が頭の中を駆け巡る。誰がどう動き、何を成すべきか?考えても自分の分かるような事には思えなかった。
「何を考えているんだ?リューヤ?」
小夜子が隣に座ってそう問いかけた。
「今、俺は何をするべきか?それを考えてた。」
「そうか・・・・・・・・」
小夜子が素っ気なく返事した。暫くしてから、西城がリューヤを挟んで小夜子の反対に座った。
「どうした?リューヤ。」
「俺が何をすべきか考えていた。西城、お前はどうするんだ?」
「俺か?俺は引き続きアレクシーナ様の部下として働くつもりだ・・・・・・・・・もちろん、自分の意思でな。」
西城はそう言って、胸からピースという銘のタバコを取り出した。
「吸うか?」
西城がタバコをリューヤに勧めた。
「いや、いい。」
リューヤがそう答えた後、暫く無言が続いた。その後、リューヤがその沈黙を破った。
「俺も、アレクシーナ様の元でアレクシーナ様の指示を仰ぐか・・・・・・・・」
西城がタバコの煙を噴き出した後、静かに返した。
「・・・・・・・・そいつあやめた方がいいな・・・・・・・・・」
「どうしてだ?」
西城はタバコを灰皿に押し付けて消した。
「お前さんは俺と違って特別製だ。そして、アレクシーナ様もまた特別な方だ。個として戦える者が寄り添うのは只の馴れ合いだろうさ。アレクシーナ様の警護は俺やリッター少佐で十分さ。それに、アレクシーナ様が何かやろうとする時、別段お前の力がどうしても必要って訳でもねえ。お前さんにはお前さんが出来る事をせいいっぱいやってもらった方がいい。戻るといえばアレクシーナ様は快く受け入れて下さるかもしれんが、本当はお前には別の事を望んでるんじゃねーのか?でなければ、あんなもって回った言い方はせんだろ?」
西城は押し続けていたタバコをようやく手から離した。備え付けの灰皿にぽとりとタバコが落ちる。
「俺やリーンはアレクシーナ様・・・・・・いや、正確にはクライ王国か・・・・・・まあ、そいつがなければ生活の基盤すらなりたたねー。だがよ・・・・・」
西城はそう言ってリューヤの方を向いた。その目は今まで見た西城のどの表情とも違っていた。
「お前さんは違う。アレクシーナ様が任を解いたのはお前さんの為さ・・・・・・・・アレクシーナ様だって、この問題を知らぬ者ばっかりじゃこの先難しいだろうさ。だから、俺とリーンは残るんだ。」
「なら、俺も・・・・・・・」
「それは甘えだろうぜ。自分で考えるより命令を聞いた方が遥かに簡単だろうさ。だが、お前さんは死者を蘇らす程の力を秘めた「特別な存在」なんだ。そいつが、アレクシーナ様とべったりて訳にはいかねーだろ?誰にだって巣立ちの時は必要さ。」
「なら、俺は何をすればいい。」
「それを」
「自分で考えろって事か・・・・・・・」
「そういう事だな・・・・・」
西城がもう一本タバコを取り出し、口元にあて火をつけた。
「だからって、あんまり深く考え過ぎなくていいんじゃねーか?何者が、お前にそんな力を与えてるのかしらねえが、死者まで復活させといてそれで終わりって事はねーだろ?お前さんが普通に生活してたって、向こうから動かざるを得ない状況を作ってくる。多分、そうなるだろう。」
「それまで待ってろって事か?」
「そうだな、お前はずっと戦いどうしだろ・・・・・・少しくらい息を入れてもいーんじゃねえか?」
西城はタバコの灰を灰皿へ落とした。
「そうですね。少しゆっくりなさった方がいいかもしれません。」
紫炎だった。いつのまにか小夜子の隣に座っていた。
「あなたは、どうしても世界を守る為に戦わざるをえない。だからといって戦いだけが人生ではありません。暖かな物があるから戦い続ける事が出来る。どんな人間にも息抜きは必要です。違いますか?」
リューヤは灰皿を見たまま答えた。
「そうかも知れない。俺は焦り過ぎていたみたいだな。休むというより、考える時間。それは必要なのかもしれない。」
「そうですね。行動に移られるまで暫く休息されるといいでしょう。」
「俺もそれには賛成だな。」
西城はタバコを蒸かしながら、中空を見詰めそう言った。リューヤは頷き、小夜子はどこかでホッと安堵していた。 |