終了
「そういえば…『D』の右腕って奴はどうなったんだ?」
「言われてみれば。どうなったんだろう」
「誰かが先に倒してしまった、とか?」
すると4人の背後にあるドアがばきっと音をたてて倒れてきた。
そして1人の男が奥から姿を現した。
「それは…それがしのことか?」
白いシャツに黒いズボンを着ている若い男だった。やや深緑色が混じった黒髪を後ろで縛っている。しかしその服や髪にはたくさんの返り血がこびりついていた。おそらく、ほかの参加者達のものだろう。
「針人間、氷男、破壊王。そして超能力者。随分ビップな方々がおそろいらしい」
「テメー…平山柚宇だな」
「誰なの?」
「有名な奴だ。どんな力を持っているのかは知らねぇが、プロの殺し屋だ」
すると平山はくつくつと似合わない意地悪そうな笑みを浮かべた。
「よくそれがしのことを知っているな、宮元砂時。孤児院育ちで中学を中退し、その後街角の喫茶店で店長を務めているらしいな。ご苦労なことだ」
「…」
砂時は黙って煙草の煙を吐き出した。
「砂時、孤児だったの?」
「昔の話だ」
「あぁ、そういうお前は長谷川桜だな。何故かでかい家に1人暮らしで現在は高校に通学中。家族の詳細は今の所不明だ」
「貴様何故そんなことまで知っている」
「そしてお前は高山京一。現在親元を離れてアパートに1人暮らし。高校に通学中、長谷川桜を『姐さん』と呼び慕っているらしいな。その包帯の下は火傷でもしたのか?」
にやにやと笑う平山に番長は突っかかって行きそうになったが、何とかこらえた様子だった。
「そしてお前は脇山草太。わずか5歳にして力が開花。今は貰ってくれた親も死んでこれからどうするつもりだ?」
「…」
草太は黙って黒手袋をはめた。
「あぁ、手袋をはめるのは触る物を壊さないためだろう?お前もある意味では力を使いこなせてはいないな。長谷川桜、お前と同じでな」
平山は一同をぐるりと見回してから、自分の頬についている血を親指で拭った。
「それがしが『D』の右腕だ。ここでお前達を皆殺しにしてやっても良いが。今は止めておこう」
「んな勝手なことしていいのかよ?」
「ふ…それがしを誰だと思っている。では、リタイアさせる人間を選んでおくんだな」
そう言うと平山は暗闇に紛れて消えてしまった。
「…変な人」
桜が消えて行った屋上のドアの中を見て呟いた。
+++
4人は屋上から降りて校門前に再び集まった。
空がわずかにオレンジ色を帯び始めている。もうすぐで夜明けらしい。
「さて、誰をリタイアさせる?」
「あたしは…草太君が良いと思うな」
「え? 僕、ですか…?」
草太がびっくりした様子で自分を指差した。
「異議なし」
「不服だが右に同じだ」
「そんなっ。僕なんかリタイアしなくても良いんです! それより桜さんが…」
「あたしはこのゲームをやってどうしても知りたいことがあるの。だから…リタイアはできないんだ」
草太はまた反論しようとしたが砂時に口を塞がれた。
「黙って聞き入れるもんだぜ」
「…」
草太は黙ってまた俯いていたので、表情は良く見えなかったがわずかに頷いたのは3人にも分かった。そして草太は手袋をはめた手で目を拭うとにっこりと微笑んでみせた。
『リタイアさせる方が決まったようですね。いや、お見事でした』
『D』の声が響き渡った。
『私の右腕の勝手な行動をお許し下さい。本来ならばお仕置きをしますが、今回は面白かったのでそれは無しにしましょう。どうでしたか? 楽しんでいただけました?』
「…それはテメーだけだろうが」
砂時が憎まれ口を叩くが『D』はくすくすと笑っただけだった。
『お気に召しませんでしたでしょうか? では次回は少し違ったゲームを考えましょうかね』
「べらべらしゃべってないで早くこのゲームを終わらせろ」
『ええ。では、脇山草太様リタイアでよろしいでしょうか?」
「は、はい」
草太が頷くと『D』はぱちぱちと拍手をした。
『では脇山草太様、リタイアされました。これにてデッドゲーム第2次予選『リタイア』を終了します』
それと同時に『D』の声は途切れ、デッドゲーム『リタイア』が終了した。
「何だか長い1日だったね…」
「…あの、これ」
草太がおずおずと桜に自分カードとこれまで集めてきたのだろう、他の参加者達のカードを差し出した。草太はリタイアするのだから、このカードを持っていても仕方がない。
桜はそれを受け取るとありがと、と小さく呟いた。
「テメー…これからどうすんだよ」
「さぁ。また、放浪して回ります。どこか遠い所に行って…安心できる生活をしたいです」
「…つらくはないか?」
「大丈夫です。僕、これでも打たれ強い方ですから」
桜はそんな草太を見て微笑むとぎゅっとその手を握った。わずかに草太はと惑ったようだったが、桜の手を振り払ったりはしなかった。
「忘れないでね…」
「…はい」
色々な意味を込めて言った言葉に草太はしっかりと頷いた。
そしてやっと長いデッドゲームが終了した。
あれから草太の姿は忽然と消えたという。
ただ、どこかで精一杯生きていることだけは桜達は知っていた。
|