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眼前にチートです。

 レイ様が教えてくれた所によると、最初に私の体を触って来た白いローブの人がもう1人の上位魔法師で、名を"ハリウィン・ライクラル"と言うらしい。

 その彼は女神様こと、美坂さんに魔法を教える役に選ばれたそうで、それをレイ様に態々自慢しに来たそうだ。

 因みにその時のレイ様は、王様達に私の城への滞在期間を1週間から20日間にしてもらえる様に交渉中だったらしく、あまりにもウザかった彼を総無視していた所、女神様である美坂さんがやって来てレイ様も自分の指導係りにしてくれないかと言い始め、そこでひと悶着。

 いい加減煩わしくて敵わなくなったレイ様は、依然として何かを言ってくるハリウィン様や美坂さんを無視して王様に許可を貰うだけ貰って帰って来たそうだ。


「それは何というか、御苦労様」


「まったくだ。あのミサカとか言う女神様も最初の謙虚さは何処へやら。僅か数時間で取り合えず見目がいい実力者を自分の指導にとかき集めているらしい」


「うーん、まぁ、彼女がどんな人間かとか、誰が彼女を指導するかとかはどうでもいいかな。関係ないし」


 パタパタと寄って来る精霊を手に乗っけたりつついたりしながらそう言えば、レイ様は苦笑いをして私の前に1冊の本を差し出した。


「暇な時に目を通しておけ。この世界の歴史と魔法の基本的な知識が載っている」


 ペラペラと数ページ捲って溜め息。

 まさかこの歳になって新たな歴史を勉強する事になるとは。


「あーけど、文字が読めるのは召喚クオリティなのかな? 有り難い」


 使われている文字は元の世界のモノとは違っていたが、何ら不自由なく読めたのでそこは補正がされている様だ。


「今日はこのまま休みを貰ったから、魔法については私が教えよう」


 レイ様の執務室の隣にある小部屋に移動して、そこにあった木造の可愛らしいテーブルと2脚のイスに向かい合わせで座り、この世界の魔法について学ぶ。


 曰く、この世界の"魔法"には属性があり、火・水・風・土・雷・光・闇の7つがあるそうだ。

 基本的に1人につき1つの属性だが、稀に複数の属性持ちの人も居るらしい。


「因みに私は火と水と光の3属性持ちで、"遠視"の能力を持っている」


「3属性……てか、"能力"って?」


 レイ様の軽いチート発言の後に何やら聞いた事のある言葉が聞こえてきた。

 たしか、王様達に私は"能力なし"と言われた気がする。


「あぁ、その説明もまだだったな。"能力"とはつまり、普通の人間が持ち得ない卓越した力の事だな。これも複数属性持ちと同じで持っている者は珍しい。私の"遠視"は、半径5キロ範囲なら自身がどこに居ても範囲内の物を"視る"事が出来るというモノだ。結構な集中力が要るがな」


「……因みに、レイ様魔力量は?」


「28000だ」


「……」


 チートだ。チート様がいらっしゃる。


 "魔力量"とはつまり、人1人が持っている魔力の量の事だ。

 成人した人の平均が8000で、魔法師に成りたいなら最低でも10000の魔力量が必要だそうだ。

 その中でも上位魔法師になるには条件として15000の魔力量が必要なのだそうだが、12000以上の魔力量を持っている人が中位魔法師の中でもなかなか居らず、それ以上を持っている人は最早ツチノコ並みに珍しいそうだ。

 ……神様は不公平だ。


 因みに、この部屋に来る前に測った私の魔力量は8900で、見事に平均値だった。

 更に属性は風で、この世界で3番目に持っている人が多い属性である。


「そう落ち込むな。そもそも、精霊が視えているというだけで他の者に比べると充分に有利なんだぞ」


「どういうこと?」


「そもそも、精霊が視えない他の者達と視えている私達では"魔法"及びその"属性"についての概念が少し違ってくるんだ」


「?」


「まぁ、私も独学でしかも手探りで学んでいくしかなかったから、細かい根拠とかは無視してくれ。先ず、"魔法"についての考え方の違いはさっき言ったな」


「あぁ、"事象"として発現させるどうたら、精霊に魔力をあげるどうたらのやつ」


「それだ。そしてそこに"属性"が加わる。"持っている属性の魔法しか使えない"というのが、この世界の一般的な"属性"についての考え方だ。けれど私は、持っている3属性以外の属性も全て使える」


「え、つまり、レイ様は全属性が使えると? 何で?」


「そこでさっき言った概念の違いだ。精霊にも属性があり、火が赤色、水が水色、風が緑、土は黄色、雷は紫、光は白で闇が黒となっている。で、精霊が視える私にとって"属性"というのは、"相性のいい精霊"の事だ」


「相性のいい精霊?」


「対価として支払う魔力量が一番少なくて済む精霊の事だ」


「え、つまり、自分が持ってない属性でもそれなりの量の魔力を渡したら使えるってこと?」


「あぁ」


 何それ!!

 私にもチートになれる可能性が出てきた!

 やっぱり魔法が使えるならチートな無双をやってみたい。


「あ、だけど私みたいに平均並の魔力量だとやっぱりたかが知れてる?」


「魔力量は鍛えればある程度は増やせる。早急に解決しないといけないのは魔力コントロールの方だな」


「魔力コントロール?」


「支払う魔力の調節をする事だ。例えば相性のいい精霊の力を借りる場合に必要な魔力量が10とする。魔力コントロールがきちんと出来る者なら10きっかり渡して無駄なく力を借りれるが、そうでない者は10以上渡して無駄な魔力を消費してしまう」


「成る程。……え、もしかして私、ここに居る間にそれを覚えないといけないの?」


「出来れば完璧に自分の魔力をコントロール出来る様にして貰いたい。が、そう簡単な事でもないからな。取り合えず、明日の朝から騎士団の早朝訓練に参加して体力をつけてもらう。体力向上が直結して魔力量の増幅に繋がるし、ついでに最低限でも護身術位は教えて貰える様に私から頼んでおく」


「騎士団の早朝訓練……」


「その後で私と魔法の特訓だな。先ずはリオ自身が持っている風の魔法を中心に始める。20日間でせめて全属性の中級魔法が使える様になるのを目標にするか」


「全属性の中級魔法……」


 捕捉だが、この世界の魔法には"初級"、"中級"、"上級"、"最上級"、"最大上級"、"神級"、"古代魔法"、"禁忌魔法"がある。


「基本的なこの世界の知識はさっき渡した本に書いてあるからそれを読め。暇な時は魔法か武術の訓練をする事。城を出てからも訪ねには行くと思うが私とて多忙なのだ。その機会は滅多にないと思っておけ。だからこそ、私が手の空いた時間で少しでも直接教えられる今が重要だ。1秒足りとも無駄には出来ない。いいか、明日から死ぬ気で全てを学べ」


「……はい」


 レイ様はスパルタ教官だった様だ。

 明日からの自分の身の安全が少し不安になったけれど、やるしかないのもまた事実。

 取り合えず、死ぬ気で死なない為に頑張ります。

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