《門》VS四葉な組み合わせ!
「ここか……」
目的地に着いた僕は思わず息を呑んだ。
ぼくの目の前にあるのは、《門》しかも、ただの門じゃない。所々に細かい装飾がされていて如何にも豪華な、それに見る限り僕の身長の5倍近い巨大な物だ。
正直、こんな物が近所にあればそれなりに有名だと思うんだけどな……。
それにしてもこの門、どうやって開ければいいんだろう? 流石にこんな馬鹿でかい門を自力では無理だし、何処かにインターホンとか無いだろうか。
まあ、とりあえず門の周りを探してみよう。
ぼくは門の周りを探し始めた。
門の右側(果てしなく続く壁……)
門の左側(果てしなく続く壁……)
壁しかない!!!
どんだけでかいんだ! この家は!!
てゆうか、今までこんなでかい家の存在を知らなかった自分もすごい。
「インターホンとかも無い。一体どうやって中に入るんだ……」
壁を飛び越える……、無理だな。身長の5倍近い壁を飛び越えるなんて並のアスリートでも無理そうだ。
考えろ、考えるんだ自分、あの壁を突破する方法を。
この時の僕の頭には、もはや仕事の面接を受けに来たと言う考えは無く。ただ目の前の壁を乗り越えることでいっぱいだった。
「いっそ、壁をぶち抜くってのは……」
何を考えているんだ、ぼくは。
正直、今のぼくは自分で自分が制御できない。半年間で一体僕の脳はどうなってしまったんだ!
「そうだ! ひらけごま! ひらけごまって言えば開くかもしれない!!!」
こんな壁がどうたらと独り言を呟いているのを人に見られたら、きっと変人だと思うに違いない。
「ひらけごまっ!!!」
ぼくはあの巨大な門に向かって叫んだ。
シーーーーーーン…………
恥ずかしいーーーーーー!!!
てゆうか、痛い、自分ながら痛すぎる!!!
穴があったら入りたい!
ギギギギギギーーーーーー……(門が開く音)
「えっ……!?」
門、開きました。
何故っ、何故に開いたんだ?
もしかして、本当にあれが正解とかっ!?
間抜けなことを考えていると、門の奥から笑い声が聞こえた。
「ぷぷ……フフフフフ」
「だっ誰だ! そこで笑っているのは!」
ぼくは門の方向に指をさして叫ぶ。
見られた、確実にこの声の主の見られた。見たから笑っているに違いない。
こうなったら、相手の記憶を抹消するしかない。
でも、どうやって消す? 後頭部を殴打? 特殊な薬を嗅がせる?
無理だーーーーーー!!!
そんなことやったら警察沙汰だ。仕事の面接行って、面接受ける前に御用って馬鹿すぎるにもほどがある!
それに犯行動機が「門が開かなくて、ひらけごまって言ったのを聞かれて……」なんて警察に言ったらどん引きだ!
はっ! 仕事!?
しまったーーーーーー!!!
相手はこの門の中にいる=この家の関係者に違いないっ!
もしこの家で僕が仕事を出来たとしても―――
「弱みを握られているっっ!!!」
ぼくの額から汗が滴り落ちた。
もしかして、これをネタに揺すられたりするかもしれない。
無かったことにして、ここで帰った方が……。
いやまてよ……、奇跡的に聞かれていなかったりして。
たまたま壁の向こう側で何か面白いことがあったのかも……。
「よしっ! それで行こう!
人生、プラス思考で行かなきゃだよな! ははっははは~~~……」
自信ねーーー……
「あの……、もう出て行っても宜しいかな?」
再び、さっきと同じ声が聞こえたのでぼくは振り返った。
そこに居たのはメガネを掛けた1人の男性だった。
ぼくはすぐにその人の身なりで彼の職業が分かった。唯それは僕の趣味とかの専門的な部類のものではなく、漫画やアニメと言ったことだけれども。
「執事……」
思わず声が漏れてしまった。
この現代に、ましてや近所にこんな格好をしている人が居るなんて思いもしなかった。
「あの……、その格好ってコスプレか何かですか?」
「君、初対面の人に随分とグサッとくる質問をしますね。これで聞かれたのは21回目だ」
結構、気にしてるんだ。それに21回目って……。
取り敢えず謝っておこう。
「すいません……」
「まあ、聞かれた質問は返答するのが紳士としての礼儀。
いいでしょう、答えます」
この男の人がメガネをくいっと上げるとキラーンと音がしたような気がした。
「は、はー……」
「この格好は、仕事服です!」
その話、もうどうでもいいよ。
「ところで今日はどのようなご用件で?」
「その前に、紳士としてさっきの1人ショートコントを笑ったこと、謝ってくれませんか?」
よし! この話をすれば、笑われたことをうやむやにできる!
「ん……? ショートコント? 何のことです?
私がさっき笑っていたのは、読んでいた本が可笑しかっただけです」
そう言うと、上着のポケットからブックカバーに包まれた本を取り出して見せた。
「ところで君は、何故こんな場所でショートコントなんてしていたのですか?
気になりますね。是非、教えてください。大丈夫ですよ警察なんて呼びませんから」
自爆……。
それに、これは脅迫だ。言わなきゃ確実に警察に引き渡される。だって、こんな豪邸の前でコントしている不審者を無視できる筈がない。
「わ……分かりました。話します……」
その場で尋問がスタートした……。
数分後……。
「なるほど……。それで1人コントを……、私も是非拝見したかったです」
そう言うと男性は微笑んだ。
この人、絶対にSだっ!
「そんなことより、お仕事の方は……」
取り敢えず話を元に戻そう。危うく目的を忘れて逃げ出しそうだった……。
「仕事……? ああ、そんなこと募集したこともあったな……。
丁度いい、最近入った新人たちも全員辞めてしまったので人手不足だったところです」
「それじゃあ、面接の方は……」
「いいでしょう。今から面接会場で行います。
会場には私が案内しましょう」
なんだ意外といい人そうだ。動揺しまくって損したな。
「あっ、ありがとうございます!」
こうしてぼくはあの巨大な《門》の中に入って行った。