仮題「シャングリラ」第三章(14/47)PDFで表示縦書き表示RDF


仮題「シャングリラ」第三章
作:月読天舞



第14話「人形」


「どういう事だ?」

 ジョー・アルシュは手に持った招待状を眺めながら呟いた。

 作戦は全てうまくいってるはずだった。アレクシーナの代わりに議長になる者も自分にとって都合のいい人間に決まったし、平和連合の内部の実質的権限も全て掌握した。出来立ての連合で、細かい事がこれから決まっていくという組織を握るのはそう難しくはなかった。β能力者の存在も有効に作動していたし、大立者を動かす様々な要素もその全てを握っていた。秘書や、立ち回ったり相談したりするような各所にβ能力者が有効的に配置されているし、彼らが手に入れる情報もこちらが意図的に流してやる情報に限られていた。そして、大衆を扇動する為のあらゆる組織が実質的な支配下にある。表立っていないというだけで、ジョーは実質的な帝王だった。後は、反平和連合を焚き付け戦争を引き起こし、人口の調整を行い、その戦争の責任者にしかるべき時期に降りてもらい、その後の連合のトップに収まる。表立つかどうかは別にして、それで、自分の望む帝位は手に入るはずだった。このほとんどはアレクシーナが世界平和統一連合を立ち上げた時から、あった事だ。これを具体的にしたのはβ能力者・・・・・・干渉者達のおかげではある。
 干渉者達は、ありとあらゆる情報を握っているし、脅す手段にも事欠かない、そして仮に逆らう意思がある者がいても、そういう役に当て嵌めてチープ化してしまえば問題にもならない。自分の思う通りにいくはずだった。だが、招待状に添えられた手紙には、下らない事が書き添えてあった。


    お前は人形


 普通の招待状の他に、ただそれだけを書いた紙が添えてあった。

 アレクシーナの文字ではない。パソコンの文字を何かで印刷したものだ。これは自分に対する挑戦だった。世界の権力を思う様に握る自分をそうと知っていながら人形と呼ぶ・・・・・・・くだらぬジョークに思えた。リーン・サンドライト・・・・・「眺める者」の配下がいるならば、今の世界制覇寸前にあるジョーの立場を揶揄できる現状ではない事は分かっているはずだ。「眺める者」と「干渉者」の勝負は「干渉者」の勝利で終わった。この状況は決して覆せない。不安はある・・・・・・もし、β能力者達全てがいきなり裏切れば、帝王ジョー・アルシュの命は終わる。それは、「眺める者」も「干渉者」もグルであり、これらの事は、全てを決める者による茶番であるという事だ。
 そうであれば、自分が人形と呼ばれる理由も分かる気がした・・・・・・・・自分はやはり、最初から666として定められた者なのだ・・・・・・・・偽りの地上の王となり、最後には神によって滅ぼされる。それだけの存在なのだ・・・・・・いや、違うはずだ・・・・・ただ、それだけならば・・・・・・・世界は私と何かの間で割れるはずだ・・・・・・聖書に書かれている事が私の事だとするならば・・・・・・・・・私は「神」に暴言を吐き、神に見捨てられる者を選別する為に存在している事になる・・・・・・・・ならば、今の現状はどうだ?・・・・俺は何処とも敵対していない・・・・全ての出来事における黒幕であるというだけだ・・・・・・・もし、俺に敵対者がいるとするならば・・・・・・アレクシーナ・クライ・・・・・リューヤ・アルデベータ・・・・・・リーン・サンドライト・・・・・・紫炎・・・・・か・・・・・・他はどうにでもなる・・・・・・何故、彼女達は私に敵対するのだ?・・・・・もう勝負はついている・・・・・・誰が権力を取るにしても、このままいけば、世界は滅ぶのだ・・・・・・・人類自身の手によって・・・・・・・それを防ぐ為には、誰かが権力を握り戦争を引き起こさねばならない・・・・・・・それは、「眺める者」にも「干渉者」にも一致した見解のはずだ。彼女達は何故足掻く?アレクシーナはここまでの流れを決める為の駒だったはずだ・・・・・・・・だとすれば、真の敵は誰だ?・・・・・・・・・・戦争以外の方法でこの世界の暗黒を取り払えるとでもいうのか?・・・・・・・・・自らの足で立てる人間も確かにいる・・・・・だが・・・・・大半は・・・・・・・・誰かがせねばならないのだ・・・・・・仮に私の役割が人を惑わし、裁かれる者を決める事だとしても・・・・・それなくしては恐らく、人類は目を覚ますまい・・・・・・・・ならば・・・・
・・・・リューヤは・・・・・・・・リューヤは何者なのだ・・・・・・・・・「眺める者」は何故、本来の不干渉を破ってリーン・サンドライトを蘇らせた?・・・・・・リューヤに何をさせたい?・・・・・・何故、「干渉者」はリューヤを本気で始末しないのだ・・・・・・「干渉者」は何を恐れているのだ?・・・・・・・人形・・・・私もリューヤも人形・・・・・・そういう事なのか・・・・・・・・もしそうだとするならば・・・・・・
 私は大きな間違いを犯しているのかもしれない・・・・・・・・・ただ・・・・・今、私が与えられている情報は限られている・・・・・・なんの事はない・・・・・・・私に与えられている情報もやはりβ能力者からのものなのだ・・・・・・・世界の構築を知る者達の会議・・・・・・外すわけにはいくまい・・・・・・・












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