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独りぼっちの交差点
作:アオキチヒロ






……あれ、もしかして真南先輩? 
うわー、お久しぶりです先輩。髪、随分伸びましたねー! しかもメイクしてる! 全然分かりませんでしたよ、真南先輩だなんて。こんな時間にどうしたんですか?
ああ、アタシはコンビニに……ほら、今週のジャンプは土曜日発売だったじゃないすか。それ、忘れてたんで、慌てて買いに来たんですよ。
…馬鹿みたい? あ、そんなことないですよ! だってワンピースの続きが気になるじゃないですかー! どうせガキですよ、ガキ。
え? あー、はい。だから中学のジャージなんです。ちょ、笑わないでくださいよー。


それより先輩、高校生活はどうですか? っていうか、どこ高でしたっけ、その制服。 
ああ、N高に行ったんですか。そういやそんなこと言ってましたねー。
いいなぁ、N高のブレザー。アタシもこんなブレザーが着たいですよ。あんな古くさいセーラー、もう飽きましたよー。
あの高校って、このチェックのスカートと、それにお揃いのリボンも可愛いんですよね。初めて見たかも、N高のブレザー。案外、チェック柄が目立たないんですね。端から見ると、スカート布の地色の方が目立ちますもん。


そういえば、知ってます? 先輩。

あの高校、元は防空壕だったのを埋めて、今の建物を建てたそうなんですよ。それの所為か、夜中になると、戦火でに追われて死んでいった子供達の呻き声が、廊下に響きわた……ちょっと、なんで笑ってるんですか、先輩。
え、建ててから13年しか経ってない? うわ、そうなんだ。新築だったんだ、あの高校。くそー、先輩を怖がらそうと思ったのにー。
でも本当に羨ましいなあ、ブレザー。
アタシも先輩と同じ所受けようかなー………そう、そうなんですよ。今年が受験生なんです。もう毎日毎日、部活と塾の往復で夏休みどころじゃありませんよー。


そういえば先輩、今も吹奏楽に入ってるんですか? え? 吹奏楽部が無い? 
あー、そうなんすか。残念ですねー……先輩、フルートすごく上手だったのに。じゃあ、今は何部に入ってるんですか?
……えー!? バスケ部!? 文化系からよく体育会系に移れましたねー…尊敬しますよ。
あたしは相変わらず下手くそなままですよ。そうだ、今年の夏のコンクール曲知ってます? すっごい難しいんですよ! しかもフルートの出番、かなり多いし。緊張ですか? するに決まってるじゃないすかー。
だって今年で最後なんですよ? 留戸中吹奏楽部でコンクールに出られるのって。留戸中学校で、フルートを吹けるのって。
あー…そうですねー。引退はやっぱり寂しいですね。先輩もこんな気持ちでした? 
勉強ばっかでそれどころじゃなかった? あはは、先輩らしいや。

あ、そうそう。今年の1年生ね、すごく生意気なんですよ。ちょっと見に来てくれません?
敬語使わないわ、メイクしてくるわで、ホンット生意気なんですよ。
アタシ達も生意気だった? うっそ、まじですか? あちゃー。

あれ? そういや先輩、ケータイ変えました?
ちょっと見せてくださいよー。やっぱり! テレビ付きだー!


ケータイと言・え・ば。知ってますか? 先輩。
何を、ってアレですよ、アレ。いま中高生の間で流行ってる呪いのチェーンメール。
知らないんですか?
なんでも、そのチェーンメールは送られてきた10人目が必ず死ぬという噂なんですよ。
私も送られてきたことがあるんですけどね。ちょっと待ってくださいよー、ケータイケータイっと…
これこれ。こんなメールなんです。

『これは10人目が死んでしまう、呪いのチェーンメールです。アナタは3人目です。
 このメールを、クラスメイトに送って下さい。止めてはいけません。止めると、その時点でアナタが死にます。
送るときには、上の人数を1人目なら2人目に、8人目なら9人目という風に増やしてから送って下さい。
これを忘れてもアナタは死にます。
このメールは、地獄から送っています。止めればすぐに分かります。
必ず送って下さい。』

ねー、怖くないですか? でもまあ、10人目がたまたま友達だったんですけど、その子死ななかったんで、ただのタチの悪いチェーンメールだったんですけど。
これって、確実に人間関係悪くなりますよね。だって9人目の人は、自分が死にたくないから10人目に送るでしょ? 友達も送ってきた子と喧嘩しましたし。
先輩もこんなメールに騙されちゃ駄目ですよ!


あ、もうこんな所まで来ましたねー。先輩、家はどこですか?
私はこの交差点を渡って右です。ああ、先輩は左ですか。じゃあもうそろそろお別れですね。

じゃあ最後に一つ。
なんでもね、ここの交差点って、出るらしいんですよ。
あー! 疑ってるでしょ、先輩。本当ですってば。
だってアタシの友達が言ってましたもん。ほら、吹奏楽部の千秋ちゃん。トランペット吹いてた、あの子。そう、いっつも漫画読んで、先輩に怒られてたあの子。


……なんかね、3日前に、塾の帰り道でここを通ったらしいんですよ。
ほら、ここって交通量多いじゃないですか。だから、夜遅くに帰るときは、人通りの多い方から帰るらしいんですよ。
それでね、ちょうどこの位置。ここで信号を待ってたんですって。
そしたらね、なんだか向こう側に、髪が長い女の人が立ってたんですって。ちょうど私達より1つか2つ上ぐらいの人が。可愛い制服を着て、信号を待ってたらしいんですよ。ぼーっと立って。
まあ普通じゃないですか。信号待つときって、ボーっとしますもん。でもね、その女の人は、千秋ちゃんの方をずっと見ながら、ぼーっと立ってたんですって。
気味が悪いから、千秋ちゃん、ずっと目を逸らしてたらしいんすけど、その女の人の口が、なんか動いたように見えたそうで。
「あれ、なんか喋ってる?」て思って、ついそっちを見たらしいんです。
そんで、よく見たらその人、「ち・あ・き・ちゃ・ん」って呼んでたみたいなんです。見知らぬ人なのに。
「気持ち悪いなー」って思ったら、信号が変わって。それで、横断歩道を渡り始めたんですって。でも、女の人は動かなかった。それで、ちょうどその人の横を横切るとき、耳元で声が聞こえたそうです。
「一人は、寂しいよ」って。
振り返ったら、その人が少し笑ったように見えたんですって。でね、その人の制服。可愛いって有名なN高のブレザーなんだけど、スカートもリボンもチェック柄に見えなかったらしいんすよ。チェックの赤色よりも濃い赤色で……たぶん、血の色だったんでしょうね。


ね、先輩! 怖くないですか!? だって、それって幽霊ってことですよね!
だから、ここを一人で渡るの、すっごく怖かったんですよー。先輩、一緒に渡りましょうね!
え? 子供みたい? ひっどーい。本気で怖いのにー。
あ、信号赤になっちゃいましたね。すいません、私が長話しちゃった所為で。


真南先輩? ちょっと押さないでくださいよー。危ないじゃないですか。
いくら『赤信号 みんなで渡れば 怖くない』でも、今は車が来てるから駄目ですって。言ったじゃないですか、ここは交通量多いんですよ。
ちょ…悪ふざけも大概にしてくださいよー。危ないですってば。
え? 一人は怖い? ほーらね、先輩も怖いんじゃないですか。アタシの言ってたこと、本気で信じてくれたんですね。

え? 違う? 

一人は寂しい……? 何言ってるんですか、先輩。
ほんと止めてください、危ない、ちょっと、車がくるって………

……あ…も、もしかして、千秋ちゃんが言ってたのって……か、髪が長くて、先輩、印象が変わったから……千秋ちゃん、分からなくって……先輩、もしかして、先輩って………あの話の…――――





「独りは、寂しいよ。真咲ちゃん」


















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