番長誕生
「何であたしがゲームしなきゃいけないの?!」
「…ゲームwpするのに理由なんかあるのか? 楽しむためだ」
「これゲームじゃないでしょっ」
放課後。
半ば無理やり高山に屋上に連れて行かれ、扉の鍵を閉められて逃げ場のない状態になってしまった。
「ルール違反じゃない」
「そうじゃなくてもあたしは嫌! 逃げるからね!」
「させない」
有無言わさず高山は桜とゲームをする気だ。桜は大きく溜息をつくと、人差し指をぴんと立てて高山に突き出した。
「じゃあ、あたしが勝ったら、1つだけ言うこと聞いてもらうからね」
「良いだろう。俺が勝ったら貴様には消えてもらおう」
高山の条件にはかなり不服だったが、ぶちぶち言っている暇はない。それよりも高山は何の力を持っているのだろうか。
「ちなみに能力は何?」
「…」
無言で高山が桜に拳を突き出した。
すると空気が一瞬にして冷たくなり、全体が張り詰めた。そしてぴきぴきと音をたてながら、高山の指先が凍っていくではないか。服も一緒に凍ってしまい、桜は思わず寒さに身震いをした。
「俺は氷男だ」
「氷を操るんだ…」
「そういうことだ。お前の全てを凍らせてもらう」
言うや否や、高山がいきなり突進をしてきたのだ。桜は間一髪で避けたが、そのまま高山のパンチが地面にヒットした。するとそこが大きな音をたてて、蜘蛛の巣のようなひびが入った。そしてぱきぱきと爽快な音を立てて凍った。
「ちっ…!」
「これ凍るっていうより殴られただけで一発で死ぬじゃん!」
桜は急いで高山から離れる。
「敵に背を向けるとは愚かだな」
「えっ? うぐっ!」
ぐいっと首をつかまれそのまま床に押し倒される。高山の手は桜の首をしっかりと押さえつけており、逃げられない。
「期待外れだ」
高山が大きく腕を振りかぶった時、
「テレポート!」
そう叫ぶと桜の姿は一瞬で消え、そして高山の背後に現れた。
「何っ」
「成敗っ」
いきなり空気が変わり、桜は高山の胸倉を掴むと、思い切り細い身体を回転させて、地面に高山を叩きつけた。
「うっ…!」
「あ、あれ…? 押し倒すつもりだったけど…。まあいいか」
桜自身も驚いていたが、危機をとりあえずは脱したので良いことにした。
「く…」
高山は叩きつけられた衝撃で頭がくらくらしているらしく、ぶるぶると首を横に振りながらよろよろと立ち上がった。
「あ、ごめん…。そんな強くやるつもりじゃなかったんだけど」
「…」
桜は申し訳なさそうに高山に手を貸して立たせてやった。
「…」
「な、何…?」
じっと高山が桜を見つめてきた。そして次の瞬間高山はどんと正座をすると、両手をついて桜に向かって大きく頭を下げた。
「え、えぇ!?」
似合わない土下座だった。
「無理やりゲームをしてしまってすまなかった」
「ちょ、待…。止めてよ土下座なんて!」
「姐さん…」
「姐さん?! ちょっとあたし姐さんじゃないし!」
しかし高山は桜は先ほどとは違い、尊敬的な目で桜を見上げていた。表情はさほど変わっていなかったが。
困り果てたのは桜だった。やれやれと溜息をついて高山をすり抜けて屋上のドアへと向かう。
「まあ、姐さんでも良いけどさ。あたしと友達になって? 1つだけ言うこと聞いてもらう約束でしょ」
振り向きながら桜が言った。
「だ、だが…」
「友達なってくれたらさ、姐さんて呼んでもいいから。あたしも違う呼び方で呼んであげるし」
もはや前の高山の雰囲気は消えてしまっていた。
桜がそう言うと高山は感激したようすで(顔は怖いままだったが)立ち上がった。
「何がいいかな…そうだ! 君のあだ名はこれから『番長』で決まり!」
「『番長』…?何でまた…」
「だって君って学校を取り仕切ってる、漫画とかで見る番長みたいなんだもん。良いでしょ?」
最低のネーミングセンスだったが、もはや高山にはどうでも良いらしく、満足気に頷いた。
「じゃ、あたし帰る」
「鞄持とうか」
「い、良いってば!」
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