写真に写る少年
「何で俺がテメーと肩並べて歩かなきゃいけねぇんだよ。このドラッグ中毒。」
「黙れ不良。俺がいつドラッグ中毒になった。ちゃんと克服したぞ。」
「あん時モニター見て絶叫してたくせによく言うぜ。」
「貴様いつか殺してやる。夜道は気をつけて歩くんだな。」
砂時と番長の2人が口喧嘩しながら人気のない住宅街を歩いていた。
「ったく・・・桜も何で急に呼び出しすんだよ。」
「姐さんを愚弄するのか。」
実は朝早く、桜から2人に電話があったのだ。何でも緊急の用事らしく、だからこうやって2人で桜の家へと向かっていた。
「おっとここだ。相変わらずでけぇ家だな。」
砂時は桜の家を見つけ、玄関のインターホンを押した。
しかし、何の反応もないし、中から物音もしない。砂時はもう1度インターホンを押すがやはり反応は変わらない。
「ちっ。鍵がかかってやがる。」
「勝手に入るのはどうかと思うぞ。」
「あん?別にかまわねぇだろ。」
ばきっと音をたてて玄関のノブと鍵が同時に破壊された。
「少しはかまえ。」
番長は顔をしかめたまま、勝手に家の中に入る砂時に続いた。
中はやはりしんと静まっており、時計が時間を刻む音がやけに響いていた。
「寝ているのか?」
「部屋は2階だな。」
砂時が階段を上がろうとするのを見て、番長は慌ててそれを止める。
「おい、いくらなんでも女子の部屋に勝手に入るのは・・・。」
「何・・・お前女の部屋に入ったことねぇの?」
するとかっと番長の顔が真っ赤になった。すると砂時は少しばつが悪そうに頭をかきながら、
「冗談だよ・・・。マジにすんなよ。」
とぼやいた。
そして何のためらいもなく、階段を上がり、桜の部屋だと思われるドアを開けた。
「あ?あいついねぇじゃねぇか。」
確かにそこは桜の部屋らしかった。
ベッドがあるし、勉強机や学校の制服もある。しかし、当の本人がそこにはいない。
「どこにいやがる。」
「あ。」
番長が天井を見上げて声をあげた。砂時もつられて天井を見ると、桜がそこにいた。桜の背中が天井にぴったりとくっつくように浮き上がり、それでもすやすやと桜は寝息をたてていた。
「は・・・。何で浮かんでんだ。」
そう言った時、桜の目がぱっちりと開いた。すると浮かんでいた身体が一気に浮力をなくし、ぼふんっとベッドの上に落ちた。
「あ・・・痛・・・い。」
「何してんの?」
桜は2人の視線に気づくと引きつった笑いを浮かべた。
「お、おはよー。」
「おはようじゃねぇよ。もう11時だぜ。こんにちはだろ。」
「え?ああ、そうなの・・・。ごめん、昨日オールだったからさ、眠たくて。」
欠伸をしながら桜は言う。
「何で浮かんでいたんだ?」
「たまにこうなるの。夢を見ている時は特にね。無意識に力を使ってるらしくて・・・。」
苦笑しながら桜はベッドから立ち上がると、2人をリビングに通した。
「あーっ!ちょっとぉ!何人の家の鍵壊してるのー!」
桜が開きっぱなしの玄関を見て叫んだ。ぎくっとなった砂時の隣では番長が、ほらみろ、と呟いていた。
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「玄関の鍵はともかくとして・・・2人にこれを見てもらいたいの。」
そう言って桜は1冊の大きなアルバムを広げて2人に見せた。
「あん?これテメーか?」
そこにはまだ小さい桜が玄関の前で立っている写真があった。緊張しているらしく、顔は赤らみ、身体が硬直しているのが分かる。
「はぁー・・・。テメーにもこんな時があったんだな。」
「それどういう意味?・・・じゃなくて!あたしが見てもらいたいのはこっち!」
そう言って桜がある1つの写真を指差した。
そこには2人の男女と幼い頃の桜、そして隣には無愛想な少年が写っていた。
「姐さんの両親か?」
「えっ?う、うん・・・・・・。それよりもこれ、この子、誰かに似てると思わない?」
桜は自分の隣に写る少年を指さす。
「ガキのくせに何て面してやがんだ。」
「この顔つき・・・どこかで見たことが・・・。」
「でしょ?!誰に似てると思う?」
砂時と番長が腕を組んで考える。するとふと、番長が思いついたように呟く。
「そうだ・・・長瀬だ。」
「あん?」
「姐さんとゲームをした相手だ。長瀬冬夜に似ている・・・。」
「そう!長瀬さんにそっくりなの。」
桜が興奮したように言った。
「知り合いだったのか?」
「ううん。でも懐かしい感じがしたから知り合いだったんだと思う。」
「もしかして・・・家族と一緒に写っているなら、兄妹だった、とか?」
番長が考えながら言う。
「多分それはないと思う。苗字だって違うし、この子に関する物は家に全くないもの。それにあたしと一緒にすごした記憶もないもの。」
「じゃあ何でこいつがテメーの家族と写ってんだよ。」
「・・・あのね、2人に大事な話があるの。」
桜の改まった声に2人が写真から目を離して桜を見た。桜はいつになく真剣な眼差しで2人を見ていた。
「あたしね・・・家族の記憶がないんだ。」
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