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俺とたまご

作者:はむち
以前後悔せずに個人的に書いたショートショートをまとめてみました。
この感情はなんだろう。

自分を押し殺したはずなのに。
落ち着け。落ち着くんだ。
もう、頭の中で何回もシミュレートしたはずだ。

馬鹿げた仕事を終え、電車で家路につく所だ。
もう、仕事も何もかも全部降りたい。
時間が来るまで家で寝ころんでいたかった。

そうぼやいても意味がない。生活の為に仕事をしているからだ。



電車の出口は良し。降りてすぐの階段を駆け上がる。
そのまま別の電車に乗り換える訳だが、走れば乗り換えに間に合う。
…よし!計算通り。この位置でこのポジショニング。駅に付いたらすぐに改札だ。

手を汚さずに奪う。時間との勝負。自分はキズつかない様に。
それが上手くいく秘訣。
奪い合いの人生、同じことの繰り返しの毎日。
それでも希望を手に入れる。待っているだけではダメなのだから。



乗り換えから最寄りの駅に到着。ここからが二度目の勝負。
駅改札を飛び出して二番のバス停へ。ここでロスは許されない。
なぜなら、このバスは時間通りに確実に運行する。
猶予は2分。猛ダッシュでギリギリ乗車できるレベル。
自分の中でタイミングを計り、電車の扉が開くと同時に猛然と進む。
エスカレーターを勢いよく走り抜け、ミスのないように電子マネーをタッチする。
…よし、電子マネーが反応した。問題なし。後は右に曲がって進むだけ。
この時間なら、問題なく突き進める。
バスは…いた!間に合った!
私はバスに乗るや否や降車口へ向かい、扉が開くサイドポジションにつく。
途中停留所でも人の邪魔にならないように。



私とて悩みや迷いがない訳ではない。
でも今日という日を逃したら次はいつか分からない。
だからこそ法を犯さないギリギリで困難に立ち向かう。
(※エスカレーターの駆け足は禁止です。)

ここまで来たら後は難関の自動ドアか手動ドアか、の問題がある。
距離で言えば自動ドアの方が近い。それは間違いない。
だが、不慮の事故を考えると手動ドアの方がよい。この迷いが一瞬の命とりになる。
そう思案している時にふと対面のオジサンに気が付いた。厳しい目をこちらに向けている。
何故だろう。以前にも見かけたことがある。しかし思い出せない。



さぁ、後わずかだ。この残されたわずかな時間(みち)を行くだけだ。
これだけの事前シミュレーション。険しい道を乗り越える時がくるのだ。

は!このオジサン…
心拍数が一気に上がる。体が硬直するのが解る。嫌な汗が流れる。
そうか、このオジサン誰だかわかった。間違いなければ次の停留所で停止ボタンを押すはずだ。
~ピンポーン~次、止まります~
やはりだ!ヤバイヤバイヤバイ。これはまずい事になった。
たった一つ、されど一つ。その一つにこの厳しい道のりを乗り越えてきたのに。
こんなところでライバルがいるなんて。

そう思っている間に停留所が近づく。なんとしてもこの最前のポジションは死守したい。
否、現在の立ち位置からいってもこのポジションを奪われる事はない。
手動で行くか自動で行くかその二択だけだ。

~バスが止まります。ご注意ください~
放送が終わるか終らないかの間際で扉が開く。
開くと同時にバスを駆け下りる。後方には予想通りオジサンがいる。
なんと、足が速い!追いつかれた!
どうする、どうする!?手動か自動か!?
そうこうしているうちに扉の前まであとわずか。
ここは誰かが開ける事にかけて自動ドアに行くしかない!
そう思い自動ドア方面へ向かう。
オジサンはその行動をみてからか手動ドアへ向かった。

タイミングよく自動ドアがあいた。
なんてラッキーなんだ!これはついてる!
と、思ったのもつかの間。
横から前を見ないオバサンがカートごと体当たりをかましてきた。
吹き飛ばされる私。
倒れている間に先ほどのオジサンがいい笑顔で通り過ぎていく。
あぁ終わった。すべてがこのオバサンのせいで台無しになった。

遠くに鳴り響く店員の声
「ただいまの時間をもちましてタマゴLLパック10個入り99円のタイムサービスを終了しまーす!」

茫然と立ち尽くす私を前に先ほどのオジサンがニヤリと通り過ぎていく。
そう。LLのたまごを持って…

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