勝者は?!
『『雷男』、山田広海様に代わり、『空気女』、河上洋子様どうぞ。なお、河上洋子様がゲームオーバーになりますと、同時に山田広海様もゲームオーバーになるので。』
『D』の声が途切れると、河上が姿を表し、山田をかばうように立ちはだかった。
「まさか交代がくるとは予想外です。」
「今度はあたしがお嬢ちゃんの相手をさせていただくわ。」
河上の挑戦的な言葉に、一瞬だけリコの綺麗に整った眉がひそめられた。
すると山田の足を貫いていた刃が消えた。それと同時にびしゃっと血がそこから吹き出す。
「う・・・っ、ぐぅ!」
「しっかり!」
崩れ落ちる山田の身体を支えたのは桜であった。そして山田は番長に支えられながら、通路入り口へと向かった。
「て、テメーら誰だよっ?!何で俺と交代なんか・・・?」
がくがくと震える足の痛みに耐えながら山田が問いかけた。
「知らねぇよ。あいつが飛び出して行くんだもんよ。」
砂時の指差す先には河上がいた。
ホルスターから黒光りする拳銃を取り出していた。
「警察官か・・・!」
「じっとして。」
桜が座り込む山田の足に、テレポートさせた布をぎちっと巻いた。
「もちっと丁寧に扱え!」
「何だよその態度。」
呆れながら砂時が言った。
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「ずっと探していたわ。連続通り魔事件犯人、我妻リコ!」
河上が言った。
「私のことをご存知で。ああ、あの時は参加者をゲームオーバーにしていくのに夢中でしたからね。ですが、私はデッドゲームに関係している人を殺しただけです。それで警察が動くのはおかしくありませんか?」
「おかしいわ。でも・・・平気で人を殺すようなまねをする子は放っておけない!あなたをリタイアさせて逮捕します。」
するとリコは初めてふふ、と微笑んだ。しかし、その微笑は普通のものではなかった。その目には明らかに狂気の色が浮かんでいた。
「自らが殺した参加者達の最後を絵にスケッチするなんて、趣味が悪すぎるわ。」
「癖です。昔から命を失ったものを描くのが好きで。ね、ゾーン。」
無表情に戻ったリコが山田に弾かれたパレットを拾うと、その上に様々な色の絵の具をたらした。
「もう私は疲れてきました。ここで一気にかたをつけますよ。」
真新しい筆をもう1本取り出すと、今度は白色の絵の具に浸す。
「純白の白は、聖なる矢!」
ぴっと飛び散った絵の具が鋭い矢と変化し、1つも外さずに河上に当たった。
しかし、矢は河上の身体を摺り抜け、後ろの壁に突き刺さって消えた。
「なるほど。」
「手を上げて背中に組みなさい。逮捕します。」
するとリコは表情を変えずに笑った。
「ふふ・・・。未成年は罰せられませんことよ。」
「私個人で罰するわ。」
かちりと銃の引き金に手を添える。
「抵抗しなければ撃たないわ。でも、少しでも抵抗を見せてみなさい。額に穴を開けるわよ。」
「それは恐い。ね、ゾーン。」
リコは背中のぬいぐるみに語りかけてから、通路入り口にいる山田や桜達に目を向けた。
「刑事さん。前のことではなくて、後ろにも気をつけることですね。」
「何をっ・・・。」
筆を今度は地面にぴちゃっとつける。
「純白の白は、聖なる矢!」
地面から巨大な弓矢が現れ、それが河上をすり抜けた。
「だからあたしには効かない・・・。」
「あなたを狙ったんじゃないわ。」
河上ははっとして素早く後ろを振り向いた。矢先には桜達がいる。
「くそ!」
銃を矢に向けるとすぐさま発砲した。銃弾は正確に飛び、桜達に向かう矢を粉砕した。
「よかった・・・。」
ほっとするのもつかの間。
桜が青ざめた顔で河上に叫んだ。
「河上さん!!後ろぉ!!」
瞬間、矢先が河上の腹を貫いていた。
「・・・ぁっ?!!」
「河上さんん!」
河上はがくっと膝をおり、銃を取り落としそうになったが、すぐに持ち直した。競りあがってくる吐き気に、思わず咳き込むと、口からごぽりと血が吹出された。
「ゲホッ!がはぁ・・・っ!」
腹が熱い。
気が遠のく中、振り絞って身体を反転させると持っていた銃を2発続けて撃った。
1発は筆とパレットを弾き飛ばし、2発目は腰につけている筆をベルトごと弾き飛ばした。これでリコ側もすぐには攻撃はしてこないだろう。
「ぐ、ぁっ!げほ、げほっ!」
矢先からは河上の血が伝って地面にぽたぽたと落ちる。両腕を使って矢を引き抜こうとする。
「駄目!河上さん、抜いちゃ死んじゃうよ!」
桜の声に手をぴたりと止めた。
「あのガキ・・・。どうして矢が身体をすり抜けなかったんだ?」
砂時が叫びながらリコに問いかけた。
「ふふ。理由は簡単。自分の能力が上手く使えていない証拠です。」
「どういうことだ!」
「たくさんいますよ。こういう人。自分は能力を使いこなせている、そう勝手に思っている人。彼女のように、無意識に日常生活でも使っているんだわ。だからこのゲームの時も同じ。」
その言葉が桜にわずかだが反応した。
「私とのゲーム中にも自分の能力を無意識に使って、そして奪われてしまったのですね。だから私の矢がすり抜けられなかったんじゃないのかしら?」
嘲笑うかのようにリコが言った。
「ねぇ、あなたの死に顔も見せて。私がスケッチしてあげるから。」
「お・・・こと、わりよぉ!」
河上は力を振り絞って銃をリコに向けた。
しかし、リコは絵の具を手につけて、床に塗っていた。
「筆でなくとも能力の発動は出来ますよ。」
「な・・・っ!」
そしてその描かれた矢が、自分ではなく、後ろにいる桜達に再度向けられたものだと、河上は気づいた。河上はそれらを撃ち落とそうとせず、腹に矢が貫通した状態で、何と立ち上がったのだ。そしてふらふらとする足取りで、桜達のところへ向かった。
「か、河上さん・・・?何してるの?」
桜が不思議そうな目で河上を見た。
「ごめん、桜ちゃん。」
河上は桜を見て微笑みながら、そこにいる4人をかばうように立ちはだかった。
その瞬間、どす、どすっと嫌な音がし、太い矢が再度、河上の腹と今度は左胸を深々と突き刺した。
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