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6.5

「レティシア様、レティシア様。」

「どうしたの?ユリウス。」

ユリウスが訪ねてきた。

「今なら逃げられます。私と一緒にここから逃げましょう。」

ユリウスはレティシアに手を差し伸べた。

ディオゲネス公にも連絡を取り、近くまで馬車を呼んで貰っていた。

「でもーー」

レティシアはディディオンのことが気がかりだった。

「レティシア様。ディディオン様は王になる気はありません。あなたが放棄してしまえば、どうなるかお分かりですね?

あなたは国を思う方です。選択肢はあってないようなものでしょう。」

ディディオンに王となる気がないのは、何と無く感じていた。

昔からディディオンは、王族自体を嫌っているような話し方をすることがあった。

レティシアは女王になる気などなかった。

しかし、ダニエルに王座を譲り渡すわけにはいかないことも、分かっていた。


レティシアはユリウスの手を取った。

ユリウスはレティシアを抱えたまま、窓枠をヒョイっと飛び越えた。

「じ、自分で歩けるわ!」

「なにかあっては心配なのです。大人しく抱かれていて下さい。」

耳元で囁かれ、レティシアも思わず大人しくなった。

屋敷からすぐのところに、王家の家紋が彫られた馬車が止まっていた。

「どうぞ、レティシア様。」

レティシアが馬車へと乗り込むと、先客がいた。

顔も体もボロボロになったルカに、ディオゲネス公だった。

よく見ると、ルカの顔は汚れと涙でぐしゃぐしゃだった。

「お、お姉ちゃん〜〜」

ルカはレティシアに抱きついた。

驚いたレティシアだったが、昔の反射でルカを抱きとめていた。

ルカはレティシアの腕の中でワンワン泣いた。

レティシアは何が何だか分からなかったが、ルカの背中をポンポンと叩いた。

昔からこうすると、ルカが泣き止むことを知っていた。

レティシアは懐かしい気持ちになった。


ディオゲネス公は姉弟の再会を横目で見ると、馬車に発車の合図を出した。

表情はピクリとも動かなかったが、自分とレティシアの再会をルカに邪魔され、寂しい気持ちになっていた。

レティシアのことを報告する際に、ディオゲネス公のレティシア愛を知っていたユリウスは、ディオゲネス公がそわそわするのに笑いを堪えるので大変だった。

「ルカくん。その辺りにしておいて下さい。」

限界が近づいたユリウスは、ルカに声をかけた。

姉と二人の世界に入り込んでいたルカは、ユリウスの声にハッと顔をあげた。

この年になって姉に甘えたところを見られ、ルカの頬は真っ赤に染まっていた。

「レティシア様。ディオゲネス公はずっとあなたのことを心配されていましたよ。」

レティシアはルカのことで頭がいっぱいだったが、父親にも怪我のないことを伝えた。

ディオゲネス公は、ユリウスやルカの手前レティシアとどう話していいのか戸惑っている様子だった。


ディディオンはユリウスとレティシアが屋敷から出て行くところを見届けると、ホッと息をついた。

そして、準備を始めたーー

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