仮題「シャングリラ」第三章(19/47)PDFで表示縦書き表示RDF


仮題「シャングリラ」第三章
作:月読天舞



第19話「紫炎の言葉」


「だからと言って諦める必要があるのでしょうか?私は諦めたくないのです。」
 紫炎が目線を落としたまま静かに言った。
「これは、私の代理人としての言葉に過ぎません。」
 リーンが静かに続けた。
「「眺める者」・・・・・・か」
 アレクシーナが手を頬にあてたまま呟いた。
「次は私でいいのでしょうか?」
 紫炎が視線を上げてアレクシーナを見た。
「どうぞ。」
 紫炎が頷き、意を決したように言葉を紡ぎ出す。
「リーン様のおっしゃる通り、今までの事から考えれば運命に対する人類の勝負は惨敗と言えるでしょう。ですが・・・・・・・・」
 小夜子の目線が紫炎の顔を捉える。
「「神」・・・・・「創造の主」の意向は本当に破滅なのでしょうか?ならば、何故その使いであろうリューヤ・アルデベータはこうも苦しむのですか?そもそも、この会議自体も、リーン様の知られている運命とは違うはずです。」
 リーンは意味深に微笑を浮かべた。
「いえ、それは私の思い違いで実際はこの会議すら運命の内なのかもしれません。ですが、私は僅かな可能性を見い出したいのです。」
「それで・・・・・・・・・・・・・・可能性はあるのか?」
 アレクシーナが力強い口調で聞いた。リューヤは頭を抱えたままの姿勢で紫炎の言葉を聴いていた。
「「創造の主」の言葉に逆らわず、運命を変える・・・・・これならば不可能ではない・・・・そう思えるのです。幸いなことに我々の誰もが「世界を破滅させろ」とは聞いていない。ジョー・アルシュがどうなのかは知りませんが・・・・・・・ならば・・・・・・・破滅を避けようとする事自体は「創造の主」の言葉に逆らった事にならない・・・・・・・いえ、むしろ「創造の主」はそちらを望んでいるのではないかと・・・・・・私には思えます。」
「そういう人間はきっと生き残るのでしょうね・・・・・・」
 リーンが冷たく言い放った。
「可能性がゼロの事を「創造の主」・・・・・・いえ、「神」が望むでしょうか・・・・・・」
 リューヤは黙ったままその声を聞いていた。
「ですから・・・・・・・「破滅」を確定付ける「戦争」などは避けてもらいたいのです。」
 紫炎がジョーの方を向いた。
「私は「戦争」など仕掛けるつもりはありませんよ。ですがね、我が平和連合が攻撃を受ければ「武力」による報復は避けられないでしょうな。ラスア・エラーラ暗殺以来、西方連合は色めきたっていますからね。あながち「戦争」は夢物語でもない。これを避ける為には西方連合の諸国の怒りを抑えるしかない。そんな工作は出来ないし、やれたとしてもバレタ時には逆効果でしょう。」
 ジョーも静かな口調だった。
「ジョー・アルシュの暗殺も含めてか・・・・・・・」
 アレクシーナがそう言い放った。ジョーがβ能力者を利用して、戦争を引き起こそうとしているのは、明白な事実だった。
「例え、ジョー・アルシュの暗殺に成功したとしても同じ事でしょう・・・・・・・我々が「創造の主」の意向を変える以外方法はない。仮にジョー・アルシュの暗殺に成功しても次のナンバーオブビーストが生まれるだけです。そうですね?リーン様。」
「イエスでありノーであるとしか答えれません。」
 リーンは凛とした表情で言った。
「それは、「創造の主」の意向を我々が変える事は出来ない・・・・・・そういう事ですか?」
 リーンは首を捻った。
「そこだけ変えればどうにかなると考えるのがあなた方の大きな勘違いである。そう言うしかありません。」
 リーンはそう言って微笑を紫炎に向けた。
「それは我々この地に生きる者としての意見ですか?」
「いえ、厳密には私はもはやこの地の人間ではないのです。その点において私とあなたは違う。あなたはあくまで、この地に生きる者なのですね。」
 リーンはあくまで静かに言った。
「そうです。だから私は足掻くのです。」
「それは、誰にとっても苦しい道です・・・・・それでも行くのですか?」
「私はどう足掻いてもこの地に生きる者なのです。」
「その期待を「彼」にかけざるを得ない。それも分かっているのですね。」
 リーンはそう言って目を瞑った。
「そうせざるを得ないのが辛い所です。」
「そして、その為のあなたの言葉・・・・・・・・・・・・・」
 紫炎は静かに頷き・・・・・「彼」・・・・・リューヤの方を向いた。












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