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中帝の庭にて……。

「こちらですよ」

 と執事服を着た男性が僕を案内する。

 いざ、壁の内側に入ってみると敷地内は意外と一般人が想像するような庭だった。

 それなりに大きくて立派な噴水、花壇に咲く色取り取りの花、木が邪魔で見えにくいけど奥に建物がある。きっとあれが屋敷なのだろう。

 これぐらいの規模の豪邸なら、かなり仕事とか大変そうだけど金のために頑張っていこう!

「それにしても、ここのお家は広いですね。どれぐらいあるんですか?」

「えっ? お家……? 何を言っているのですか?」

 まさか……!? これはペットの家とかいう豪邸の王道パターンじゃ……!?

「あちらは、この家のあるじが趣味でお作りになったアンドロイド開発研究所です」

 予想の斜め上を行ったーーー!!

「まあ、開発と言ってもご本人が作っているのではなくただ資財を投資しているだけなのですけどね」

 男性は溜め息を吐いて呆れていた。

 一体、この家の持ち主はどんな人物なんだ? 趣味でアンドロイドを作ろうとしている人物って……。

「失礼ですが、ここのあるじの人はマッドサイエンティストとか、そんな感じの人なんですか?

 アンドロイドとか作っているし……」

 男性は少し笑いをこらえながらこう返してきた。

「マッドサイエンティスト? 面白いことを言いますね。確かにアンドロイドの前はホムンクルスを作るとか言っていましたからハズレではないですね。

 しかし、私のあるじは言葉に表せないほど素敵な方です」

 人物像が浮かばない……。

「主の話になると時間も忘れそうになりますので、今はこれぐらいで……。

 先に進みましょう」

 話で時間を忘れるほど素敵な人って一体……。それに、その話ができるこの人も何者……?

 壁の内側に入って数分、アンドロイド開発研究所ちょい手前、まだここまでしか来てないのにぼくの脳内はオーバーヒート寸前になった。



「あのーーー……、まだ着かないんですか……」

 かれこれもう1時間近く歩いている。時間の方はいくら掛かってもいいけど、半年間引きこもりの結果かなり体力が落ちている。正直、辛い……。

 あ……きっと明日は筋肉痛になるだろうなーーー……。

 ぼくの顔に数滴、汗が垂れ始める。

「おや? もうお疲れですか?」

 何故あんたは疲れていない……!? ぼくと同じ距離を歩いているのに、しかもそんな格好なのに……!

 ぼくは励ます様に微笑む男性を睨みつけた。

 しかし、本人は気付いてないようだ。

「ええ……、まぁ……。

 ところで、このお屋敷こんなに広くて目的地に着くのに普段は時間とか掛からないんですか?」

 これだけ大きい豪邸だ、行ったり来たりしていたら日が暮れてしまう。

「普段はですね。地下鉄なんかを利用していますよ」

「地下鉄!?」

「この庭の地下深くに専用の車両が走っているんですよ」

 どんだけすごいんだ……。

「そういうのもっと早く言って欲しかったんですけど……」

 そんなのがあるのならこんな苦労せずに済んだのに。

「残念ながら今日は車両のメンテナンスで運休中でして。

 もし良かったら」

 男性は地面にうずくまった。

「あの…、何をしているんですか?」

 男性がこっちを向く。

「何って、あなたを負ぶさって―――」

「結構です!」

 変態かこの人!

「そうですか……。いや、いいんです。

 紳士として疲れ果てて困っている方を助けようとしただけなので……」

 何だこの空気、まるでぼくが悪者みたいじゃないかっ!

「私だったら、あと40分掛かるところを5分で到着できるのにっ!!」

 男性の顔が悲痛に歪む。

 自分を売り込み始めたよ、この人。40分を5分でって超人か!?

 こりゃ負ぶさらないと先に進めそうもないな。それにあと40分って……。

「わ……分かりましたよっ! 負ぶされていけばいいんですよねっ!」

「勿論です。私にお任せください」

 まさか、半年間引きこもった挙句、久々に出た先で男の背中に負ぶさるとは……。

 男性は、ぼくを負ぶさると猛スピードで走り出した。



 ついでに、本当に40分ぐらい掛かりそうな距離を5分で走りきった。

 超人かっっ!!

アンドロイドって……。

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