パーティ後7
「良かったわ、あなたがいてくれてーー」
「レティシア様ーー」
レティシアはユリウスに微笑んだ。
ユリウスは急に跪き、レティシアの手を取った。
「レティシア様、私と結婚しては頂けないでしょうか?」
レティシアは目を丸くした。
「ゆ、ユリウス、どうしたの?」
「女王となったあなたを、側で支えていきたいのです。」
ユリウスは指先に口付けを落とした。
レティシアの頬はみるみる赤く染まった。
「わ、私が女王だなんて、無理よ。」
レティシアはプルプルと頭を振った。
「では、誰が王に?」
確かに、今の王は他人から得た力を使っていたし、ダニエル王子に国を任せることなどできない。
ディディオンも.....
レティシアはディディオンのことを思い出し、悲しげな顔をした。
「レティシア様は王として必要な教育も受けています。」
急に国の重みがレティシアに降りかかった。
レティシアはユリウスに連れられ、政務室へと来た。
「れ、レティシア様!」
ワラワラと人が詰め寄った。
「レティシア様が演算機を使えるとは、本当ですか!?」
「え、ええ。使えるけどーー」
「これを手伝っては頂けないでしょうか!」
頭を下げた政務官の後ろには、山積みになった書類があった。
「どうしてこんなーー」
「実は演算機の許可がおりなくて、」
「ディディオン様があの技術師だと言うことは突き止めたのですが、レティシアに権利が譲渡されていると!」
「私に、権利が?」
レティシアはディディオンから権利を貰った記憶はなかったが、ディディオンの記録が残っていた。
レティシアは政務官の熱意に押され、承諾した。
もちろん、このタイミングで権利者がバレたのも、ディディオンの策略だった。
「ああ、演算機を借りて来ます!」
一人の政務官が走り去った。
実務に関わったことのないレティシアは、恐る恐る紙面に目を通した。
「え、これーー?」
「すみません!難しいでしょうか?」
政務官としては、時間をかけても正解できなさそうな難問だけを残していたつもりだったのだが、レティシアは首を傾げた。
あまり難しそうに見えなかったからだ。
レティシアは無意識のうちに指を動かし、演算し始めた。
政務官たちは、その指の動きを見て、準備運動をしていると色めき立ったが、実際レティシアは答えを導き出していた。
次々と解かれる問題に、政務官たちは夢でも見たような気持ちになった。
この程度のものなら、演算機を想像するだけで解けたのだ。
ディディオンの教育は、実際必要なものの上をいっていたため、この程度のことはレティシアにとって簡単だった。
あまりにもスイスイと進むので、別の部署からも見学人が来るほどだった。
急に全ての部署に書類が回り始め、すぐ戻ることとなるがーー
そして、その活躍ぶりは王宮の者たちの耳にも入っていった。