出会った女性
「えっ・・・!?」
桜はあまりの出来事に携帯と鞄を落としそうになった。
人間にとっての1番の恐怖は、幽霊や自分の命を脅かされることではない。目の前で殺されていた生きていないはずの人間が動く、ということだ。
女性の首は黒色の目で桜をじっと見ると、口の端から血が出ている状態で、にこりと笑ったので非常に滑稽に見えた。
「きゃ・・・・!!」
「しっ。黙って。」
思わず悲鳴を上げようとした時、生首が軽くウィンクしながら桜に言った。
「あなたデッドゲーム参加者ですね?」
「・・・何で・・。」
「あら、そんなに怯えなくてもいいです。何もしないから。」
怯えるなと言われてもそうにしない方が無理である。
「あたしもデッドゲーム参加者ですわ。」
「えっ。」
「もう少し待って。後ちょっとで身体が再生するから。」
見ると、転がっていた胴体に、切断された腕がくっつこうとしていた。びろびろと胴体の方から神経やら筋肉やらが飛び出て、切断部分を再生していく。それがあまりにもリアルで桜は思わず目を背けた。
「あら・・・もう1つの腕はどこに行ったのかしら?」
目の前の女性は平気な顔をしてそんなことを言ってのける。
「あ、ありましたわ。」
気が付くと胴体の方には両手がついており、首のない状態で立っていた。そして身体は自分の首を持ち上げると、切断部にぐらぐらしないように乗せた。
「見苦しい所を見せてしまって・・・ごめんなさいね。」
「・・・。」
絶句している桜を見て、女性はくすくすと笑った。
もう首は完全に繋がっている。
「さ、立てる?」
女性は座り込んでしまった桜の腕をとると丁寧に立たせてくれた。
その手が暖かい。生きている人間の手だ。桜は少し恥ずかしくなってしまって、慌てて頭を下げた。
「あの・・・すいませんでした!もうちょっと早く来てればこんなことには・・・。」
「あら?そうかしら?それより・・・あなたすごいですね。よかったら名前を聞かせてもらえるかしら。」
「え、えっと・・・長谷川桜。一応超能力者です・・・。」
「あたしは佐々木鈴華。不死身女よ。」
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「さぁ、何でもいいですわ。好きなのを頼みなさい。」
「はぁ・・・。」
桜と鈴華と名乗った女性は近くのファミレスにいた。
向かい合うように座り、鈴華はごきげんな笑顔で桜に水を渡してくれた。
「あ、すみません。パフェ後3つ追加して下さい。あ、桜ちゃんも食べる?」
「え?えぇ・・・。」
「すみません4つに変更で。」
桜は呆気に取られて見ているしかなかった。鈴華の目の前には空になったパフェの容器が2つあった。よくあんなことの後で食べられるものだ。桜はある意味感心してしまう。
「あの・・・どうしてあんなことになっていたの?」
「ん?」
鈴華は容器の底に残っているアイスを食べながら答える。
「あの人、あたしの元彼でしたのよ。」
「えっ!嘘!元彼?!」
桜は仰天してしまった。
鈴華とさっきの男の顔を思い浮かべて、見比べる。
「うわ、合わない・・・。」
「あらそうかしら?あの人とは奥まで進んだ仲だったんだけど、別れたとたんストーカー気味になったらしくて。自分の物にならないならいっそ殺すって考えたんでしょうね。」
「あ・・・いますよね。そういう勘違いしてる人・・・。」
「ええ。あの人もよくあたしに、まだ好きなんだろ?俺が欲しいんだろ?とか言ってきてね。いなくなってせいせいしたかも。」
くすくすと笑いながら鈴華が言った。
「あたし不死身でもね・・・やっぱり痛いですわ。気絶したくてもあたしには出来ませんの。だから心の中で助けてって叫んでいたの。桜ちゃんが来てくれて嬉しかったわ。」
「あ・・・別に・・・。」
桜は恥ずかしくなって顔を俯かせた。
「桜ちゃんは高校生?」
「え?う、うん・・・。」
「よくここまで残ってきましたね、デッドゲーム。つらくなかった?」
そう言われて桜は少し考えて笑った。
「友達と一緒にデッドゲームをしてるから、そんなには。それに・・・やっぱりゲームをやっていく中で、馴れていっていたから。」
「そう・・・。」
そこまで話すとパフェが運ばれてきたので、デッドゲームの話はなしになり、女同士の話に2人は花を咲かせた。
「じゃあね。今日は久しぶりに楽しかったですわ。」
「いえ、こちらこそ!すっかりご馳走になっちゃって。」
そんなこんなでファミリーレストランを出たのは昼過ぎだった。
「かまいませんわ。暇になったらいつでも電話してくださいな。あたしもその方が嬉しいですわ。」
そう言われて鈴華から渡された名刺を見て桜は目を見開いた。
「あ、ファッションデザイナーだったんだ!」
「裏方仕事だけどね。じゃあね、桜ちゃん。」
「あ、はい!」
鈴華はにっこりと笑うと駅の方へと歩いて行った。これから仕事に向かうらしい。桜はしばらく鈴華の姿が消えてもそこに突っ立っていた。
「おいどけよ。」
「あ、すみません・・・。」
やっと通りすがりの男性に声をかけられ、桜も目的地だった図書館に向かうのだった。
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