蜘蛛女
そこには手足、胴体、首等がばらばらになって置かれた死体が散らばっていた。男か女すらも分からない。まさに惨劇と呼ぶにふさわしいだろう。
「女の癖に何てことしやがる」
砂時が煙草をふかしながら悪態をつくと、その女性はくすくすと大きく笑った。
「女だからって舐められちゃ困るわン。ねぇ、お嬢ちゃん?」
「え?あ、はい…」
いきなり振られて思わず桜は頷いてしまった。
「あたしは全身糸人間の羽音絹よ。『蜘蛛女』と呼ばれているわ。そちらさんは良く知ってるわン。針人間砂時に、氷男京一。そして超能力者の桜」
「おーえらく俺達も有名になったもんだな」
「あたし達デッドゲームの参加者なら結構有名よ。『リタイア』でドリル女を倒したんですって? あたし、あの女は嫌いだったらからお礼を言おうと思ってたのよン」
蜘蛛女こと羽音は自分の頬についている返り血を指で拭いながら言った。
好戦的ではないものの、十分に警戒しながら砂時はゾンビのことを羽音に聞いた。
「お前か? 死体を操っているのは?」
「死体を? 死体を糸で操るのはとっても簡単よン。でも…そんなのちっとも面白くない。どっちかっていうと、そうね…生きてる人間を操ってみたいかしらねン」
にや、と笑った瞬間、きらきらと光る細い糸が羽音が伸びて瞬時に桜に絡まった。
「えっ?」
「うふふ…。これであなたはあたしの操り人形…」
羽音が糸を動かすと、桜の手足が勝手に動き、桜のパンチが砂時の腹に決まった。
「てっ!」
「ああっ! ごめん、砂時!」
砂時がやられながらも、針を出すと桜に絡まっている糸を切ろうとした。
「あ、待って! そのまま糸を切ろうとしても…逆にこの子の可愛い身体を引き裂くことになるわよン」
「何だとっ」
番長が叫ぶと羽音は愉快そうに笑う。
「その糸。普通の糸じゃないから簡単には切れないのよ。無理に切ろうとしたり、引っ張ったりしたら、糸が身体を締め付けて。ほら、あれみたいになっちゃうわよン」
指差す方向には先ほど見た惨殺現場があった。
桜はぞっとしてぴたりと動きを止めた。
「この女…!」
「待て、番長、挑発に乗ったらあの女を逆に楽しませることになるぜ。桜を見せ物にしたくねぇだろうが?」
「当たり前だっ」
「そしたらこの糸を凍らすんだ」
ナイスアイディア、と思った時、
「あらン。だめだめそんなことしちゃあ」
「あっ!」
困ったような声を出しながら桜の糸を強く引っ張った。
すると、桜の身体に糸が食い込み、その部分からわずかな血が滲み出し、肌を伝った。
「は、早くもあたしばらばらになりそう…!!」
「貴様っ!」
「そんな怒らないでよン。それ以上動いたらこの子の身体がばらばらになるわ。それでも良いのかしらン?」
「桜、テレポートで抜け出しちまえ!」
砂時の言葉に桜ははっとなり、急いでテレポートを使って脱出を試みようとした。
しかし、
「て、テレポートできない…」
「はぁ?!」
「テレポートは使いこなせるようになったんじゃないのか?」
こんな時に肝心のテレポートが使えないとは、桜は糸に絡まったままがっくりと首を垂れた。砂時も呆れたように首を振り、番長は羽音を睨みつけている。
「さぁて。これからどうしましょうね?」
「どうもこうもそいつを解放してもらおうか」
「それはだめよン。この子を使ってたっぷり楽しんだ後、全員ばらばらにしてあげるわ」
羽音は楽しそうな声を出して笑った。
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