「天知る、地知る、ロビン知る!怪傑ロビンがいるかぎり、この世に悪の栄えない!」
掛け声と共に宙を舞う黒い影。
僕は今、覆面の怪傑として闘う事をきめた。
「ドフォーレ商会の奴らの密輸の話聞いたか?」
「実際どうなのかは分からないけどな。まぁ事実だとしても、この町は彼等のおかげで繁栄してる。町長も何も言えわしないさ」
今日も酒場はドフォーレ商会の話で満ち溢れる。 今のロビンは覆面をせず、表の顔で酒場にいた。
町に1つしかない酒場とあって、なかなか繁盛してるため情報も集めやすい。
情報というのは、なかなか流れないモノに思えるが意外と流出しているものだ。
だから僕みたいな者にとって、酒場とは実に重要な所だった。
「そういやロビンの事は知ってるか?」
「あぁ、今ドフォーレの奴らが血眼で探している奴だろ?それがどうかしたか?」
「噂によると、この店によくいるらしいぜ?だからかな?見ろよドフォーレの奴らがそこらじゅうにいるだろ?」
「どーりで知らない顔が多いと思った。しかし、ホントにこんな所にいると思うかね?」
そうだったのか、と僕も胸を撫で下ろす。
近頃派手に暴れまわったせいだろうか?少し慎重に行動しなければならいけないな。
しかし、情報を制する者は世界を制すって事かな?事前に防がれた身の危険に深く感謝した。 僕がそんなことを考えていると、その男達は僕にも話をふってきた。
僕も彼達とは顔見知りだったから、特に考えがあったわけではないとおもう。
その証拠に、彼達は僕の回答など求めてはいない。
「案外お前がロビンだったりしてな」
「こんな奴ならドフォーレも楽だろうにな」
二人は笑い話として僕など気にもかけていない。 まぁ僕の正体を知らないのだから当然の反応だろう。 僕の表の顔は陰気臭い優男だ。むしろ少しマヌケな印象すら与えるとおもう。
だから、かりにドフォーレの奴らがいまの話を聞いていたとしても、こんな男がロビンだとは思わないだろう。
「そういや今日もドフォーレの奴らが密輸するらしいな」
「まったく、お前はどこでそんな情報を?」
「一応港の倉庫管理が仕事たからな。ドフォーレが倉庫一つ丸ごと借り入れすれば嫌でも分かるさ」
そういいながら男達は笑っていた。
マスターに彼達に酒を1杯ずつ頼むと、僕は彼等の分も含め勘定を済ませた。
店から出ると後ろから俺にむけての感謝の声が聞こえた。
「感謝を言いたいのは僕の方さ……」
僕は夜の町に消えていった。
目指すは港の倉庫だ。
余談をしよう、僕は臆病な男だ。 小さい頃から父に鍛えられていたので運動神経は悪くない、表の顔では金勘定が必要な仕事だから頭もそこそこいいと自負する。
ただ本当に臆病だった。
臆病はいつしか人見しりにかわり、ついには本番に弱い性格……緊張しやすい性格になった。
だから、まわりからはドンクサイ男に見えただろう。
人前だと、何も無い所でこけ、会計の桁を3桁くらい間違えた。
そんな時だ。
一つの覆面に出会った。
それは、こう書かれた手紙と共に家の物置に眠っていた。
『正義の怪傑として誇りをこめて、私の素顔を隠しもう一つの私を生んだ覆面をここに眠らせる〜怪傑ロビン〜』
あとから知った事だが、どうやらロビンは僕のひいお爺さんだったらしい。
しかし、僕のお爺さんは関係無い。
大切なのは、この覆面を手に入れたと言うことだ。 僕はその日からもう一人の自分……ロビンを手に入れた。
それからだ、僕は怪傑として闇を走り回った。臆病な男としてではなく、義賊の怪傑ロビンとしてだ。
義賊になった僕は、日頃から町の治安を乱していたドフォーレ商会に目を向けた。
その時から僕とドフォーレ商会との戦いは始まったのだ。
港についた僕は、密輸の場所を確かめる。
酒場で詳しい場所を聞き忘れたからだ。これも覆面を被っていない時の僕には良くあることだ。
まったく、覆面無しでは何も出来ないんだな僕は。
そう思い自分に対して苦笑する。
とにかく、今は目的の場所を探すのが先だと思いなおし、とりあえずいくつかの倉庫の中でも見晴らしのよさそうな所の屋根に跳び登る。
普通の人には出来ないかもしれないが、本来の彼にとってはぞうさもない事だった。
登った所からは、倉庫全てが良く見え、その中に一つだけ明かりの見える倉庫があった。
「見つけた……」
誰に言うでもなくそう呟くと、僕は素早くそこの屋根まで走りだす。
大体500mはあっただろうか?その距離を40秒位で移動すると、僕は息切れすることなく準備にかかる。
まずは服を替える、いつも着ているのではなくて闇に消え行くような黒い服だ。
靴も動きやすいように、はきならした黒いブーツに替える。 そして、これまた黒い……いや、漆黒のマントをはおり、覆面を手にとる。
これを被れば僕でなく、ロビンとなる。
静かに覆面を顔に合わせる。
顔上半分を覆うものなので、視界をしっかり確保し頭に密着させる。
そして、覆面の後ろを手にとる。
「僕は……」
力強く結び、完全に覆面をかぶる。
「私は……ロビンだ!」
ロビンとなった私は屋根の隙間から飛び下りる。
そこには、まさに密輸準備中のドフォーレの奴らがいた。
「ハーッハッハッハッハッハッ!」
「貴様、ロビンか!」
「いかにも!天知る、地知る、ロビン知る!怪傑ロビンがいる限り、この世に悪は栄えない!」
私にむかって怒鳴ってきた奴には覚えがあった。
たしか、前の密輸の時に私と戦ったやつだ。
「おいお前。たしか前にも会ったな?」
私はその男に話しかける。すでに、私は10人位に周りを囲まれていた。
しかし、私は不適に笑う。
「私の力量くらい分かるだろ?もっと人はいないのか?」
「んだとテメェ?おい!やっちまえ!」
『オゥ!』
プライドを逆撫でしたおかげで動きが単調になる。
そうなれば、自然と攻撃の来る方向も分かる。
もともと私は素早さと技術で戦うタイプだ。力だけの馬鹿共は10分もかからず床にふした。
「さて、これは森で燃やすか」
気絶したそいつらは無視して、私はその場を立ち去る。
途中、誰かに見られていた気がするが気のせいだろうか?
港から駆ける私、ふと耳をかたむけると老婆の悲鳴。
「あそこは、ドフォーレに無理な土地の売買を迫られていた家か?」
どうやら、また一つ仕事が増えたようだ。
「天知る、地知る、ロビン知る!怪傑ロビンがいる限り、この世に悪は栄えない!」
掛け声と共に宙を舞う黒い影。
〈僕は……〉
《私は……》
〈覆面の怪傑として〉
《もう一人の私として》
〈《闘う事をきめた!》〉 |