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突然の通達はいかがです?

  およそ半日ほど前…


 リリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ―――ガチャッ

 「んぅ……。」

 仕掛けた覚えのない目覚ましに起こされた…。

 正直まだ眠い、二度寝しようかな…。

 「8時か…」

 ぼーーーとしていても、時計の秒針はカチカチと動く。

 まあ、今のぼくには時間なんて関係ない。

 ぼく―――宮下四葉みやげよつばは、16歳にして自由を手に入れたからだ。

 家族は今、海外で仕事をしている。

 そして、その両親たちの仕送りで生きている。

 昔のぼくは学校に通っていた、そのころは、学費だの生活費だのと節約の毎日だった。

 でも、今のぼくは学校に行っていない。

 あること があって今は行っていない…。

 とりあえずは休学として処理されているみたいだ。その証拠に、時折、学校からプリントやらが届く。

 まあ、そんなおかげで仕送りもそれなりに自由に使っている。

 「あれからもう半年になるのか…」

 いろいろと思いにふけていると眠気がどこかにいってしまった。

 布団から這い出すと一度ぼくは周りを見る。

 今まで気にしていなかったけれど、散らかったゴミ、山積みの雑誌なんかが、ぼくの半年の引きこもり生活を物語っていた。

 「あとで…片付け、しようかな……」

 あとでか…、思い出せないけどいつもこの言葉で物事を解決しているような気が…。

 特に、この生活を始めてから一番多く使っている言葉かもしれない。

 ぎゅ~~~…

 腹の虫がなった。

 「確か、冷蔵庫に何か食べ物があったはず…」

 まだどこか、だるさの抜けていない身体からだを無理やり起こすとぼくは台所へ向かった。

 さすがに半年間引きこもりをしていたといえ、完全に外の世界と独立することはできない。食べ物もその一つだ。

 でも、近所のコンビニやスーパーは、死んでも行きたくない。もし知り合いに会ったとき、「こいつ引きこもりしてるんじゃなかったけ」などと思われたくないし、そもそも集団で同じ空気を吸いたくないという自分流の引きこもりのプライドがあるからだ。

 それでも食べ物は手に入れないと餓死してしまう。

 世の中は便利になった。引きこもっていてもインターネットを使えば何でも手に入る。

 今のぼくは金銭面は不自由してないから何でも好きに買える。一昔前に生まれていたら、とっくに死んでいたかもしれない。


 ガチャッ キィーーー

 台所に着いたぼくは冷蔵庫を開いた。

 「食パン2枚とマーガリン…」

 神はぼくに朝はトーストにしろと…。

 とりあえず、食パンを取り出しオーブントースターに入れて5分にタイマーを合わせる。

 「食料…また注文しないといけないな…」

 食べ物が無くなったのは確かに問題だ。しかし、それはあくまでも昔のぼくの話。

 今のぼくには、「十分すぎるほどの生活費がある!! 」

 静かでオーブントースターの音以外きこえない部屋の中ぼくの声が響いた。


 プルルルルルルルルルルルルルルルルルルル―――


 突然、台所隣にあるリビングから電話機の呼び出し音が鳴った。

 急いで取りに行く。

 こんな朝早くいったい誰だろうか。

 ガチャッ

 「もしもし、宮下ですが…」

 『四葉ちゃん?四葉ちゃんなの?』 

 この聞き覚えのある声は…! 。

 「そうだけど…でっ、久しぶりの電話だけど、何の用? 母さん」

 声の主は、海外にいる母からだった。 

 『もちろん! かわいい我が子の生存を確かめるためによ! 大丈夫? 半年間、一人ぼっちだったけど死んでないわよね!?』

 「朝っぱらからいきなり電話してきて、死んでないか? って久しぶりに話す息子に対しての言葉か!!! 」 

 『あら! そっちは朝だっけ! ママ忘れてたわ。ごめんね、四葉ちゃん。こっち昼だから、

 ところで、死んでないわよね?』

 謝るところそこーーーーーーーーーー!? しかも、ぜんぜんぼくの話を聞いていない!!!

 「ぼくはうさぎみたいに、ストレスには弱くないし、死んでたら電話に出れないでしょ! 普通…」

 『わからないわよ~。今の幽霊、インターネット使えるって聞くし』

 どこの世界の幽霊だよ…。

 どうしてこう、母さんとの会話は会話として成り立たないのだろう。

 『四葉ちゃん』

 「今度は何?」

 『ご飯、しっかり食べてる?』

 今頃そこかよ…。

 「うん、とりあえずは食べているよ。正直、この話題もう少し早くいってほしかった…」

 『あら~ごめんなさいね。ママ、ちょっと天然だから~』

 自分で天然って、言ってるよ。この人…。まあ、「天然」と自称するほど天然なのは、息子である自分がよくわかっているけど…。

 「もう用は、それだけ? 電話切るけど」

 『あー!! ちょっと待って!』

 「待てって、まだ何かあるの!?」

 本当のところ早く電話を切りたい、母さんのちょっと待っては大抵、嫌なことが起きる。

 幼稚園のときは、それで漏らしてしまったし、小学校は風邪を引かされ、中学校は修学旅行に置いてかれた。

 言わば、母さんの「ちょっと待って」は、ぼくのトラウマだ。

 『パパからの伝言』

 「父さんからの伝言?」

 今回のは大丈夫そうだ。

 『学校を休学して引きこもっている人間なんかに金は出せない! 自分で働け! だって』

 前言撤回。

 「金は出さないって、仕送りのこと!?」

 『ん~~、そうゆーことみたい。あっ! もう仕事の時間!! また元気でね~~!』

 「えっ!? ちょっ、母さん!!」

 ガチャッ ツーーツーーツーー 

 ぼくは床に項垂うなだれた。 

 ぼくの自由が崩壊した…。

 この先、どうして行こう…。

 チーーーーン とオーブントースターのお知らせ音が鳴る。

 ぼくは中の食パンを取り出した。少しコゲた食パンにマーガリンを塗っていく。

 父の伝言が頭の中をぎった。

 「働けか……」

 マーガリンの所為せいか出来上がったトーストは、かなり塩辛い気がした…。


読んでいただき、ありがとうございます。

こういうことは初めてなので、文などに間違い等ありましたら、感想や評価など、ドシドシ送ってください。

できるだけ、よい作品にできるようにがんばります。

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