研究所にて&水崎
「・・・水崎さん大丈夫かな。」
そう思いつつ桜は暗い廊下を歩いていた。
「長谷川!!」
「んっ!」
背後からシズの声がし、桜はさっと身を避けた。すると桜の真横を通ってナイフが前方の壁に奥まで突き刺さった。
「あ、外した。」
「シズ!」
のんきにぽりぽりと頭をかくシズに桜は敵対心むき出しにしながら、身構える。しかし逆にシズは自分のナイフが外れたことに対してまだ、文句を言っていた。
「腕が鈍ったのかな・・・。さっきもシキを外しちゃったし・・・。」
「シキ?仲間割れ・・・?」
首をかしげる桜にシズはようやく目を向けて笑った。
「長谷川、会えて嬉しいよ。殺されに来たのか?」
「そんなわけないじゃない。あたしはシズ、あんたを止めにきたの。どうして関係ない人まで殺すの?そんなに憎い?」
問いかける桜にシズはすっとナイフを構えながら言う。
「僕はね、殺人中毒者なんだ。」
「さ、殺人中毒者?」
「そう。ある一定の時間になると、人をたまらなく殺したくなるんだ。かっと身体が熱くなって自分を止められない。」
「病気なの?」
「そうかもね。でも病気のせいでもないかもしれない。長谷川の言う通り、僕は人間を憎んでいる。たいした力もない癖に、下らねぇ奴らばっかりだ。僕が精神病院に入った時もそうだ。誰も僕を暖かい目で見てくれない。治療もまともにしてくれない。僕をこんなにしたのは人間のせいだ。それを怨めば良いさ。」
ぎらぎらと光る目に真の憎しみが含まれていることに桜は気づいた。
「でもそれでも良い。僕は楽しんで殺人をしている。」
「シズ・・・あなた・・・。」
「『D』達と一緒にいると、やっぱりうかつに殺人は出来ないんだ。だから僕は僕で好きにやらせてもらうことにした。」
ナイフを突き刺してシズは怪しく笑った。
その目はもう人の目ではない。獲物を狙う獣のような目だった。
「さぁ、桜。君はどんなふうに殺されたい?」
「・・・シズ・・・。」
「ばらばらが良い?皮剥いでもらいたい?あ、全身をナイフで貫こうか?それとも生きたままナイフで解体してやろうか?」
楽しそうに語るシズを見て桜は恐怖ではなく、哀れみの気持ちが湧いてきた。そして悲しそうな目でシズを見つめるが、シズはそれに気づいていなかった。
「とにかくまあ良いや。やろうよ、『狂人』とゲーム。」
「・・・ここで死ぬわけにはいかない。あたしは全力であんたを止めるよ。」
壁に突き刺さったナイフを取り、桜はシズに向かって力いっぱい投げた。
それをぱしっと手で取ってシズは見下したように笑った。
「甘い甘い。これはこうやって投げるんだよっ。」
無数のナイフが桜を襲おうとしていた。
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しゅるっと素早く動く人物を緑色の触手が捕まえようとする。しかし、相手の動きが早すぎてうまく捕まえられない。水崎はミランダの髪によって斬りおとされ、枯れていく植物を見ながら、適度に新しい植物を足していく。
「余所見をしている場合かあぁ。」
ミランダが髪を振り乱し、めきめきと死人のような腕を伸ばして水崎に襲い掛かった。とっさに植物の葉で身を護るが、それはミランダには通用しなかった。
細い手で葉を引き裂かれ、それと同時に水崎の首にも引掻き傷が走った。切れ目がすっと入り、そこからわずかな血が流れ出ている。
「やりますね・・・。」
「あたしを舐めるなあぁ。」
めきめきと腕を元に戻しながらミランダが笑った。
「随分奇妙な身体をしているようですが?」
「あたしの能力は身体を自由に伸ばすことだあぁ。」
ばしっと水崎は自分に近づいてきたプールの死人を蔓でなぎ払う。
「貴様も馬鹿な男だなあぁ。早く逃げれば良いものをおぉ。」
「仲間、を見捨てるほどわたくしは薄情者ではありませんので。」
「仲間あぁ?!虫唾が走るなあぁ・・・。」
ミランダが吐き捨てるように言う。
「仲間なんぞ簡単に裏切れるうぅ。人間とはそういう生き物だあぁ。あの長谷川もそうだあぁ。何ら変わりはないぃ。本当に貴様を信用していると思っているのかあぁ?」
水崎は俯いて自分の首にさげている十字架のペンダントを握り締めた。
「それはわたくしにも分かりかねますが・・・。わたくしは桜さんも信じております。そして桜さんのことを貶す輩は許せませんね。」
微笑みながら、水崎がぱちんと指を鳴らした。するとプールの死人達の動きがぴたりと止まり、方向転換をし、ミランダに近づいていく。
「む?何だあぁ?」
死人達はうごめきながらミランダへ近づいていくではないか。
「あなたとの戦闘中に種をまかせてもらいました。体内で今、発芽を迎えたのです。これでこの方達はわたくしのいのまま。」
微笑む水崎の笑みには勝誇ったような雰囲気を感じさせられた。
「くそおぉ!」
ミランダは死体に囲まれ、慌てて逃げようとするが、しゅるっと蔓が足に絡みついた。そうしている間にも死体達はミランダを囲み、じょじょに覆いかぶさっていく。
「こ、こんなと、ところ・・・・で・・・えええぇ!!」
雄たけびが最後まで轟いたが、死体達がうごめく中でそのまま静かになった。
「わたくしにはむかうからこうなるのですよ。やはり徹底的に潰しておかなくてはね・・・。」
優しく微笑みながら水崎はゆっくりとした足取りで倉庫を後にしたのだった。
+++
「・・・ミランダがやられたか・・・。」
1人、残されたシャルルが呟いた。
表情は無表情でいる。
「『地獄遊戯』・・・。やはり長くは続かなかったか・・・。儚いものだ。」
少し寂しそうに言いながらシャルルは立ち上がり、目的の人物の場所へと向かった。
「私も後始末をしなければいけないな。」
こうもりに包まれ、シャルルはそこの部屋から姿を消した。
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