能力について
「明日から夏休みです。高校生らしい夏休みを送って下さい。3年生は勉強に励み、1、2年生は部活動などに励んで下さい。そして・・・。」
延々と続く校長先生の話に桜はうんざりとしていた。
回りを見ると桜と同じような顔をした生徒達が黙って立っている。先生達も熱くて団扇を持っていた。
今、桜達の通う学校では終了式を行っているのだった。狭い体育館に大人数で長時間、つまらない話を聞き付けるのはつらいものであった。しかも何より暑い。
「桜、桜・・・。」
後ろに並んでいる美奈が話しかけて来た。
「最近学校全然来てなかったけど、何かあったの?」
「あ、ううん。大丈夫。ちょっと風邪引いてたから。」
「そう?なら良いんだけどさ。ったくもう校長話長いっつうの。」
すると先生がこちらを睨んだので、2人は慌てて姿勢を正した。
そして全くつまらない終業式はそれから数十分後に終了した。教室に戻ってきた桜は下敷きで自分の顔を仰いだ。
「暑っつーい!」
「だよねぇ。クーラーくらいつけろっつーの。」
がやがやと騒ぐ教室で、突然放送が入った。
『1年7組。長谷川桜。至急音楽室準備室の柳川まで。10秒で来いとのこと。』
一斉に教室中の視線を浴びた。
「あたし何かしたっけ?」
「さぁ・・・。でも早く行っておいでよ。あの人しつこいでしょ。」
「う、うん・・・。」
また柳川か、と桜は思う。
しかし10秒とは何だ。桜は誰もいないことを確認してテレポートをした。
「あ、良かった。成功。」
別な場所は行くのかと思ったが、ちゃんと音楽準備室前に来れた。そして軽くノックをして入る。
「失礼します。」
「お、思ったがり早かったやき。」
そこにはやはり笑顔の柳川が座っていた。しかしあのギターが見当たらなかった。
「ギターは生徒に壊されて修理中じゃ。」
「はぁ・・・。」
「それより・・・がけに出したレポート。まだ提出されちゃーせんが、どういうことだ?」
げっと桜は顔を歪めた。すっかり忘れていた。
「約束を破るとは許せないな。」
「ちょ!待って!あの後は色々忙しくて・・・。」
「ほがなが俺には関係ない。夏休み中、追加レポートを出すから、それを始業式当日までに出せ。いいな?」
勝手なことを言う。黙っている桜に柳川は笑顔で紙袋を渡してきた。ずしっと重みがくる。
「これ・・・?」
「全部で30枚。いちじつ1枚のスペースでやればええ。間に合うじゃろ?」
「さんじゅ・・・!!」
桜は紙袋を手にしたまま固まってしまった。
「はや行ってええよ。ほんならね。」
くるっと椅子を前に戻して、固まっている桜に声をかけた。
桜は柳川を睨みつけた後、勢いよくドアを閉めた。
「柳川!」
思わず舌打ちをした。そしてそのまま教室へ戻ろうとした時、ふとコンピュータ室に目が止まった。しばらく見つめてからドアに手をかけた。鍵はかかっていない。
桜は紙袋を置くとコンピュータの前に座り、電源を入れた。
「超能力のこと調べてみよう。」
インターネットを開き、検索に超能力とかけてみる。
「・・・テレポート、サイコキネシス、テレパシー、サイコメトリー。」
これまでは使った能力だ。
「ほかに催眠能力、透視能力、予知能力・・・。」
透視と予知は前に使ったことがある。街中でシズのいる赤い部屋を透視したし、研究所で青山が来ることを予知した。
だがどれも、まだ自由に使いこなせるわけではない。無意識に使っただけだ。
「やっぱりまだまだ使えないのかぁ・・・。」
桜はそう呟いてコンピュータ室を見回した。
誰もいない。
「少しだけ練習してみようかな・・・。」
椅子から立ち上がると、コンピュータ室の角に立ち、奥の角を見る。
「よし、あそこまでテレポート!」
すると視界が曲がり、一瞬だけ足が浮かんだかと思うと、足が床についた感触がした。
「あ、あれっ。」
しかしそこは床ではなく、先生用のデスクコンピュータの上だった。自分が目標としていた場所とは正反対である。
「おっかしいなぁ。やっぱり意識して使っちゃうと駄目なのかなぁ。」
「・・・姐さん・・・一体そこで何をやっているんだ。」
「うわっ。」
番長がいきなり横脇から出て来たので、桜はびっくりしてコンピュータの上から落ちそうになたった。
「え、どうしたの?」
「どうしたのじゃない。姐さんこそどうしたんだ。」
番長が引きつった表情で桜を見上げている。桜は慌てて床の上に降りた。
「教師が呼んでいるぞ。ホームルームが始められないと。」
「あっ。そうだったね、ごめんごめん。」
苦笑いをして、桜は紙袋を持って番長と一緒にコンピュータ室を出た。
「そういえば・・・砂時はどうしている?」
「え?あぁ・・・砂時ね、病院を何回も抜け出そうとするから・・・監視付きで入院してるんだって。」
「ふん、良いざまだ。」
番長が呆れたように呟いた。
「次のデッドゲームが始まる前に退院出来れば良いんだけど・・・。」
「デッドゲーム、か。それで思い出したんだが、吾妻リコはどうなっている?」
「いまは何も仕掛けてきてないから大丈夫、だと思うけどな・・・。」
それを考えて桜はまた憂鬱になった。心配事がまた増えてしまった。
「番長・・・音楽得意?」
「何を急に・・・。音楽なら多少は・・・。」
桜はにやっと笑いながら教室へ戻った。
|