『ツインレース』
拝啓
長谷川桜様
話は聞きました。
研究所ではわたくしどもの部下がお世話になりました。
デッドゲームの第6次予選が決まりましたので、それをお知らせにと手紙を出させていただきました。
明後日の午後10時に中央公園の噴水前にてお待ち下さい。
もちろんカードをお持ちになって。
デッドゲームをお楽しみ下さい。
では、これにて失礼します。
敬具
D
夏休みが始まってすぐ送られてきた手紙であった。
相変わらず趣味の悪い真っ黒な封筒。
桜は砂時のことが心配になったが、携帯にかけてみると、すぐに砂時が出てくれた。無理やり抜糸をしてもらい、ゲーム当日には間に合うとのことだった。一応ほっとはしたものの、デッドゲームの内容に不安がつのるばかりだった。
そしてゲーム当日。桜は自然公園の噴水前にいた。噴水の回りには参加者達がたくさんいる。街灯で照らされて、その顔を眺めながら時間を待っていた。
やはり時間が近づくと緊張はしてくる。時間が近づくにつれて、がやがやしていた参加者達は次第に無口になっていった。
そして10時ジャスト。
『こんばんは、参加者の皆様。ゲーム開始の時間となりましたので、これから行うゲームのご説明をいたします。』
いつもの『D』の声が響く。
『今回行われるゲームは『ツインレース』です。まずお手元のカードをご覧下さい。』
全員が自分カードを取り出しそれを見る。そして『D』の指示を待つ。
『カードの裏をご覧下さい。そのカードに浮き上がった名前の方と組んでいただきます。まずは分かれて下さい。』
桜はカードの裏を見た。するとじわりと赤い文字が浮かんでくる。
「・・・『柳和響』・・・?」
桜はカードを手にしたまま、柳和響という参加者を探す。次々と2組が出来ていくなか、桜はぽつんと立っていた。
「あ、あれ・・・いないのかな・・・。」
「こっち、こっチ。」
呆れた声が下から聞こえてきた。
「あ、あの・・・。」
「長谷川桜。」
「柳和響・・・?」
思ったよりきつい顔立ちの少年であったが不気味な笑みを浮かべている。小学生くらいだろうか。髪は黒いというのに、目は黄金色に光っている。赤いシャツに黒い羽織りは目立つ。それと痩せた身体と青白い顔は病人のように見える。
『2組になられたでしょうか?では、これより手錠を掛けさせていただきます。』
『D』の声とともにがちゃっと手元ににび色の手錠がかけられていた。
「えっ?」
「?」
桜の左手、柳の右手がぶらんと手錠で繋がっている。
『今回はそれぞれのパートナーとともに、ゲームクリアを目指していただきます。1人がゲームオーバーになれば、もう1人も同じゲームオーバーになりますので、協力してクリアをして下さい。』
ぶつぶつとどこからか文句が言われた。ランダムに相手が決められるのだ。不満があるのは当たり前だ。桜はそっと隣にいる柳を見下ろした。
「・・・。」
和響は何も言わずに地面を見ながら笑っていた。桜がこっそり溜息をつくと、柳が不思議そうな顔をしながら首を傾げた。
『では、公園出口付近に車を停車させているので、これでゲーム場所まで移動していただきます。さあ、どうぞ。』
柳が先に歩き出したので、引きずられないように慌てて桜も後を追う。公園を出たすぐの所に黒い車が5台ほど止めてあった。見た目からして、かなり高そうな車である。勝手にドアが開いたので、乗り込む。
「真っ黒・・・。」
中は驚くほど全てが黒くなっていた。唯一柳につられて1番後ろの席に座る。次々に乗り込んでくる参加者達を見ながら、桜は座っている柳を見た。相変わらず不気味な笑みを浮かべている。
「あの・・・。」
「?」
「よろしくね。」
すると柳は笑みを含みながら頷いた。
「コチラコソ。このボクと組めたのだカラ絶対にクリアをしよウ。ヒョヒョヒョ・・・!」
「はぁ・・・。」
奇妙な笑い声と口の聞き方に驚きつつも桜は苦笑いを返した。
そんな中、車にエンジンがかかる音がした直後、ゆっくりと車が発進した。車内は会話の1つもなく、しんと静まり返っていた。桜は柳に何かしゃべりかけようよしたが、静かな所で声を出すのは場違いな気がし、断念した。
『都合上、皆様には見られては困るのでアイマスクをつけさせていただきます。』
突然『D』の声に驚いている内に目の前が真っ暗になった。
『悪い用にはいたしません。しばし、ご辛抱を。』
桜は不安になったが、それは解消された。目につけられたマスクが透け始めたのだ。透視能力である。また無意識に使ってしまったのだが、これで少しは安心出来る。周りに気づかれていないか、心配になったが、見る限りでは気づかれていないみたいだ。
「ヒョヒョヒョ・・・!楽しいクなりソウダネ。」
隣を見るとマスクをかけられたまま、笑っている柳が見えた。結構不気味である。
しばらく窓の外の景色を眺めていると、だんだん景色が変わってきた。どうやら林の中の道を走っているらしい。
『さて、ゲーム場所につきました。まずは車から降りて下さい。私の部下が導きをいたしますので。』
車が止まったようだ。繋がれている所を引っ張られ、半ば無理やりに車を降ろされた。
「・・・っ!!」
がつっと音するので見てみると、柳が車を降りる時に足をコンクリートの地面に打ちつけたようだ。口元には笑みがあるが、冷や汗をかいている。気の毒に思いながらも、黒スーツの案内に足を進める。
しばらく歩いたと思うと、とんっと背中を押された。ここがゲーム場所のようだ。
「ここは・・・。」
思わず口に出そうになってしまったので、慌てて口を閉ざした。
そこはあの研究所と同じような形の廃墟になっている病院であった。そこは深い林に囲まれ、どこからここまで入って来たのか分からなくなるほど、鬱蒼としていた。
「嫌な匂いがスルねエ。」
柳の言う通り、確かに辺りは生臭いというか、変な匂いが立ちこめていた。
『ここで皆様にゲームを楽しんでいただきます。あ、もうマスクは取ってかまいませんよ。』
外すまでもなかったが、桜は何食わぬ顔でマスクを外した。
『この廃墟になっている病院の中に、あらゆる障害が仕掛けられております。ミニゲームだと思って下さい。それを全てクリアすると、屋上につきます。そしてその屋上にあるヘリでここを脱出して下さい。制限時間は午前5時。それを過ぎますと、病院に仕掛けられた爆弾がはじけますので。』
今の時刻は丁度1時ぴったり。
『それと、もう1つ大事なことを。ヘリには4人しか乗れません。誰が乗るか、それは誰が早く屋上につくかで決まります。では、ゲーム開始。』
しばらくは全員が立ちつくして病院を見つめていた。そして1組が走り出すと、次々と病院へ向かって走り出して行った。
「あーあ。遅れちゃったけど・・・行こうか?」
「そうだネ。」
桜と柳の2人は最後尾になって病院の中へ入って行った。
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