桜の話とストーカー
「この人達は多分あたしの親だと思うけど、全然記憶がないんだ。あたしが最初この写真を見た時、誰?って思っちゃったもん。昔は親がいないのは当然だと思ってたから。だって記憶がないんだもん。だから親戚も誰もいない。でも最近になってあぁ、この人達があたしの親なんだなって、思えてきた。一緒に暮らしてた跡があったからだけどね。」
2人は信じられないという顔つきで桜を見ていた。
「だが・・・信じられん。何故記憶がないんだ?」
「分からない。」
桜は暗い顔をして俯いた。
「記憶がないってどんなんだと思う?すごく不安なのよ。どうして自分がここにいるのか分からないし、とにかく怖い。」
「そりゃそうだろうな・・・。」
「だからあたしはこのゲームをやっているの。進んでいけば何か分かるかもしれないから。」
桜はそこまで言って急に笑顔になった。
「ここまで話をしたのは2人が始めてだよ。あたしの友達にも言ったことないもんね。ありがとう砂時、番長。話聞いてくれて嬉しかったよ。」
すると砂時はやれやれと首を振った。
「別に礼を言うほどもねぇだろ。」
「そうだ。話ならいつでも聞くぞ、姐さん。」
「うん・・・。」
そこまで言うと桜は砂時の手を掴んだ。
「煙草は外でね。」
砂時の手は煙草を掴んでいたのだった。砂時は舌打ちをすると、その手を引っ込めた。隣では番長が呆れた目つきで砂時を見つめていた。
「それでね!もう1つ話したいことがあるんだ。」
「何だよ。」
桜はキッチンへ向かい、1枚の白い封筒を取り出してきた。
十字架の印で封がしてあり、桜はその封筒の中身をためらいながらも出した。
「何だこれは・・・。」
「全部テメーじゃねぇか・・・。」
ばらばらと桜だけが写っている写真が封筒から出て来たのだ。
学校へ通っている時、家でくつろいでいる時、ひどい物は着替え中の写真もあったのだ。
「これ昨日から送られてくるの。」
「趣味悪ぃ・・・。」
「最低だな!」
番長が吐き捨てるように言う。
「どうしたら良いと思う?」
「とりあえずは回りに注意した方が良い。」
「そうだな。外で絶対1人とかになるなよ?ストーカーっつうもんは1人の時に狙うもんだ。」
真剣にそう言ってくれる2人に桜は嬉しくなって微笑んだ。
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「今日は本当にありがとうね。」
「別にかまわんぜ。」
「いつでもまた呼んでくれ。」
これから2人は用事があるらしかった。砂時は喫茶店を営業しなければいけないし、番長は病院に行くらしいのだ。病院といえばドラッグのことだろうか、と桜は思う。
「じゃ気ぃつけろ。」
「うん。ばいばい・・・。」
桜は手を振って2人を見送った。
さて、家に戻ろうとした時、桜のスカートの中の携帯が震えていた。電話である。
「はい、もしもし。桜ですけど・・・。」
『あ、桜ちゃん?!あたし、鈴華ですわ。』
「鈴華さん?」
桜は何故か無償に嬉しくなった。
「どうしたの急に?」
『別にこれといって用事はないんだけど、何となく電話したかったのよ。』
「そうですか?でも嬉しいです。電話くれて。」
『あらそう?』
電話の向こうでくすくすと鈴華が笑った。
しばらく玄関の前で鈴華と話に花を咲かせていると、桜の家に向かって1人の男性が入ってきた。黒づくめの恰好なので、桜は一瞬身を強張らせた。
『どうしたの?』
「いえ・・・ちょっと電話切りますね。」
桜は電話をぴっと切るとすぐさま玄関に入ろうとした。
しかし男性はすたすたと歩いて背を向けた桜の身体を腕を回してしっかりと押さえた。
「ちょっ・・・!あなた誰っ?!」
男性は空いている片方の手で桜の口を覆った。
「むぐっ?」
甘い香りが鼻をつく。すると頭の中がぼんやりし、まるで浮かんでいるような気分になる。
「ん・・・ぐ、ぅ・・・っ!ふ・・・。」
そして桜はふっと意識を失い、力なく男性の腕に倒れこんだ。
「・・・。」
男性の顔がにやりと笑った。
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