ゲーム終了
「桜ちゃん! 待ってたよ!」
「うわっ。出た!」
智香は前方に桜の姿を確認すると子供のようにはしゃいで笑った。
「あいつか?」
「うん…」
「まあ上手い具合にイッてるじゃねぇか。おっと、ここから先は行くなよ」
智香と距離を大きくあけて桜をストップさせた。
「どうしたの?」
「コンクリートの中に地雷が埋まってやがるぜ」
「えっ!」
桜はびくっと思わず後ずさりをした。
「すごいね、あなた。そう、ここは全部あたしの爆弾ちゃんでいっぱい!」
智香がそばにあった小石を投げる。そして地面にコツンと当たった瞬間、すごい轟音とともに衝撃が桜と砂時を襲った。
「うあっ」
耳の奥がキーンと鳴っている。
爆音が収まったと思ったら、足元にからんからんとカッターの刃が無造作に飛んできた。
「あは、すごいでしょ。でも大丈夫。一斉には爆発したりしないからね」
「ふん」
楽しそうに笑う智香を砂時が鼻で笑う。何か策でもあるのだろうか。
「ねぇ桜ちゃん」
智香が砂時の後ろにいる桜に声をかけた。
「な、何?」
「あたし達、ずっと一緒だったよね。幼稚園も小学校も中学校も。もちろん今もね」
「智香…」
「桜ちゃんはあたしのことどう思ってた?」
桜は砂時の後ろから出てくると、静かに頷いた。
「親友、だと思ってた」
「うん。あたしもそう。でもね、最近は違う見方をしてたの。桜ちゃん前に足に大怪我したことあったでしょ? その時、あたし感じたの。桜ちゃんの、あの苦痛に苦しむ表情を見て。あたしは桜ちゃんの痛苦しむ姿を見たいんだなって」
桜がわずかに眉をひそめた。
「その時以来ずっと桜ちゃんと一緒にいる時は、桜ちゃんの苦しむ姿を想像してたの。でね、このゲームであたし決めたの。あたしの手で桜ちゃんを苦しめてあげようって。絶対良い考えだと思う」
「趣味悪ぃ…」
砂時が呟いたが智香は気にせず続ける。
「痛みに苦しむ姿も最高に可愛かったけど…もあたしに殺された桜ちゃんも最高に可愛いと思うの。うふふ」
くすくすと楽しそうに笑う智香を見て、桜はそっと溜息をついた。
「やばいな」
「うん…」
「悪いがテメーの悪趣味に付き合ってる暇はねぇんだ。さっさと消えてもらうぜ」
「あなたにあたしを殺せるの?」
「空中に爆弾はねぇだろ。見てろ、これが俺の能力だ」
その言葉を最後に静寂がその場に広がった。
トンと何かが当たる音がやけに大きく響く。砂時は無表情、桜は驚愕の表情を浮かべ、智香は笑ったまま立っていた。
「あえ…?」
智香の額には1本の細い針のような物が深々と突き刺さっており、脳天を貫いていた。傷口はきれいなもので、一筋の血が流れているだけだった。
智香は何が起こったか分からないようで、自分に突き刺さっている針を手で触った。
「砂時…その手…!」
そう。智香を刺し貫いていた針は、砂時の手から放たれたものだったのだ。砂時の掌から針は突き出ており、血は出ていなかったものの、皮膚はべろりと剥がれ、ピンク色の肉が見えていた。
「な、で…??…?」
すとっと針が元に戻り、砂時は何事もなかったように、自分の手をぶらぶらとさせた。
「手、大丈夫なの…」
「別に。俺の身体の一部だしな。痛くもないし、ほれ、何も残ってねぇだろ」
そう言って先ほど針が出ていた掌を見せたが、普通の手がそこにあった。
智香はふらふらとふらつきながら、額を手で押さえた。
「マジか。まだ生きてられんのかよ」
「智香…」
「あ、あたしのま、負けよぉ…。ふ、ひひ…、負けちゃったぁ!!」
智香が盛大に叫ぶと、ふっと地面に倒れこもうとした。
「桜!逃げるぞ!」
「え?ちょ…!」
砂時は桜をせきたてて急いでその場から離れた。そして直後に先ほどとは比べものにならないくらいの爆発音が響いた。その衝撃で砂時と桜は前につんのめって倒れた。
「くそ」
「…!!」
同時に2人は後ろを振り返った。
惨劇と言った方がいいだろうか。当たりは地雷のおかげで完全に吹き飛び、智香であったものがあらゆる場所に飛び散っていた。
「し、死んじゃったの?」
「今度こそな」
先ほどの衝撃で痛む身体を起こし、その場に近づいて行く。
内蔵と思われるものが壁に張り付いており、肉片等は道に散らばっている。それを見た桜は目を瞑ってやり過ごした。
「あたしの家。どうぞ入って」
「邪魔するぜ」
桜は沈んだ声で砂時を家の中へ案内した。
すぐさま自分のカードを見つけ、それを大事そうに制服の中にしまった。
「その…何だ。あんまり気ぃ落とすなよ」
「うん…」
「テメーは自分から望んでこのゲームに参加したんだ。俺もだがな。やるからには最後までやり通すぞ。ほら、持ってろ」
ひゅっと同じカードを桜に手渡した。
「対戦者に勝利した場合、その対戦者が持っていたカードは自動的にもう片方の対戦者の物になる。持っておくんだな」
「で、でも…智香を倒したのは砂時よ。これは砂時が持ってるべき…」
「馬鹿。俺はただ協力をしてやっただけの部外者だ。このゲームには無関係だぜ」
砂時は面倒臭そうに立ち上がると窓から外へ出て行った。
「お茶でも出すのに!」
「いらねぇよ」
「もう…」
ふと、先ほどの惨劇の現場を見ると、爆発の跡が残っていないくらいに綺麗に清掃されていた。
「だが、困った時は俺んとこに来な」
「え?」
「出来る限り協力してやるぜ」
そう言ってにやりと彼らしい笑みを浮かべると、さっさと歩いて町の方に姿を消した。
桜は砂時が消えて行った方をずっと窓から見つめていた。
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それから数日後、再び『D』から手紙が届いた。それは桜のゲームの勝利を称える内容だった。
拝啓
長谷川桜様。
見事ゲームに勝利をなされました。
おめでとうございます。
十分に楽しんでいただけたようで、我々としてもとても嬉しく思っております。続いてのデッドゲームは後日の手紙にて対戦相手を送りますので。楽しみに待っていてくださいね。
では、これにて失礼。
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