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樹海パニック

作者: 結城陸空

この作品は「夏のホラーフェア」という企画の作品です。


ほかの先生方の作品は「夏ホラー」と検索すると見れますのでどうぞよろしくお願いします。

富士の樹海という深い、深い森。この場所は幽霊の目撃や自殺者の耐えないまさにこの世の地獄ともいうべき場所。俺はいまこの森で行われる大実験の参加者の1人として樹海の入り口に来ていた。


頭上の空では、ヘリコプターが何台も飛び交い、テレビや雑誌の取材やこの実験の研究者、反対者、国のお偉いさんや、この実験を見に来た野次馬達。

この前代未聞の実験は世界中が注目する大実験だった。


頭上を飛び交う中継ヘリコプターの一台に乗っているリポーターがさっきからこの実験についての説明をしている。


『いま、この富士の樹海という最も険しく危険な森でいまだかつてない前代未聞の大実験が行われようとしています。この実験のためにこの世のありとあらゆる公共メディアが使用され、実験参加者を募りました。当初、予定されていた人数を遥かに超え、なんと12万8000人もの参加者が集まりました。そして今私の遥か下には、この実験のために集まった12万8000人もの人間がその時がくるまで待機しています。


その時というのは、深夜0時、今日8月13日の深夜0時、つまり14日になった瞬間スタートのその大実験の内容は、この樹海への集団侵入!


多数の幽霊目撃談が存在するこの樹海をこの大人数で捜索し、幽霊の存在を否定しようとする大実験です。』


マイクでさっきから何度も説明している。つまりそういうことだ。

俺は幽霊の存在なんか信じてはいない。だからこの実験に参加した。この実験に参加して幽霊なんて存在しないことを証明するために・・・。


この実験には、反対する人が多数でてきた。ほとんどは霊能力者だが・・・、今日の実験で彼らの言うことが嘘だと証明できる。

わざわざ、実験の日程もお盆で深夜0時という最も幽霊の出現しやすい時が選ばれた。これでなにもなければ幽霊の存在は完全否定される。


実験と言っても明日の朝6時までに出来るだけ深く樹海の奥に入り込むだけ。

これだけの大人数だから迷うこともないし、なにかあれば必ず分かる。


時間はもうまもなく深夜0時だ。




そして深夜0時、樹海にサイレンが鳴り響く。スタートの合図だ。

12万8000人がいっきに動きだし、樹海の中に入っていく。当然俺も。


これだけの人数が樹海に入るのだから目の前には、人、人、人。もうほんとウザイくらいに人がいる。夜なのでみんなライトを持っているのだが、それが歩くたびに当たったり、足は踏んでいくし、当たるしほんと人がいすぎでウザイ。

当初の予定では5000人ほどだったらしいのだが、たくさん応募があり選定をやめて応募者全員参加に切り替えたそうだ。その結果これだけの人数が集まった。


歩いて二時間ほど・・・かなり奥まで進んできた。相変わらず周りは人だらけ。こんな場所にこんなにたくさんの人がいるなんて信じられない。朝の満員電車よりひどい。


腕時計は深夜二時を示していた。


実はこの二時間の間に進展があった。それは・・・。


自殺者の死体が発見されたらしい。しかも5体も。らしいというのは同じ樹海に入ってそこら中にいる人から聞いたからだ。

まぁ、それはこの実験が始まる前から言われていたことだ。これだけの人数が入れば自殺者の捜索にもなると。


それから一時間、俺はさらに森の奥深くまで来ていた。まだ当然周りは人だらけ・・・。



突然、遥か遠くから声が聞こえた。


男の・・・叫び声みたいだ。


周りの人もざわめき始める。そして人伝いにこんな話が聞こえてくる。


「この参加者の中に、殺人鬼がいてみんなを惨殺してるそうだ」


この話を聞いて僕は驚いた。殺人鬼?たしかにこれだけの参加者、しかもなんの選定もせずに集められた参加者だ。そういうものがいてもおかしくはない。この場所を狩りと称して選び、人間を殺していっているのだろうか?


周りも同じことを考え始めたのか少しざわめきはじめた。


その時、また悲鳴が聞こえた。こんどは女の声だ。


その瞬間、周りにいた1人が言った。

「さ!殺人鬼がこっちにくるぞ〜!!逃げろ〜!!」


その言葉を聞いて全員が叫んだ。そして、全員が一斉に走り出す。樹海から出るために。


俺も走る。周りの人に当たり、すごく邪魔だ。こんなに人が邪魔だと思ったのは、初めてだ。周りは我先にと人を押し倒して必死に逃げる人達。


やがてそれは喧嘩となり、ついには殺し合いと発展した。


俺も、生き残るためにさまざまな道具を使って人を殺す。殺さなければ殺されるからだ。そして俺は殺人鬼になった。

全員が自分ひとりが助かるために人を殺している。

最初1人だった殺人鬼が1人また1人と増え、ほとんどの人が殺人鬼となった。




やがて立っている人のほうが少なくなっていた。


どこを見ても死体と血だらけ・・・。


つい先ほどまでの状況とはまるで違う。


俺も、大怪我を負っている。お腹に木の棒が突き刺さっているのだ。

俺は、大量の出血でもう歩けなくなっていた。


富士の樹海の奥で誰にも助けを求めることも出来ずに、死んでいく。俺も周りの人も。






朝六時実験終了。



この実験はある意味で大成功、そして大失敗に終わったようだ。


幽霊の存在は確認できなかったそうだ。そういう意味では大成功。


だが、死者は12万8000人・・・。この実験に参加したすべての人間が殺し合い・・・死んだ。これは予定になかったことで大失敗となった。



1つ考えが改まった。幽霊の存在は確認できなかったそうだが、俺には見える。今も、ずっと殺し合いをしている12万8000人の死者の魂が・・・。


だって、俺も死んだのだから・・・。




         ー完ー



怖く…ないです(泣)ほんとにホラーかと自分でも疑いたくなります。


とにもかくにも、読んで頂いて嬉しい限りです。ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 短編としては舞台に雄大さが感じられ、最初から物語りのめり込んでしまいました。こういった作品は私は好きですよ。
[一言] まず、幽霊を否定するなら他の可能性があるだろうし、そもそも真夜中に樹海探索をさせるような企画は現実離れしてしまったるような・・・ 皆が殺人鬼となるまでの過程も弱く、唐突すぎる展開についていけ…
[一言] 題名、ストーリーには興味を惹かれました。 もっと情景描写を細かくリアルにする事で、 このお話の世界に入りこめるのではないかと感じまた。 より面白いホラー小説を期待しています。 頑張ってくださ…
感想一覧
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