第23話「期待」
「俺に言えるのはこれくらいです。」
リューヤが最後にそう言った。
「ならば、私の話に入ろう。」
アレクシーナはそう言って、姿勢を正した。
「正直、私は今戦争を止めれる立場にも、世界が抱える様々な問題の解決にも、直接関われる立場に無い。」
アレクシーナは一同を見回してから、再び口を開いた。
「リーンの言う通り、世界の状況は芳しくない。そして、紫炎の言う通り諦めるつもりも無い。私は私なりのやり方で、世界の運命を変えていくつもりでいる。」
小夜子が頷き、ジョーが微笑を浮かべる。
「果たして人間は本当に間に合わせるだけの実力がないのか・・・・・・・それとも、これは不遜に思い上がった人間に対する神の罰なのか・・・・・・私には知る由もない。それでも、出来る事はしようと思う。私にはリーンや紫炎のようにβ能力もなければ、リューヤやサヨコのようにα能力を持つ訳でもない。それでも、私に出来る事があるはずだ。私は、自分も、ここにいる面々も最善の手を打ってくれると信じる。世界の壊滅などあってはならない。また、そうしないだけの知恵が人類にはあるはずだ・・・・・・いや・・・・・・そう信じたいのだな・・・・・・・」
「アレクシーナ陛下、貴女が議長の座を降りたせいで人類が打つ手は、また数順遅れるでしょうな・・・・・それを何とかする為にも、どうか、お戻り願えませんか?」
ジョーは心にも無い事を言った。アレクシーナはフッと笑う。
「それは遠慮しておこう。在野にもお前を抑えれる人員がいるであろう?」
どこまで読んでいる?まだ、議会に強い影響力を持っているというのか?ジョーのその考えを打ち消すようにアレクシーナが言葉を続ける。
「もし、今、西方連合と平和連合が戦争に陥れば、国連やアメリカが動くだろうな。世界の警察として・・・・・・・・」
手は打ってある。アメリカも国連もこの争いには巻き込まれる。そうなるように手は打ってあるのだ。
アメリカは平和連合の味方か、中立として動くだろう。国連は常任理事国が拒否権を発動すればどうにもならない。超大国や連合を抑えるには国連は少々力不足だ。アレクシーナが裏工作をしているのだろうか?それでも、西方連合が「核」か「生物兵器」を使えば、国際世論は一挙に平和連合に傾く。民主主義国家であるアメリカは平和連合に肩入れせざるを得ないだろう・・・・・・・だが、西方連合には、アメリカや自由主義国家に牙を向くテロリストを大量に飼っている。「生物兵器」がテロリストの手に渡れば、抗争は泥沼化する。最終的には平和連合の勝利に終わる。そして、世論も平和連合に向くだろう。アメリカもロシアも中国もヨーロッパ連合も疲弊する。そして、その時一番被害が少なく、力を得ているのは最初に「核」攻撃を受けた平和連合となる。シナリオは出来ているのだ。そして、β能力者や隠し玉を持つ俺のシナリオが崩れる可能性はすこぶる低い。
今の時点で何を言おうと、アレクシーナの言葉を誰も信じない。ラスア・エラーラの暗殺が効いているし、俺が世界制服を企んでいるなどアレクシーナ世界征服説より滑稽で陳腐だ。そんな妄言を誰が信じるだろう。全てのβ能力者は既にアレクシーナ犯人説を吹聴している。となれば、答えは一つだ。これはアレクシーナの揺さぶりに過ぎない。引っかかったフリをしておくか・・・・・・・・
「そうでしょうな・・・・・・もし、あなた達が言う通り私が世界征服を企んでいるとすれば、それは大きな障害となりますね。私は望んでいませんが、戦争になる可能性は現状でも低くはないのでよす。その場合どうすべきか・・・・・・・非常に参考になりますね。」
アレクシーナがチラリとジョーの方を見る。
「ジョーには、その戦争を避ける為に動いて欲しい。」
「今までの話を総合すればそれは避けれないのじゃないですか?それこそ「神」の御意思ではありませんか?私は、平和連合の議長でもない。それを避けるのは私一人では無理ですよ。」
「今の話を聞いてもお前は変わらないのだな・・・・・・・・・・」
「どういう事ですか?」
ジョーがそらとぼけて聞く。
「お前が苦労知らずのお育ちのいいボンボンだって事だよ。」
西城が痛烈な皮肉を浴びせた。ジョーがキッと西城を睨む。アレクシーナはその喧騒を無視して言葉を続ける。
「そして、リューヤの事・・・・・・私はリューヤがこんな力を持ち死者を復活させ、「諦めない」という考え方を持っている事が偶然だとは思わない。やはり、リューヤ、お前の行動が知らず知らずのうちに世界を救うのだ。私は、そう信じたい・・・・・・・・・でなければ、リーンの言った通り、滅ぶのが必然という事になる。動き回ったあげく全員が死ぬ・・・・・・・そんな結果だけは避けたいものだ。」
アレクシーナは少し視線を外に向け、その後で全員の方に向き直り再び口を開いた。
「確かに・・・・・・・ここにいる人間に何が出来るかは分からない。だが、我々はこの地に生きる者の義務としてやれるべき事をやらねばならない。何が出来るかは分からないが・・・・・・・・そして・・・・・・」
アレクシーナはリューヤの方を見据えた。リューヤはその、悲しげな視線を受け止める。
「私は、リューヤに謝らねばならない。お前一人に大きな運命を背負わせ、リーンとの再会をこんな形でしか実現してやれかった事を。」
「いえ・・・・・・俺が選んだ道です。」
リューヤは静かだがハッキリした口調でそう言った。アレクシーナはその言葉を受け止め、少し微笑し、顔を引き締めて全員に目を配った後、こう言った。
「ここにいる、私の部下にあたる人間・・・・・リューヤ、リーン、サイジョー、お前達の今までの任務を今日限り解く。この先は自分の考えで動いてくれ。動きやすいように階級を2階級上げておく。皆、頼んだぞ。」
アレクシーナの言葉の後、風が吹き抜けた。そんな気がした・・・・・・・・・ |