エピローグ
こうして、冬と共に白玉楼に訪れた小さな異変は過ぎ去っていった。
妖怪桜の精霊が何故人化したのか、紫は何処まで知っていたのか、八重は一体どうなってしまったのか。まだ幾つか謎は残されたままだが、誰も追求しなかった。花は散り、何事もなく時は進んだのだから。
そして今は、やけに慌ただしかった春が次第に落ち着き始めようとしているところだった。
「はあ、やっと季節らしい季節になったわね」
道端に一本だけ咲くタンポポを見つめ、里に買い出しに来ていた妖夢はそう呟いた。
無礼講だと言わんばかりに花が咲き乱れた風景は最早少なく、里にはその名残は見られない。桜も散り、残るは紫の桜だけになっていた。
「あれ?」
その筈だったが、妖夢の目についたのは桃色の花びらを付けた、歴とした桜だ。
「そういえば、確か白玉楼にも遅れて咲く桜があったな……」
「その桜はね、少し開花時期が遅いのよ」
「っ!?」
突然、気配もなく背後から女の声がした。慌てて振り返った妖夢が目にしたのは、傘を深く被った着物姿の女性だった。顔は見えないが、傘から覗く鮮やかな紅い口紅を塗った口は、笑みを浮かべている。
「そう、なんだ……。忘れた頃に咲く桜、他より少しマイペースな桜。何か良いわね」
明らかに怪しい女の姿に妖夢も初めは怪訝な表情を浮かべていたが、それは何故かすぐに消え、どこか納得したような、柔らかい笑みを浮かべた。
「今まで花なんて殆ど眼中になかったけど、この前の冬に桜を見て、興味がわいて来たんだ」
「冬に桜? おかしな事を言うのねえ……」
「でも本当に綺麗な桜が咲いたの。すぐに、散っちゃったんだけどね……。初めからそこには、何も無かったかのように……」
「……まあ、桜が早咲きなんてしたせいね。それに比べ、この桜は気が遅いこと。もしこんな桜に因んだ名前を付けられた子は、さぞマイペースに育つんでしょうね」
「悪かったわね……。その時は本当に名前ぐらいしか知らなかったんだから」
「うふふっ」
不貞腐れたように放つ妖夢の言葉に、女は声を上げて笑う。
「それにしても、それ今でも付けててくれたんだ」
「当たり前じゃない。自慢の娘が選んだんだもの」
「……ありがとう」
「今度は急がず、マイペースにね。この桜みたいに……」
晴れ渡る空から差す日光を遮るように手をかざし、妖夢は壮大な桜を見上げた。今度は簡単には離さない、次は笑って送る、と強い思いを胸に秘め。
妖夢の前髪を並んで留める二つの髪留めが、太陽の光を浴びてより一層強い輝きを放った。
もう、最初のコンセプトなんてどこかに行ってしまいましたが……
綺麗なエピローグが書けたから良しという事にして頂けませんかね(汗)
私が力不足なせいで、本編では語れなかった裏設定というか、明かしてない謎が幾つもあると思います。……ごめんなさい。
取り敢えず何時でも何処でも……、まあ主に感想や活動報告かメッセージでですが、質問があればお答えしていこうかと思います。
最後に、
こんな急展開が続いた小説に最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございました!
※3/12追記
妹がやっとイラストを書いたので、載せておきます。挿し絵は全てこの場に掲載順に、そして話に関係するイラストはの後書きに掲載しておきます。
・大人八重1
・大人八重2
・4話

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