以外な訪問者
「あんた最近調子乗ってるでしょ?」
「街中で男とふらついてるって噂知ってんだかんね。」
「それにあんた前々からむかついてたんだよね。」
呼び出されたのは屋上。桜はフェンスを背後に3人にぎゃんぎゃんと暴言を吐かれていた。しかし桜はそんなの上の空で、先ほどの柳川の言葉の意味を考えていた。
(先生はあたしに何を伝えたいんだろう。もっとよく考えろって言われたって今は無理。頭がパンク状態だもん・・・。)
「ちょっと聞いてるの!?」
「え?」
桜は鋭く甲高い声で現実に引き戻された。
「こいつむかつく!!ちょっと痛い思いしなきゃ分かんないらしいね!!」
「ねえこいつやっちゃって!」
十分今まで痛い思いはしていると、桜は思う。
すると屋上の扉が開いて数人の柄の悪そうな男子生徒が現れたではないか。しかし、デッドゲームをしている桜にとっては、それらは全く怖くない。むしろ可愛い方だ。
「あの・・・暴力沙汰にはしたくなんだけれど。」
「何余裕こいてんの?!しゃべれないくらいにぼろぼろにすればいいだけ!」
勝誇ったように笑う3人に桜は溜息をついた。
しかし、桜は気づいた。男子生徒が桜を見てにやにやと笑っているのを。それを見て桜は自分に身に危機が迫っていることに気づいた。出入り口は塞がれてしまっているし、超能力で移動しようにも化け物扱いされてしまうだろう。
「・・・っ。」
本当はフェンス越しに見えるグランドにいる生徒達が気づいてくれればいいのだが、今は昼休みで誰もいない。
「本当にやばいかも・・・。」
誘拐された時よりもはるかにこの状況はやばい。
とにかく逃げなければ。
「うわああっ!」
桜は突然叫ぶと出入り口とは反対に、屋上内を適当に逃げ回り始めた。それを追う男子生徒達。それを見て微笑む女子生徒達。
(デッドゲーム参加者じゃなくても十分狂ってるじゃない・・・!)
伸びてくる手を軽やかに避けながらそんなことを考える。水タンクが設置されている所をぐるぐると回りながら桜は、梯子に手をかけて反動をつけ、一気に上へとジャンプした。
「あっ!」
「ばーか。」
桜は思いっきり小馬鹿にしたように笑うと、下いる全員が怒りに顔を真っ赤にさせた。
「おい雫!この女、楽勝じゃなかったのかよ!」
リーダー格の女子生徒に男子が叫ぶ。
「し、知らないわよっ!いいから早くやっちゃって!」
水タンクが囲まれ、梯子からは1人が登ってくる。
「あ・・・しまった。」
桜は逃げる場所を探すが、どこにも飛び移れそうな場所はない。桜は意を決して思い切りジャンプし、屋上のタイルへと着地した。
「じゅ、10点!」
「嘘っ!何て奴・・・!」
びっくりしたような声が後ろから聞こえてくる。
「あたしがあんた達みたいな奴に負けるわけないじゃない!」
「隙ありっ!」
「きゃっ。」
気が付かなかった。後ろにもう1人いたなんて。
桜は腕を一緒に抱きかかえられ、地面に叩きつけられた。背中をしたたかに打ちつけ、苦痛に顔を歪ませていると、男子達がわっと群がってくる。
「ちっ!」
桜は急いで起き上がろうとしたが、ばっと手をつかまれ、そのまま地面に押し付けられた。今度は後頭部を打ち付けてしまった。
「くっ・・・!」
「所詮女なんかこんなもんだぜ。」
しかし桜はひるまず、にやっと笑ってやった。
「男子は馬鹿な癖に力ばっかりあって嫌ね。」
「何だとテメェー!」
ばしっと顔を殴られた。
衝撃に桜はびくっと身体を震わせたが、負けるわけにはいかない。
「女の子に暴力振るうなんて最低ー。」
「この・・・!」
腕を押さえつけている男子が顔を真っ赤にさせた。
その時、耳をつんざくような轟音と衝撃が桜達に襲い掛かった。
「うっ・・・!」
桜は身を堅くして過ぎ去るのを待った。うっすらと目を開けると目の前には青空が広がっていた。身体を起こすと自分を押さえていた男子生徒達はいつの間にか吹き飛ばされ、全員がドア前で伸びてしまっていた。
「あ・・・。」
リーダー格の雫が怯えたような表情になり、へたりとその場に座り込んだ。その恐怖の目は桜ではなく、フェンスの向こう側にいる人物にそそがれていた。
「お久しぶりです、桜、さんでしたよね。」
「あなたは・・・。」
「リコです。」
フェンスの向こう側には足場などないというのに、ぬいぐるみ(ゾーン)を背負ったリコがそこに立っていたのだ。手には筆とパレットがある。
「今のは・・・。」
「ちょっとした爆発クラッカーです。あのくらいの衝撃で吹き飛ぶなど、雑魚に等しいですね。」
リコは伸びている男子達に冷めた目を向けた。
「何しに来たの?!」
「用があるのはあなたではありません。そこの・・・。」
「ひっ。」
リコが指差すと雫は怯えたように悲鳴を上げた。
「何でっ!参加者以外を巻き込んだらルール違反でしょう!」
「ゲームに巻き込んでしまったら、の場合です。これは私個人としてです。」
リコは淡々と言う。雫に何か怨みでもあるのだろうか。
桜は腰を抜かしている雫の前に立ちはだかった。そして肩を抱き起こし、
「大丈夫?!早くここから逃げて!」
「あ・・・あ・・・。」
雫はがたがたと震えながら、桜にしがみつき、桜に先導されながらドアへと向かった。
「いい!あなたは先生を呼んできて!」
「で、でも・・・誰を・・・。」
「三浦でも柳川でもいいわ!とにかく急いで!」
桜は叫ぶと屋上のドアをしっかりと閉めてリコと向き合った。
「あなたに用はないと言ったでしょう。」
「駄目。ここは通さないよ。」
するとリコは不敵に微笑んだ。桜は首を傾げたが、直後、背中にどすっと何かが突き刺さった。
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